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第1章 初めては涙雨に濡れて
「好き」の証拠を見せて? ※
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「……ごめん。服汚しちゃったかも」
「気にすんな。それよりも、多少は落ち着いたか?」
「うん。でも顔、今見せられる状態じゃないから、こっち見ないでよ?」
ひとしきり泣き尽くした美亜は、悔しさを涙で押し流したおかげで少しは気持ちの整理ができたらしい。俊平が彼女の様子が見計らって部屋へ招くと、かすれた声で返事をして後についてくる。あるいは同時に羞恥心も戻ってきたのか、泣き腫らした顔を必死に見せまいとする彼女は、やはり年頃の少女であった。
降り出した雨は止むどころか、いつの間にか激しさを増している。窓ガラスを雨粒がバチバチと叩く音が、部屋の中までよく響いていた。これでは駐車場に停めてある車に行き着くまでにずぶ濡れになってしまうだろう。彼女を家まで送るどころの話ではない。
時刻は正午を少し過ぎた頃。とはいえ、美亜は「何か食べるか?」と聞いても首を横に振る。俊平も何となく、そんな気分にはならなかった。
「……じゃあ、ちょうどいいか」
「ふぇ?」
「大会も終わったからな。こないだの告白の返事、してやるよ」
「へんじ……、って、い、今!?」
思わず顔を上げる美亜。泣きはらした目元は腫れぼったく、鼻も赤くしているけれど、不思議とこれはこれで愛らしく思える。痘痕も笑くぼとは本当らしいと内心納得する。
「やっと顔上げてくれたな」
「み、見ないでよっ」
と言いつつ顔はそむけるが、視線はチラチラとこちらを窺う。言葉の本気度を測るような少し疑いの色が混じった瞳。
(仕方ない、か。俺はそう思われるだけのことをしたんだから)
そんな彼女に歩み寄った俊平は、赤みを帯びた頬に手を添えた。
「美亜に最初に告白されたとき、素直に言って嬉しかったよ。でも、だからこそ、軽はずみな返事はすべきじゃないと思った。……いや、やっぱり違うな。本当のところは、美亜の気持ちを受け入れていいのか自信が持てなかったんだ」
昔馴染みの年下の女の子に、ありのままの自分をさらけ出す恥ずかしさとみっともなさ。
思わず口籠ってしまいそうになる。それでも、何とか自分を奮い立たせて言葉を継ぐ。
「美亜のことはまだ小学生のころから知ってる。あの頃は手のかかる子どもだったけど、いつの間にかすっかり大人になったな。そのうちもっと綺麗な大人の女性になって独り立ちしていくもんだと、楽しみでもあったし、寂しくもあった。……でも、一方の俺はつまらないまま年を取ってな。周りの人間はまだまだ若いとは言うけど、ここから劇的に何か変わるわけでもないのは自分でも分かってる。そんな俺がキラキラしてる美亜とつり合いがとれる男だとはとても思えなかった。だから、お前の気持ちを受け止められなくて、断ったんだ」
「違うっ! シュン君はそんなこと――」
何か言いたげな美亜を押しとどめるように、華奢なその身体を抱きしめる。
耳元で息をのむ彼女に、俊平は気付く。そういえば俺の方から抱きしめてやったことなんて一度もなかったな、と。
「俺は結局さ、美亜に見限られたくなかったんだ。ただそれだけなんだよ。……でも、卑怯だよな。お前は勇気だして告白してくれて、俺に断られても好きだって伝え続けてくれたのに。それを理性ある大人ぶって誤魔化してた」
身体をそっと離し、真正面から美亜と向き合う。きっと半分泣き出しそうな顔で格好もつかないだろうが。
「悪いが、オレはお前が思っているよりもずっとだらしなくて、情けなくて、格好悪い。それでも本当にいいのか?」
「……もう、やっぱりずるいじゃん。それじゃ肝心な言葉、全然言ってくれてなくない?」
「ああ、すまん。ええと」
ついさっき泣き止んだはずの瞳を潤ませながら、かすれた声で揶揄う美亜。
そうだ。こんな回りくどい言葉など、彼女はもう求めていないのだ。
こんな時でも情けなさが顔を出す。けれど、彼女が好きと言ってくれた自分じゃないか。そう自身を励まして、思いの丈を言葉にする。
「――俺も美亜のことが好きだ。これが俺の、正直な気持ち。一度断っておいて言える立場じゃないけど、もしまだチャンスがあるのなら、恋人としてそばにいてくれないか?」
