63 / 63
【番外編】時計ヶ丘高校・文化祭
第63話
しおりを挟む
――後日。
美里ふみ香は実験室にいる小林声に、文化祭で起きた事件の顛末を話していた。
「そうか。将棋部とパソコン部、両部との間に禍根が残らなかったのなら何よりだ。イベントの盛り上がりとしては微妙だったろうがな」
小林は慎重な手つきで、紙の束に何やら白い粉末を振りかけている。
「…………」
おそらくだが、違法に採取した指紋を調べようとしているのだろう。
「……ええと、小林先輩、あのですね、是非とも小林先輩に助けて貰ったお礼をしたいと考えているのですが、何か私にできることはないでしょうか?」
すると小林は少し困ったような顔で笑う。
「わざわざ礼を言われる程のことではない。謎を解くことは私のライフワークであり、レゾンデートルだ。むしろ美里には、情報の提供者として感謝しているくらいなのだ」
「いえ、そうではなくて。先日の文化祭での暗号の解読は小林先輩からしたら不本意な仕事だった筈です。それに交流戦で戴いたお知恵も。私、何かお礼がしたいんです」
「……ふッ、真面目だな。そんな性格だと損ばかりするぞ」
「真面目なのは小林先輩も一緒じゃないですか!!」
ふみ香は顔を赤らめて頬を膨らます。
「悪かった。そうだな、だったらこういうのはどうだ? 今度は私が困っているときに、お前が私を助けるんだ」
「……小林先輩を、私が?」
――この世界で、名探偵である小林声が困るような事件が果たして起こるだろうか?
――もし仮にそんなことがあったとして、そのとき私に何かできるだろうか?
「……残念ですが、私に小林先輩の窮地を救えるとは思えませんけど」
「そんなことはない。お前の真面目さと自分に正直なところは、何時かきっと私の助けになる。これは予感というより確信だ」
「……そんな、買い被りですよ」
そう言って首を振りながらも、ふみ香は小林から対等に扱われたことが内心嬉しかった。
だったら、自分なりに何とか小林の期待に応えたい。
そこでふみ香は天啓に打たれる。
自分一人では無理だが、もう一人いたらどうだ?
――白旗誠士郎。
最近将棋部に入部した小林のライバルを名乗るお調子者だが、事件を推理する能力はふみ香より上だ。
それにやたらと張り合っているのは、小林への好意の裏返しだろう。
ならば、ふみ香はもしかしたら小林と白旗、両方を助けることができるかもしれない。
――そう思うと、自然と笑みが零れた。
「……美里、さっきから何を笑っている?」
小林が怪訝そうにふみ香の顔を見ている。
「……いえ、何でもないです。それに笑ってませんし」
「いや、笑っているだろうが。何なのだ、気になるじゃないか!!」
「何でもないったら何でもありません!!」
【終劇】
美里ふみ香は実験室にいる小林声に、文化祭で起きた事件の顛末を話していた。
「そうか。将棋部とパソコン部、両部との間に禍根が残らなかったのなら何よりだ。イベントの盛り上がりとしては微妙だったろうがな」
小林は慎重な手つきで、紙の束に何やら白い粉末を振りかけている。
「…………」
おそらくだが、違法に採取した指紋を調べようとしているのだろう。
「……ええと、小林先輩、あのですね、是非とも小林先輩に助けて貰ったお礼をしたいと考えているのですが、何か私にできることはないでしょうか?」
すると小林は少し困ったような顔で笑う。
「わざわざ礼を言われる程のことではない。謎を解くことは私のライフワークであり、レゾンデートルだ。むしろ美里には、情報の提供者として感謝しているくらいなのだ」
「いえ、そうではなくて。先日の文化祭での暗号の解読は小林先輩からしたら不本意な仕事だった筈です。それに交流戦で戴いたお知恵も。私、何かお礼がしたいんです」
「……ふッ、真面目だな。そんな性格だと損ばかりするぞ」
「真面目なのは小林先輩も一緒じゃないですか!!」
ふみ香は顔を赤らめて頬を膨らます。
「悪かった。そうだな、だったらこういうのはどうだ? 今度は私が困っているときに、お前が私を助けるんだ」
「……小林先輩を、私が?」
――この世界で、名探偵である小林声が困るような事件が果たして起こるだろうか?
――もし仮にそんなことがあったとして、そのとき私に何かできるだろうか?
「……残念ですが、私に小林先輩の窮地を救えるとは思えませんけど」
「そんなことはない。お前の真面目さと自分に正直なところは、何時かきっと私の助けになる。これは予感というより確信だ」
「……そんな、買い被りですよ」
そう言って首を振りながらも、ふみ香は小林から対等に扱われたことが内心嬉しかった。
だったら、自分なりに何とか小林の期待に応えたい。
そこでふみ香は天啓に打たれる。
自分一人では無理だが、もう一人いたらどうだ?
