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【番外編】時計ヶ丘高校・文化祭
第54話
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――クリスマスから時を遡ること、三ヶ月。
九月下旬、文化祭の準備で学校中が慌ただしくなる頃。
将棋部の部室にパソコン部・部長の窓辺林檎が現れたことがことの発端だった。
「よォ、六角。調子はどうだ?」
黒のボブヘアーの窓辺が、ニヤニヤ笑みを浮かべて言う。
「……パソコン部が将棋部に何の用だ?」
対する将棋部・部長の六角計介は、眼鏡のレンズを光らせて窓辺を睨みつける。
「何の用も何も、文化祭の交流戦の偵察に決まっているじゃないか。と言っても、去年と同じでそっちは六角くらいしかウチとまともに戦えないだろうがね」
「…………」
美里ふみ香は部長同士のそんなやり取りを、他人事のように眺めていた。
――将棋部とパソコン部は犬猿の仲である。
先輩からそう説明されたふみ香は何故そうなったのか理由を尋ねたが、部長の六角でさえその理由は知らなかった。どうやら六角も、ただ先輩からそう説明を受けただけらしい。
つまり、お互いにきっかけや理由を知らないまま、犬猿の仲という『設定』だけが後輩に引き継がれた形である。
そして一年に一度、文化祭の二日目に将棋部とパソコン部は対決することになっていた。勝負の内容は毎年決まって将棋の対局だった。
しかし、必ずしも将棋部が有利ということもない。何故ならパソコン部の代表は、パソコン部が制作した将棋のソフトウェアなのだ。
人間と人工知能、将棋の対局においてどちらが優勢であるかは今更説明するまでもない。
「悪いが今年もウチが勝たせてもらうよ、六角」
「……ほざけ。学習して強くなるのがAIだけだと思うなよ。人間だってAIを研究して、更なる高みへと昇ることができることを証明しよう」
「ふふ、面白い。だけど、こっちには強力な助っ人がいるんだよね」
窓辺がそう言って指を鳴らすと、部室にもう一人の人物が現れる。
ボサボサの寝癖頭に無精髭、そして極端に猫背な男。
「……兄さん!?」
――美里桂太。
元将棋部員。
ふみ香を将棋部に無理矢理入部させた、ふみ香の実の兄である。
「……美里さん」
「……美里!?」
「…………」
部員たちが慌てる中、部長の六角だけが静かに桂太を見ていた。
「久しぶりだね、六角。それじゃあ早速だけど妹を返して貰おうか」
九月下旬、文化祭の準備で学校中が慌ただしくなる頃。
将棋部の部室にパソコン部・部長の窓辺林檎が現れたことがことの発端だった。
「よォ、六角。調子はどうだ?」
黒のボブヘアーの窓辺が、ニヤニヤ笑みを浮かべて言う。
「……パソコン部が将棋部に何の用だ?」
対する将棋部・部長の六角計介は、眼鏡のレンズを光らせて窓辺を睨みつける。
「何の用も何も、文化祭の交流戦の偵察に決まっているじゃないか。と言っても、去年と同じでそっちは六角くらいしかウチとまともに戦えないだろうがね」
「…………」
美里ふみ香は部長同士のそんなやり取りを、他人事のように眺めていた。
――将棋部とパソコン部は犬猿の仲である。
先輩からそう説明されたふみ香は何故そうなったのか理由を尋ねたが、部長の六角でさえその理由は知らなかった。どうやら六角も、ただ先輩からそう説明を受けただけらしい。
つまり、お互いにきっかけや理由を知らないまま、犬猿の仲という『設定』だけが後輩に引き継がれた形である。
そして一年に一度、文化祭の二日目に将棋部とパソコン部は対決することになっていた。勝負の内容は毎年決まって将棋の対局だった。
しかし、必ずしも将棋部が有利ということもない。何故ならパソコン部の代表は、パソコン部が制作した将棋のソフトウェアなのだ。
人間と人工知能、将棋の対局においてどちらが優勢であるかは今更説明するまでもない。
「悪いが今年もウチが勝たせてもらうよ、六角」
「……ほざけ。学習して強くなるのがAIだけだと思うなよ。人間だってAIを研究して、更なる高みへと昇ることができることを証明しよう」
「ふふ、面白い。だけど、こっちには強力な助っ人がいるんだよね」
窓辺がそう言って指を鳴らすと、部室にもう一人の人物が現れる。
ボサボサの寝癖頭に無精髭、そして極端に猫背な男。
「……兄さん!?」
――美里桂太。
元将棋部員。
ふみ香を将棋部に無理矢理入部させた、ふみ香の実の兄である。
「……美里さん」
「……美里!?」
「…………」
部員たちが慌てる中、部長の六角だけが静かに桂太を見ていた。
「久しぶりだね、六角。それじゃあ早速だけど妹を返して貰おうか」
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