ふたりの間に生まれる、一瞬の間。それが俊平には永遠とも感じられるほどに長かった。
その待ちかねた先で、美亜が思わず吹き出す。
「ぷっ、はは……っ! 顔必死過ぎて、我慢するのムリっ!」
弾けるような笑い声を上げ、俊平の胸元に顔をうずめる美亜。
しかし、それはやがて泣き声に変わっていき、
「……そんなの、いいに決まってるじゃん。本当っ、返事遅すぎだよぉ……っ。アホっ……バカっ……意気地なしっ」
「ごめん、美亜。悪かった」
「今度こそホント、だよね? 嘘じゃないよねっ?」
「ああ、ホントだ……。ごめん、ずっと待たせて」
先ほどとは違う、今度は嬉し涙まじりの抱擁。
散々待たされた乙女の罵倒を受け止めつつ、少し湿った髪をなでる。
擦り付けてくるおでこの力強さも、何度もスンスンと鼻を鳴らす音も。
彼女が近くに居て、自分を受け入れ求めてくれる。それが感じ取れるすべての仕草が、今は愛おしかった。
「……じゃあさ、証拠見せてよ。あたしのこと好きだっていう、証拠」
乱れ髪を額に乗せ、美亜は顔を上げる。目を閉じ、軽く唇を突き出し、俊平からの口付けをせがむ。
彼はもう迷うことなく、彼女の頬に手を添えた。
年甲斐もなく、緊張に身が震える。思えば自分からのキスは初めてなのだ。
「んっ、ぁむ……っ」
ずっと禁断だと思い続けていた果実に、静かに唇を落とす。
その瞬間、全身が総毛だった。
自分で取り決めた線引きを自分で破る、その背徳があまりにも甘美だったから。
「は、うぅ……ちゅ、む、……ん、ふふぁ……あ、……ちゅむ、ちゅぅ……っ」
一体どうして昨日までの自分は理性を保っていられたのか、今では不思議でならない。
離れてしまうのも厭う名残惜しさのまま、口付けは何度も繰り返し啄むようなそれへと変わる。
そして衝動のまま、もっと深く。舌先で唇を割り、彼女の惑う舌を捕まえる。
「んぁ、んむ……っ! ぁむ、ちゅ、ぱ……、シュン、く……んっ、ちゅ……ぅっ」
一度求め始めてしまうと、段々と自制が利かなくなっていく自分がいた。
逃げられないように、彼女の身体をしっかりと捕まえて、その震える舌先を自身の舌で絡めとる。
上あごの裏を、頬の裏を、歯茎を、舌裏まで。彼女のあらゆるところを舌先でなぞる。
間近で感じる美亜の匂いが。舌に絡む彼女の唾液と粘膜が。口の端から漏れる艶やかな吐息が。
全てが心地よく、五感を満たしていく。
今やひとつにつながった口内で、唾液を混ぜ合わせることに没頭している自分がいた。
「――ぷっ、はぁ……っ。はぁ……ん、コホッ……はぁ、はぁ……っ」
「す、すまん、いきなり飛ばし過ぎた。大丈夫、か?」
この半年間、幾度も重ねてきた唇。そうはいっても、こんなに深くて長い口付けは美亜にとって未知の経験に違いなかった。
息継ぎのタイミングを見失い、彼女がもがき始めたのに気付いて、唇を離す。
軽く咳込み、赤らんだ顔で大きく息をつく美亜。
そのどこか焦点が合わない惚けたような表情に、俊平の胸はいいようもなく高鳴った。
「……ねぇ、もっとぉ」
と、甘えるような囁きは美亜の声。
「い、今のナシっ、ノーカンでっ!」
ほとんど無意識に発したらしい、愛らしいおねだり。彼女は一瞬遅れて、我に返る。
だがその威力は、俊平の理性の糸を断ち切るのに十分過ぎた。
白い肌を耳まで真っ赤にして、ワタワタと残像を残すほどに両手を荒ぶらせている美亜。俊平はそれを捕まえると、グイと顔を少女に寄せた。
「ふぇっ? ちょっ、えっ、わわっ!?」
「そんな顔でそんなこと言いやがって。もう我慢利かないからな」
「……えぇ、目が本気――? ふぁ、んむっ……ちゅ、ちゅぱ、ん、ふっ」
目の前の小うるさい唇を強引に塞ぐ。
そのまま彼女の身長の割に軽い体躯を抱え上げると、力づくでベッドへと運んだ。
シーツにシワの寄った男臭いベッドの上、押し倒された美亜は俊平の意図を察したように身を固くする。一回り近く年上の異性、その遠慮ない視線にさらされて、今さらながらに不安の色を浮かべていた。
俊平が彼女の白い首筋に顔をうずめようとすると、慌てて身を起こそうとする。
「ちょっと待って! こ、これってそういうことだよね? シャワー浴びてないし、汗かいてて絶対臭うからっ!」
言い訳を捏ねて、腕の中で必死に身をよじる美亜。それを気にせず彼女の懐に潜り込み、俊平は大きく息をする。