――白旗誠士郎。
最近将棋部に入部した小林のライバルを名乗るお調子者だが、事件を推理する能力はふみ香より上だ。
それにやたらと張り合っているのは、小林への好意の裏返しだろう。
ならば、ふみ香はもしかしたら小林と白旗、両方を助けることができるかもしれない。
――そう思うと、自然と笑みが零れた。
「……美里、さっきから何を笑っている?」
小林が怪訝そうにふみ香の顔を見ている。
「……いえ、何でもないです。それに笑ってませんし」
「いや、笑っているだろうが。何なのだ、気になるじゃないか!!」
「何でもないったら何でもありません!!」
【終劇】
0
お気に入りに追加
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【恋愛】×【ミステリー】失恋まであと五分~駅へ走れ!~
キルト
ミステリー
「走れっ、走れっ、走れ。」俺は自分をそう鼓舞しながら駅へ急いでいた。
失恋まであと五分。
どうしても今日だけは『あの電車』に乗らなければならなかった。
電車で居眠りする度に出会う不思議な女性『夜桜 結衣』。
俺は彼女の不思議な預言に次第に魅了されていく。
今日コクらなければ、二度と会えないっ。
電車に乗り遅れた俺は、まさかの失恋決定!?
失意の中で、偶然再会した大学の後輩『玲』へ彼女との出来事を語り出す。
ただの惨めな失恋話……の筈が事態は思わぬ展開に!?
居眠りから始まるステルスラブストーリーです。
YouTubeにて紹介動画も公開中です。
https://www.youtube.com/shorts/45ExzfPtl6Q
終焉の教室
シロタカズキ
ミステリー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。
そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。
提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。
最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。
しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。
そして、一人目の犠牲者が決まった――。
果たして、このデスゲームの真の目的は?
誰が裏切り者で、誰が生き残るのか?
友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。
【朗読の部屋】from 凛音
キルト
ミステリー
凛音の部屋へようこそ♪
眠れない貴方の為に毎晩、ちょっとした話を朗読するよ。
クスッやドキッを貴方へ。
youtubeにてフルボイス版も公開中です♪
https://www.youtube.com/watch?v=mtY1fq0sPDY&list=PLcNss9P7EyCSKS4-UdS-um1mSk1IJRLQ3
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
天使の顔して悪魔は嗤う
ねこ沢ふたよ
ミステリー
表紙の子は赤野周作君。
一つ一つで、お話は別ですので、一つずつお楽しいただけます。
【都市伝説】
「田舎町の神社の片隅に打ち捨てられた人形が夜中に動く」
そんな都市伝説を調べに行こうと幼馴染の木根元子に誘われて調べに行きます。
【雪の日の魔物】
周作と優作の兄弟で、誘拐されてしまいますが、・・・どちらかと言えば、周作君が犯人ですね。
【歌う悪魔】
聖歌隊に参加した周作君が、ちょっとした事件に巻き込まれます。
【天国からの復讐】
死んだ友達の復讐
<折り紙から、中学生。友達今井目線>
【折り紙】
いじめられっ子が、周作君に相談してしまいます。復讐してしまいます。
【修学旅行1~3・4~10】
周作が、修学旅行に参加します。バスの車内から目撃したのは・・・。
3までで、小休止、4からまた新しい事件が。
※高一<松尾目線>
【授業参観1~9】
授業参観で見かけた保護者が殺害されます
【弁当】
松尾君のプライベートを赤野君が促されて推理するだけ。
【タイムカプセル1~7】
暗号を色々+事件。和歌、モールス、オペラ、絵画、様々な要素を取り入れた暗号
【クリスマスの暗号1~7】
赤野君がプレゼント交換用の暗号を作ります。クリスマスにちなんだ暗号です。
【神隠し】
同級生が行方不明に。 SNSや伝統的な手品のトリック
※高三<夏目目線>
【猫は暗号を運ぶ1~7】
猫の首輪の暗号から、事件解決
【猫を殺さば呪われると思え1~7】
暗号にCICADAとフリーメーソンを添えて♪
※都市伝説→天使の顔して悪魔は嗤う、タイトル変更

それは奇妙な町でした
ねこしゃけ日和
ミステリー
売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。
バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。
猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。
神暴き
黒幕横丁
ミステリー
――この祭りは、全員死ぬまで終われない。
神託を受けた”狩り手”が一日毎に一人の生贄を神に捧げる奇祭『神暴き』。そんな狂気の祭りへと招かれた弐沙(つぐさ)と怜。閉じ込められた廃村の中で、彼らはこの奇祭の真の姿を目撃することとなる……。
舞姫【中編】
友秋
ミステリー
天涯孤独の少女は、夜の歓楽街で二人の男に拾われた。
三人の運命を変えた過去の事故と事件。
そこには、三人を繋ぐ思いもかけない縁(えにし)が隠れていた。
剣崎星児
29歳。故郷を大火の家族も何もかもを失い、夜の街で強く生きてきた。
兵藤保
28歳。星児の幼馴染。同じく、実姉以外の家族を失った。明晰な頭脳を持って星児の抱く野望と復讐の計画をサポートしてきた。
津田みちる
20歳。両親を事故で亡くし孤児となり、夜の街を彷徨っていた16歳の時、星児と保に拾われた。ストリップダンサーとしてのデビューを控える。
桑名麗子
保の姉。星児の彼女で、ストリップ劇場香蘭の元ダンサー。みちるの師匠。
亀岡
みちるの両親が亡くなった事故の事を調べている刑事。
津田(郡司)武
星児と保が追う謎多き男。
切り札にするつもりで拾った少女は、彼らにとっての急所となる。
大人になった少女の背中には、羽根が生える。
与り知らないところで生まれた禍根の渦に三人は巻き込まれていく。
彼らの行く手に待つものは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる