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父と母
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今までの経緯を一通り矢上ゆり子に話した。私が話し終わるまで、矢上ゆり子はただ黙って話を聞いていた。そして私が話し終えるとゆっくりと口を開いて、「正光さんらしいですね。」と言って、微笑んだ。
「この話の他に、父らしさがわかるエピソードがあるということですか?」
「ええ、もちろん。あなたのお母様がいつもお話ししていられましたよ。」そう言うと、矢上ゆり子は目を伏せて、昔を懐古するように父と母の出会った日の話をし始めた。
父と出会った頃の母は、重度のパニック障害に悩まされていた。そのことで、歌手になるという幼い頃からの夢を諦めようとも考えていた。そして、その区切りをつけるために、母は最後の思い出として歌のコンテストに出場することにした。しかし本番直前、極度の緊張と不安から、出場を辞退したくなってしまった母は、近くにいたスタッフに辞退したい旨を伝えた。スタッフは一瞬驚いた後、母を人のいない場所に移動させ、何があったのか尋ねた。
母は泣きながら、自分のパニック障害のこと、それによる不安と緊張に苦しんできたことなど、すべて話した。スタッフは煩わしそうな表情を見せることなく、ずっと黙って聞いてくれていたらしい。そして、母の目をじっと見つめて、
「不安、緊張、何か自分が嫌だなと思う感情を抱いた時、1回目を瞑って想像してみるといい。自分の本当の目的は何なのか。君は、何しにここにきたんだい?」
そう言うと、父は優しく微笑んで
「辞めたいなら、辞めるのも良いと思う。君の自由だよ。」と言った。
母は、目を閉じた。自分がここにきた理由。
それは、大好きな歌をみんなに届けたいからだ。閉じた瞼の裏に、自分の歌で笑顔になる人々の顔が浮かんだ。
「やります。」そう答えた。
「この話の他に、父らしさがわかるエピソードがあるということですか?」
「ええ、もちろん。あなたのお母様がいつもお話ししていられましたよ。」そう言うと、矢上ゆり子は目を伏せて、昔を懐古するように父と母の出会った日の話をし始めた。
父と出会った頃の母は、重度のパニック障害に悩まされていた。そのことで、歌手になるという幼い頃からの夢を諦めようとも考えていた。そして、その区切りをつけるために、母は最後の思い出として歌のコンテストに出場することにした。しかし本番直前、極度の緊張と不安から、出場を辞退したくなってしまった母は、近くにいたスタッフに辞退したい旨を伝えた。スタッフは一瞬驚いた後、母を人のいない場所に移動させ、何があったのか尋ねた。
母は泣きながら、自分のパニック障害のこと、それによる不安と緊張に苦しんできたことなど、すべて話した。スタッフは煩わしそうな表情を見せることなく、ずっと黙って聞いてくれていたらしい。そして、母の目をじっと見つめて、
「不安、緊張、何か自分が嫌だなと思う感情を抱いた時、1回目を瞑って想像してみるといい。自分の本当の目的は何なのか。君は、何しにここにきたんだい?」
そう言うと、父は優しく微笑んで
「辞めたいなら、辞めるのも良いと思う。君の自由だよ。」と言った。
母は、目を閉じた。自分がここにきた理由。
それは、大好きな歌をみんなに届けたいからだ。閉じた瞼の裏に、自分の歌で笑顔になる人々の顔が浮かんだ。
「やります。」そう答えた。
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