仄かな汗とオーデコロンの香りが混じった、女性特有の甘くしびれるような匂い。まるで強い酒をあおったときのように、脳を焼かれるような錯覚に陥る。
「問題ねえよ。むしろいい匂いだから」
「全然問題なくないっ! 待ってって! 聞いて、よっ! ねえってばっ!」
しかし、乙女はひどく恥じらったと見えて、闇雲に暴れ出す。
それをいなすうち、いつのまにか美亜を背後から抱きしめる体勢になる。宥めるように美亜の腹を撫で、丁度目の前に来たうなじに顔をうずめる俊平。
くすぐったそうに身動ぎする美亜だが、次第に抵抗は弱まり、されるがままになる。
「なんだ、もう暴れるのはやめにしたのか?」
「……もう諦めたの。シュン君が女の子の汗で興奮する変態だってわかったから」
「汗で汚いのは俺も普通に嫌に決まってんだろ。美亜が例外なだけで」
「うえぇ、そういうのホントキモイ! ……あー、もう。なんでこんな人のこと、す――」
美亜はそこで口ごもり、急な頭痛に襲われたように唸りだす。
彼女なりの葛藤はあるのだろうが、始めに告白してきたのは美亜の方である。男を見る目がなかったんじゃないか、と耳元でつぶやいたら、唸るのもやめてしまった。
会話が途絶える。相変わらず俊平の手の平は美亜の腹部をさすり続ける。
兼部とはいえ運動部出身者はやっぱり引き締まってるな、なんて呑気な感慨を抱いていると、美亜がため息をついた。
「今まで我慢してた反動とか、あるかもだけどさ。急にキャラ変わりすぎじゃない?」
「だろうな。自分でも驚いているくらいだし」
その言葉に、美亜が俊平の表情を窺うように肩越しに振り向く。
「なにそれ?」
「もう少しくらい俺もカッコつけたかったってこと。……だけど、ダメだな。恋人になって、キスして、抱きしめて。たったそれだけで理性も飛ぶくらいに嬉しいんだ。散々待たせといて都合いい話だけど、やっぱり俺は美亜のこと好きだったんだなって改めて分かる、みたいな?」
「ズルいよ……っ。そんなの言われたら、もう何も言えないじゃんか……。んっ、ふぁっ……や……っ」
そうやって言葉を交わす合間にも、うなじや耳たぶに唇を寄せる。
次第に息を漏らすようになる美亜。頃合いと見て、裾から服に手を差し入れる。
反射的にびくりと震えるが、拒絶の声は聞こえてこない。
へその穴をくるりと撫で、次いでわき腹、ブラジャーの縁をなぞるように指を進めていく。小刻みに震える肌の感触はいつまでも触っていたくなる滑らかさで、俊平の手つきには自然と熱が帯びていった。
「ふぁ、くぅ……っ。あ、あの、手つきがいやらしいんですけどぉ……?」
「そりゃあ、これからいやらしいことするわけだし、な?」
「あぅ、胸、揉まれて……っ。はぁ、ぅ……や、やぁ……っ」
ブラジャーの上からやわやわとバストを揉み始めると、美亜は身もだえが隠せない様子だった。吐息に艶っぽさが混じり始めたのも気のせいではないだろう。
わざと息を吹きかけるように、俊平は耳元で囁いた。
「美亜」
「な、何ぃ……?」
「このまま美亜とセックスしたい。嫌か?」
「せ……ッ!?」
無用な最終確認だったかもしれない。
このままなし崩しで情事に及んだとして、何も問題なかったはずだ。
それでも俊平は確かめずにはいられなかった。美亜の意思の尊重と言えば聞こえはいいが、実際のところは土壇場で弱気が顔を出したに過ぎない。
「……もしイヤって言ったら、止めてくれるの?」
「そう言われたら残念だな。けど、美亜が嫌なことはしたくないから諦めるよ」
振り返った美亜の濡れた瞳は、そんな本心を見透かしてくるように俊平をまっすぐ捉える。
しかし、だからといってそれは冷たい槍の切っ先ではない。ふっと緩んだ彼女の口元とともに、まったく仕方ないなと笑う慈母のように変わった。
「……いいよ。あたしのこと、好きにしてくれて。でも、あたし初めてだからさ。その……、面倒かもだけど優しくして、ね?」
再び視線を外した美亜。恋人に全てを委ねるように、そっと背中を寄せてくる。
「……んっ、あ、うぅ」
俊平の指がブラジャーをずらし、直に美亜の乳房を歪ませる。
控えめだけれども瑞々しいハリがあり、それでいて揉みしだくままに指が沈みこませていく柔乳。蒸れた肌は手の平に吸い付くようで、触れているだけで心地いい。まるで誰も踏みしめたことのない雪原に足跡をつけるに似た歓び、といったら感懐を表すにしても詩的にすぎるだろうか。
そんな柔らかな乳鞠の中心、弄ぶ指先にコリッという硬い感触が触れる。
首筋への口づけと、丁寧な愛撫と。他人から初めてもたらされる性的な刺激に、美亜の身体は翻弄されつつも本能的に興奮を示す。本来は乳飲み子に乳をやるためのその箇所は、今は敏感な快楽神経を粟立たせ、男に弄ばれる瞬間を待ちわびるように緊張していた。
「……ッ! ひ、やぁ……そこっ、乳首触っちゃ……あぁっ!」
プクリと勃ちあがった乳頭を指腹で撫で上げる。すると途端におとがいを上げ、明確に甘い嬌声を漏らしてしまう美亜。そのまま続けて二度三度と乳首を転がすと、鋭い快感に耐えるかねるように身をすくめ、肢体をびくつかせながら熱い息を零した。
「なん、でぇ……? こんな、いつもは……ひぅっ!」
「声、すげぇ可愛い。それに乳首でこんなに感じて、さては結構エロいやつだな、美亜」
「可愛いとか、普段言わないくせにこんな時に言うなぁ! それにあたしエロくない、エロくないからぁ……っ。緊張して、身体びっくりしてるだけで、シュン君のさわり方がやらしいだけだもん!」
「じゃあ、今まで我慢してた分全部言ってやるよ。美亜のかわいくて魅力的なところ」
「……はえ?」
拗ねたように身をよじる美亜を抱きしめて、ニヤリと笑った俊平は彼女の耳元に口を寄せる。
「美亜は可愛いよ、ホント可愛い。すらりとしたモデルみたいな格好で、パッと見は今どきな美人さん。なのにすぐニコニコ笑うから、コイツ可愛いなって思っちゃうんだよ」
「ちょ、シュン君、まっ――」
「でも、そんな見た目の良さを全然鼻にかけないのが美亜の良いところだ。素直で、明るくて、子どもの面倒見も良くて、道場では皆の憧れのお姉さんしてる。それなのに、二人きりになると昔と同じように師匠師匠って無邪気に懐いてきてな。勘違いしないようにするの、正直俺も大変だったんだぞ?」
これまで胸の内に秘めていた思いを滔々と吐露しつつ、美亜の乳房の頂を転がすように苛める。
俊平としても、本当は恥ずかしくてたまらない。こんなのは美男子が言うからこそ女性は喜ぶのだ。けれども、こんな睦言も囁いてやりたいのもまた本心からくる行動には違いない。
腕の中、気恥ずかしさと快感に震える彼女。その吐息が、愛撫を重ねるごとに荒くなっているのに俊平は気付いていた。
「揶揄うとすぐいじけるのも可愛い。昔から変わらず、負けず嫌いなところも好きだ。さっきは久しぶりに泣くとこ見たけど、最近はそういうこともなくなって、それでも対局で悔しい負け方したら自分に怒ってる。ああ、コイツは大事なところは変わってないんだって。――だからさ、最初に告白してきたときの、切なそうな美亜がずっと頭から離れなかった。正直言うと、夢にまで見たんだ。いつもはお気楽な感じの美亜が、あんな必死な表情するの初めてだったから」
「あっ、んんくぅ……っ、さ、触りながら言うことじゃなくない? ――あ……ぅっ!?」
昂ぶっていく身体を必死に取り繕い、まだ拗ねたように物言う美亜。けれど、色っぽく上気した頬と零れる熱っぽい吐息まではもう隠しきれていない。そんな様子が余計に可愛らしく、考える前に身体が動いて彼女の濡れた唇を求める。
「あ、んちゅ、むぅ……っ、ちゅぱ……っ、ちゅる、ちゅ……ぅっ。……ふ、あっ? これ、って」
俊平に身を任せ、キスを受け入れていた美亜。そんな彼女がふと異変に、気づく。
スレンダーな彼女の、むちりと女性的な尻。そこに先ほどからぴったり寄り添っている恋人の下半身、その一部の猛りに。
初めて感じた異性の身体の変化に興味が隠しきれないのか、彼女は熱っぽい流し目を寄越してくる。俊平はその手を取ると、自身の股座へと誘った。
「美亜。ここ、触って」
「あ、わ……ぁっ」
生地越しに触れる、美亜の手のひら。その柔らかいタッチに俊平の勃起した肉欲はびくりと跳ねる。
まるで別の生き物のように反応した男性器に、美亜は驚きの声を上げる。けれど、嫌というわけではないらしく、触れた手は離さなかった。
「……あの、これってさ。こんなに硬くなって痛くないの?」
「痛くはないな。多少窮屈ではあるけど」
「へ、へぇ。そんなもんなんだ……」
俊平の返事を聞きつつ、触り心地を確かめるように彼女の手は陰茎をさすり始める。
慎重に注意深く、しかし陰嚢から裏筋をじっとりと撫で上げられる。その甘美な刺激につい、「うっ、くぅ」と噛み殺しきれなかった声が俊平の口から漏れた。
(やべぇ、思わず変な声が……!)
「もしかして、これだけで気持ちいい?」
ピクリと手が止まり、美亜がおずおずと問うてくる。
「……ああ。美亜に触ってもらってると思うだけで、すげぇ気持ちいいよ」
強がってみたところでしょうがない。素直に、自身の興奮と快感を白状する。
その言葉に美亜の瞳がわずかに揺れ、トロンと目尻が下がったように見えた。
「そっかぁ……。興奮してるんだよね、シュン君も」
「そりゃあな。好きな女の子の身体を触ってるんだ。興奮しないわけがないだろ? ――なぁ、美亜」
「……何?」
「美亜の裸、そろそろ見たい」
ブラウスの裾から覗く、色白の下腹部。その柔らかな触り心地が俊平の欲望を肥大化させつつあった。
美亜の方もきっとそうなることは分かっていたはずだ。けれどやはり緊張の現れか、細い喉がコクンと鳴る。
数瞬の間を置き、彼女は頷いた。
「……うん。見ていいよ。あたしの裸。その代わり、シュン君も服脱いで、ね?」
「気にすんな。それよりも、多少は落ち着いたか?」
「うん。でも顔、今見せられる状態じゃないから、こっち見ないでよ?」
ひとしきり泣き尽くした美亜は、悔しさを涙で押し流したおかげで少しは気持ちの整理ができたらしい。俊平が彼女の様子が見計らって部屋へ招くと、かすれた声で返事をして後についてくる。あるいは同時に羞恥心も戻ってきたのか、泣き腫らした顔を必死に見せまいとする彼女は、やはり年頃の少女であった。
降り出した雨は止むどころか、いつの間にか激しさを増している。窓ガラスを雨粒がバチバチと叩く音が、部屋の中までよく響いていた。これでは駐車場に停めてある車に行き着くまでにずぶ濡れになってしまうだろう。彼女を家まで送るどころの話ではない。
時刻は正午を少し過ぎた頃。とはいえ、美亜は「何か食べるか?」と聞いても首を横に振る。俊平も何となく、そんな気分にはならなかった。
「……じゃあ、ちょうどいいか」
「ふぇ?」
「大会も終わったからな。こないだの告白の返事、してやるよ」
「へんじ……、って、い、今!?」
思わず顔を上げる美亜。泣きはらした目元は腫れぼったく、鼻も赤くしているけれど、不思議とこれはこれで愛らしく思える。痘痕も笑くぼとは本当らしいと内心納得する。
「やっと顔上げてくれたな」
「み、見ないでよっ」
と言いつつ顔はそむけるが、視線はチラチラとこちらを窺う。言葉の本気度を測るような少し疑いの色が混じった瞳。
(仕方ない、か。俺はそう思われるだけのことをしたんだから)
そんな彼女に歩み寄った俊平は、赤みを帯びた頬に手を添えた。
「美亜に最初に告白されたとき、素直に言って嬉しかったよ。でも、だからこそ、軽はずみな返事はすべきじゃないと思った。……いや、やっぱり違うな。本当のところは、美亜の気持ちを受け入れていいのか自信が持てなかったんだ」
昔馴染みの年下の女の子に、ありのままの自分をさらけ出す恥ずかしさとみっともなさ。
思わず口籠ってしまいそうになる。それでも、何とか自分を奮い立たせて言葉を継ぐ。
「美亜のことはまだ小学生のころから知ってる。あの頃は手のかかる子どもだったけど、いつの間にかすっかり大人になったな。そのうちもっと綺麗な大人の女性になって独り立ちしていくもんだと、楽しみでもあったし、寂しくもあった。……でも、一方の俺はつまらないまま年を取ってな。周りの人間はまだまだ若いとは言うけど、ここから劇的に何か変わるわけでもないのは自分でも分かってる。そんな俺がキラキラしてる美亜とつり合いがとれる男だとはとても思えなかった。だから、お前の気持ちを受け止められなくて、断ったんだ」
「違うっ! シュン君はそんなこと――」
何か言いたげな美亜を押しとどめるように、華奢なその身体を抱きしめる。
耳元で息をのむ彼女に、俊平は気付く。そういえば俺の方から抱きしめてやったことなんて一度もなかったな、と。
「俺は結局さ、美亜に見限られたくなかったんだ。ただそれだけなんだよ。……でも、卑怯だよな。お前は勇気だして告白してくれて、俺に断られても好きだって伝え続けてくれたのに。それを理性ある大人ぶって誤魔化してた」
身体をそっと離し、真正面から美亜と向き合う。きっと半分泣き出しそうな顔で格好もつかないだろうが。
「悪いが、オレはお前が思っているよりもずっとだらしなくて、情けなくて、格好悪い。それでも本当にいいのか?」
「……もう、やっぱりずるいじゃん。それじゃ肝心な言葉、全然言ってくれてなくない?」
「ああ、すまん。ええと」
ついさっき泣き止んだはずの瞳を潤ませながら、かすれた声で揶揄う美亜。
そうだ。こんな回りくどい言葉など、彼女はもう求めていないのだ。
こんな時でも情けなさが顔を出す。けれど、彼女が好きと言ってくれた自分じゃないか。そう自身を励まして、思いの丈を言葉にする。
「――俺も美亜のことが好きだ。これが俺の、正直な気持ち。一度断っておいて言える立場じゃないけど、もしまだチャンスがあるのなら、恋人としてそばにいてくれないか?」
ふたりの間に生まれる、一瞬の間。それが俊平には永遠とも感じられるほどに長かった。
その待ちかねた先で、美亜が思わず吹き出す。
「ぷっ、はは……っ! 顔必死過ぎて、我慢するのムリっ!」
弾けるような笑い声を上げ、俊平の胸元に顔をうずめる美亜。
しかし、それはやがて泣き声に変わっていき、
「……そんなの、いいに決まってるじゃん。本当っ、返事遅すぎだよぉ……っ。アホっ……バカっ……意気地なしっ」
「ごめん、美亜。悪かった」
「今度こそホント、だよね? 嘘じゃないよねっ?」
「ああ、ホントだ……。ごめん、ずっと待たせて」
先ほどとは違う、今度は嬉し涙まじりの抱擁。
散々待たされた乙女の罵倒を受け止めつつ、少し湿った髪をなでる。
擦り付けてくるおでこの力強さも、何度もスンスンと鼻を鳴らす音も。
彼女が近くに居て、自分を受け入れ求めてくれる。それが感じ取れるすべての仕草が、今は愛おしかった。
「……じゃあさ、証拠見せてよ。あたしのこと好きだっていう、証拠」
乱れ髪を額に乗せ、美亜は顔を上げる。目を閉じ、軽く唇を突き出し、俊平からの口付けをせがむ。
彼はもう迷うことなく、彼女の頬に手を添えた。
年甲斐もなく、緊張に身が震える。思えば自分からのキスは初めてなのだ。
「んっ、ぁむ……っ」
ずっと禁断だと思い続けていた果実に、静かに唇を落とす。
その瞬間、全身が総毛だった。
自分で取り決めた線引きを自分で破る、その背徳があまりにも甘美だったから。
「は、うぅ……ちゅ、む、……ん、ふふぁ……あ、……ちゅむ、ちゅぅ……っ」
一体どうして昨日までの自分は理性を保っていられたのか、今では不思議でならない。
離れてしまうのも厭う名残惜しさのまま、口付けは何度も繰り返し啄むようなそれへと変わる。
そして衝動のまま、もっと深く。舌先で唇を割り、彼女の惑う舌を捕まえる。
「んぁ、んむ……っ! ぁむ、ちゅ、ぱ……、シュン、く……んっ、ちゅ……ぅっ」
一度求め始めてしまうと、段々と自制が利かなくなっていく自分がいた。
逃げられないように、彼女の身体をしっかりと捕まえて、その震える舌先を自身の舌で絡めとる。
上あごの裏を、頬の裏を、歯茎を、舌裏まで。彼女のあらゆるところを舌先でなぞる。
間近で感じる美亜の匂いが。舌に絡む彼女の唾液と粘膜が。口の端から漏れる艶やかな吐息が。
全てが心地よく、五感を満たしていく。
今やひとつにつながった口内で、唾液を混ぜ合わせることに没頭している自分がいた。
「――ぷっ、はぁ……っ。はぁ……ん、コホッ……はぁ、はぁ……っ」
「す、すまん、いきなり飛ばし過ぎた。大丈夫、か?」
この半年間、幾度も重ねてきた唇。そうはいっても、こんなに深くて長い口付けは美亜にとって未知の経験に違いなかった。
息継ぎのタイミングを見失い、彼女がもがき始めたのに気付いて、唇を離す。
軽く咳込み、赤らんだ顔で大きく息をつく美亜。
そのどこか焦点が合わない惚けたような表情に、俊平の胸はいいようもなく高鳴った。
「……ねぇ、もっとぉ」
と、甘えるような囁きは美亜の声。
「い、今のナシっ、ノーカンでっ!」
ほとんど無意識に発したらしい、愛らしいおねだり。彼女は一瞬遅れて、我に返る。
だがその威力は、俊平の理性の糸を断ち切るのに十分過ぎた。
白い肌を耳まで真っ赤にして、ワタワタと残像を残すほどに両手を荒ぶらせている美亜。俊平はそれを捕まえると、グイと顔を少女に寄せた。
「ふぇっ? ちょっ、えっ、わわっ!?」
「そんな顔でそんなこと言いやがって。もう我慢利かないからな」
「……えぇ、目が本気――? ふぁ、んむっ……ちゅ、ちゅぱ、ん、ふっ」
目の前の小うるさい唇を強引に塞ぐ。
そのまま彼女の身長の割に軽い体躯を抱え上げると、力づくでベッドへと運んだ。
シーツにシワの寄った男臭いベッドの上、押し倒された美亜は俊平の意図を察したように身を固くする。一回り近く年上の異性、その遠慮ない視線にさらされて、今さらながらに不安の色を浮かべていた。
俊平が彼女の白い首筋に顔をうずめようとすると、慌てて身を起こそうとする。
「ちょっと待って! こ、これってそういうことだよね? シャワー浴びてないし、汗かいてて絶対臭うからっ!」
言い訳を捏ねて、腕の中で必死に身をよじる美亜。それを気にせず彼女の懐に潜り込み、俊平は大きく息をする。
仄かな汗とオーデコロンの香りが混じった、女性特有の甘くしびれるような匂い。まるで強い酒をあおったときのように、脳を焼かれるような錯覚に陥る。
「問題ねえよ。むしろいい匂いだから」
「全然問題なくないっ! 待ってって! 聞いて、よっ! ねえってばっ!」
しかし、乙女はひどく恥じらったと見えて、闇雲に暴れ出す。
それをいなすうち、いつのまにか美亜を背後から抱きしめる体勢になる。宥めるように美亜の腹を撫で、丁度目の前に来たうなじに顔をうずめる俊平。
くすぐったそうに身動ぎする美亜だが、次第に抵抗は弱まり、されるがままになる。
「なんだ、もう暴れるのはやめにしたのか?」
「……もう諦めたの。シュン君が女の子の汗で興奮する変態だってわかったから」
「汗で汚いのは俺も普通に嫌に決まってんだろ。美亜が例外なだけで」
「うえぇ、そういうのホントキモイ! ……あー、もう。なんでこんな人のこと、す――」
美亜はそこで口ごもり、急な頭痛に襲われたように唸りだす。
彼女なりの葛藤はあるのだろうが、始めに告白してきたのは美亜の方である。男を見る目がなかったんじゃないか、と耳元でつぶやいたら、唸るのもやめてしまった。
会話が途絶える。相変わらず俊平の手の平は美亜の腹部をさすり続ける。
兼部とはいえ運動部出身者はやっぱり引き締まってるな、なんて呑気な感慨を抱いていると、美亜がため息をついた。
「今まで我慢してた反動とか、あるかもだけどさ。急にキャラ変わりすぎじゃない?」
「だろうな。自分でも驚いているくらいだし」
その言葉に、美亜が俊平の表情を窺うように肩越しに振り向く。
「なにそれ?」
「もう少しくらい俺もカッコつけたかったってこと。……だけど、ダメだな。恋人になって、キスして、抱きしめて。たったそれだけで理性も飛ぶくらいに嬉しいんだ。散々待たせといて都合いい話だけど、やっぱり俺は美亜のこと好きだったんだなって改めて分かる、みたいな?」
「ズルいよ……っ。そんなの言われたら、もう何も言えないじゃんか……。んっ、ふぁっ……や……っ」
そうやって言葉を交わす合間にも、うなじや耳たぶに唇を寄せる。
次第に息を漏らすようになる美亜。頃合いと見て、裾から服に手を差し入れる。
反射的にびくりと震えるが、拒絶の声は聞こえてこない。
へその穴をくるりと撫で、次いでわき腹、ブラジャーの縁をなぞるように指を進めていく。小刻みに震える肌の感触はいつまでも触っていたくなる滑らかさで、俊平の手つきには自然と熱が帯びていった。
「ふぁ、くぅ……っ。あ、あの、手つきがいやらしいんですけどぉ……?」
「そりゃあ、これからいやらしいことするわけだし、な?」
「あぅ、胸、揉まれて……っ。はぁ、ぅ……や、やぁ……っ」
ブラジャーの上からやわやわとバストを揉み始めると、美亜は身もだえが隠せない様子だった。吐息に艶っぽさが混じり始めたのも気のせいではないだろう。
わざと息を吹きかけるように、俊平は耳元で囁いた。
「美亜」
「な、何ぃ……?」
「このまま美亜とセックスしたい。嫌か?」
「せ……ッ!?」
無用な最終確認だったかもしれない。
このままなし崩しで情事に及んだとして、何も問題なかったはずだ。
それでも俊平は確かめずにはいられなかった。美亜の意思の尊重と言えば聞こえはいいが、実際のところは土壇場で弱気が顔を出したに過ぎない。
「……もしイヤって言ったら、止めてくれるの?」
「そう言われたら残念だな。けど、美亜が嫌なことはしたくないから諦めるよ」
振り返った美亜の濡れた瞳は、そんな本心を見透かしてくるように俊平をまっすぐ捉える。
しかし、だからといってそれは冷たい槍の切っ先ではない。ふっと緩んだ彼女の口元とともに、まったく仕方ないなと笑う慈母のように変わった。
「……いいよ。あたしのこと、好きにしてくれて。でも、あたし初めてだからさ。その……、面倒かもだけど優しくして、ね?」
再び視線を外した美亜。恋人に全てを委ねるように、そっと背中を寄せてくる。
「……んっ、あ、うぅ」
俊平の指がブラジャーをずらし、直に美亜の乳房を歪ませる。
控えめだけれども瑞々しいハリがあり、それでいて揉みしだくままに指が沈みこませていく柔乳。蒸れた肌は手の平に吸い付くようで、触れているだけで心地いい。まるで誰も踏みしめたことのない雪原に足跡をつけるに似た歓び、といったら感懐を表すにしても詩的にすぎるだろうか。
そんな柔らかな乳鞠の中心、弄ぶ指先にコリッという硬い感触が触れる。
首筋への口づけと、丁寧な愛撫と。他人から初めてもたらされる性的な刺激に、美亜の身体は翻弄されつつも本能的に興奮を示す。本来は乳飲み子に乳をやるためのその箇所は、今は敏感な快楽神経を粟立たせ、男に弄ばれる瞬間を待ちわびるように緊張していた。
「……ッ! ひ、やぁ……そこっ、乳首触っちゃ……あぁっ!」
プクリと勃ちあがった乳頭を指腹で撫で上げる。すると途端におとがいを上げ、明確に甘い嬌声を漏らしてしまう美亜。そのまま続けて二度三度と乳首を転がすと、鋭い快感に耐えるかねるように身をすくめ、肢体をびくつかせながら熱い息を零した。
「なん、でぇ……? こんな、いつもは……ひぅっ!」
「声、すげぇ可愛い。それに乳首でこんなに感じて、さては結構エロいやつだな、美亜」
「可愛いとか、普段言わないくせにこんな時に言うなぁ! それにあたしエロくない、エロくないからぁ……っ。緊張して、身体びっくりしてるだけで、シュン君のさわり方がやらしいだけだもん!」
「じゃあ、今まで我慢してた分全部言ってやるよ。美亜のかわいくて魅力的なところ」
「……はえ?」
拗ねたように身をよじる美亜を抱きしめて、ニヤリと笑った俊平は彼女の耳元に口を寄せる。
「美亜は可愛いよ、ホント可愛い。すらりとしたモデルみたいな格好で、パッと見は今どきな美人さん。なのにすぐニコニコ笑うから、コイツ可愛いなって思っちゃうんだよ」
「ちょ、シュン君、まっ――」
「でも、そんな見た目の良さを全然鼻にかけないのが美亜の良いところだ。素直で、明るくて、子どもの面倒見も良くて、道場では皆の憧れのお姉さんしてる。それなのに、二人きりになると昔と同じように師匠師匠って無邪気に懐いてきてな。勘違いしないようにするの、正直俺も大変だったんだぞ?」
これまで胸の内に秘めていた思いを滔々と吐露しつつ、美亜の乳房の頂を転がすように苛める。
俊平としても、本当は恥ずかしくてたまらない。こんなのは美男子が言うからこそ女性は喜ぶのだ。けれども、こんな睦言も囁いてやりたいのもまた本心からくる行動には違いない。
腕の中、気恥ずかしさと快感に震える彼女。その吐息が、愛撫を重ねるごとに荒くなっているのに俊平は気付いていた。
「揶揄うとすぐいじけるのも可愛い。昔から変わらず、負けず嫌いなところも好きだ。さっきは久しぶりに泣くとこ見たけど、最近はそういうこともなくなって、それでも対局で悔しい負け方したら自分に怒ってる。ああ、コイツは大事なところは変わってないんだって。――だからさ、最初に告白してきたときの、切なそうな美亜がずっと頭から離れなかった。正直言うと、夢にまで見たんだ。いつもはお気楽な感じの美亜が、あんな必死な表情するの初めてだったから」
「あっ、んんくぅ……っ、さ、触りながら言うことじゃなくない? ――あ……ぅっ!?」
昂ぶっていく身体を必死に取り繕い、まだ拗ねたように物言う美亜。けれど、色っぽく上気した頬と零れる熱っぽい吐息まではもう隠しきれていない。そんな様子が余計に可愛らしく、考える前に身体が動いて彼女の濡れた唇を求める。
「あ、んちゅ、むぅ……っ、ちゅぱ……っ、ちゅる、ちゅ……ぅっ。……ふ、あっ? これ、って」
俊平に身を任せ、キスを受け入れていた美亜。そんな彼女がふと異変に、気づく。
スレンダーな彼女の、むちりと女性的な尻。そこに先ほどからぴったり寄り添っている恋人の下半身、その一部の猛りに。
初めて感じた異性の身体の変化に興味が隠しきれないのか、彼女は熱っぽい流し目を寄越してくる。俊平はその手を取ると、自身の股座へと誘った。
「美亜。ここ、触って」
「あ、わ……ぁっ」
生地越しに触れる、美亜の手のひら。その柔らかいタッチに俊平の勃起した肉欲はびくりと跳ねる。
まるで別の生き物のように反応した男性器に、美亜は驚きの声を上げる。けれど、嫌というわけではないらしく、触れた手は離さなかった。
「……あの、これってさ。こんなに硬くなって痛くないの?」
「痛くはないな。多少窮屈ではあるけど」
「へ、へぇ。そんなもんなんだ……」
俊平の返事を聞きつつ、触り心地を確かめるように彼女の手は陰茎をさすり始める。
慎重に注意深く、しかし陰嚢から裏筋をじっとりと撫で上げられる。その甘美な刺激につい、「うっ、くぅ」と噛み殺しきれなかった声が俊平の口から漏れた。
(やべぇ、思わず変な声が……!)
「もしかして、これだけで気持ちいい?」
ピクリと手が止まり、美亜がおずおずと問うてくる。
「……ああ。美亜に触ってもらってると思うだけで、すげぇ気持ちいいよ」
強がってみたところでしょうがない。素直に、自身の興奮と快感を白状する。
その言葉に美亜の瞳がわずかに揺れ、トロンと目尻が下がったように見えた。
「そっかぁ……。興奮してるんだよね、シュン君も」
「そりゃあな。好きな女の子の身体を触ってるんだ。興奮しないわけがないだろ? ――なぁ、美亜」
「……何?」
「美亜の裸、そろそろ見たい」
ブラウスの裾から覗く、色白の下腹部。その柔らかな触り心地が俊平の欲望を肥大化させつつあった。
美亜の方もきっとそうなることは分かっていたはずだ。けれどやはり緊張の現れか、細い喉がコクンと鳴る。
数瞬の間を置き、彼女は頷いた。
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