43 / 63
喜屋武との対決
第43話
しおりを挟む
「隅田を殺した犯人は志摩、お前やッ!!」
白旗が白いカチューシャの三年生、志摩に人差し指を突き付ける。
「……ですから、志摩先輩にはアリバイがあるんですって」
「志摩さんが犯人なわけねーだろ、バーカ」
「…………」
小野寺と秋月が白旗に反論する中、当の志摩は静かに微笑んでいるだけだ。
「……ふん、自分のトリックに余程自信があるみたいやが、既にお前のアリバイトリックは看破した。あ、そういやこれはお前のやのうて喜屋武が考えたアイデアやったか?」
「……よく喋る探偵だこと。それで時限装置は見つかった?」
「ああ。非常階段。それ自体が時限装置やったんや」
白旗が口角を上げると、対照的に志摩の顔から笑みが消えた。
「大昔に流行ったスリンキーっちゅうバネのオモチャ知っとるやろ? ほら、階段を独りでに降りていくアレやアレ。このバネのオモチャは両端の高さが水平のときは動かない。けど、階段のような段差のあるところから突き落とすと、水平になろうとする力と押されたときの前方への推進力で、階段を一段ずつゆっくり降りていくわけや。お前はアレを使って隅田の体に火を付けた」
「……非常階段にそんなバネのオモチャがあったのかよ?」
「ちゃあんとあったよ。ドロドロに溶けたプラスチックのバネの残骸が」
「……それで、どうやって被害者を焼死させたってのよ?」
志摩は額に張りついた前髪を払いながら白旗を睨んでいる。
「もしも、階段からゆっくり降りてくるバネのオモチャが電気を帯びとったらとったらどうや? お前はスリンキーに渇いた布なんかを擦りつけて、静電気を発生させた。この冬の時期や。空気が乾燥しとるし、静電気はすぐに溜まる筈や。そしてスリンキーが階段を降りた先にガソリン塗れの気絶した隅田を配置しておけば、静電気の火花が引火して時限殺人の完成や」
「…………」
志摩は顔面蒼白で、ペタンと床に尻餅をつく。
「……志摩先輩?」
「……志摩さん、嘘だよな?」
「……隅田剣山は最低の男だった。私に振られたのを根に持って妹に近寄り、酷い振り方をして妹を深く傷つけた。あの男は死ぬべきだった。この方法で殺せば、誰も私を裁くことができない。その筈だったのに……」
「それはスマンかったなァ。俺も自分で自分の才能が怖ろしいで」
「小林声に負けるのなら兎も角、こんな二流のヘボ探偵相手に負けるなんて……」
白旗はそこでムッとしたように口元を歪める。
「……ふん、他人の褌で相撲とるような奴に二流やとか言われたないなァ。そういや自己紹介がまだやったな。小林声の宿命のライヴァル、浪速のエルキュール・ポアロとはこの俺、白旗誠士郎のことや!! よう覚えとき!!」
白旗が白いカチューシャの三年生、志摩に人差し指を突き付ける。
「……ですから、志摩先輩にはアリバイがあるんですって」
「志摩さんが犯人なわけねーだろ、バーカ」
「…………」
小野寺と秋月が白旗に反論する中、当の志摩は静かに微笑んでいるだけだ。
「……ふん、自分のトリックに余程自信があるみたいやが、既にお前のアリバイトリックは看破した。あ、そういやこれはお前のやのうて喜屋武が考えたアイデアやったか?」
「……よく喋る探偵だこと。それで時限装置は見つかった?」
「ああ。非常階段。それ自体が時限装置やったんや」
白旗が口角を上げると、対照的に志摩の顔から笑みが消えた。
「大昔に流行ったスリンキーっちゅうバネのオモチャ知っとるやろ? ほら、階段を独りでに降りていくアレやアレ。このバネのオモチャは両端の高さが水平のときは動かない。けど、階段のような段差のあるところから突き落とすと、水平になろうとする力と押されたときの前方への推進力で、階段を一段ずつゆっくり降りていくわけや。お前はアレを使って隅田の体に火を付けた」
「……非常階段にそんなバネのオモチャがあったのかよ?」
「ちゃあんとあったよ。ドロドロに溶けたプラスチックのバネの残骸が」
「……それで、どうやって被害者を焼死させたってのよ?」
志摩は額に張りついた前髪を払いながら白旗を睨んでいる。
「もしも、階段からゆっくり降りてくるバネのオモチャが電気を帯びとったらとったらどうや? お前はスリンキーに渇いた布なんかを擦りつけて、静電気を発生させた。この冬の時期や。空気が乾燥しとるし、静電気はすぐに溜まる筈や。そしてスリンキーが階段を降りた先にガソリン塗れの気絶した隅田を配置しておけば、静電気の火花が引火して時限殺人の完成や」
「…………」
志摩は顔面蒼白で、ペタンと床に尻餅をつく。
「……志摩先輩?」
「……志摩さん、嘘だよな?」
「……隅田剣山は最低の男だった。私に振られたのを根に持って妹に近寄り、酷い振り方をして妹を深く傷つけた。あの男は死ぬべきだった。この方法で殺せば、誰も私を裁くことができない。その筈だったのに……」
「それはスマンかったなァ。俺も自分で自分の才能が怖ろしいで」
「小林声に負けるのなら兎も角、こんな二流のヘボ探偵相手に負けるなんて……」
白旗はそこでムッとしたように口元を歪める。
「……ふん、他人の褌で相撲とるような奴に二流やとか言われたないなァ。そういや自己紹介がまだやったな。小林声の宿命のライヴァル、浪速のエルキュール・ポアロとはこの俺、白旗誠士郎のことや!! よう覚えとき!!」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。

夜の動物園の異変 ~見えない来園者~
メイナ
ミステリー
夜の動物園で起こる不可解な事件。
飼育員・えまは「動物の声を聞く力」を持っていた。
ある夜、動物たちが一斉に怯え、こう囁いた——
「そこに、"何か"がいる……。」
科学者・水原透子と共に、"見えざる来園者"の正体を探る。
これは幽霊なのか、それとも——?

戦憶の中の殺意
ブラックウォーター
ミステリー
かつて戦争があった。モスカレル連邦と、キーロア共和国の国家間戦争。多くの人間が死に、生き残った者たちにも傷を残した
そして6年後。新たな流血が起きようとしている。私立芦川学園ミステリー研究会は、長野にあるロッジで合宿を行う。高森誠と幼なじみの北条七美を含む総勢6人。そこは倉木信宏という、元軍人が経営している。
倉木の戦友であるラバンスキーと山瀬は、6年前の戦争に絡んで訳ありの様子。
二日目の早朝。ラバンスキーと山瀬は射殺体で発見される。一見して撃ち合って死亡したようだが……。
その場にある理由から居合わせた警察官、沖田と速水とともに、誠は真実にたどり着くべく推理を開始する。

迸れ!輝け!!営業マン!!!
飛鳥 進
ミステリー
あらすじ
主人公・金智 京助(かねとも けいすけ)は行く営業先で事件に巻き込まれ解決に導いてきた。
そして、ある事件をきっかけに新米刑事の二条 薫(にじょう かおる)とコンビを組んで事件を解決していく物語である。
第3話
TV局へスポンサー営業の打ち合わせに来た京助。
その帰り、廊下ですれ違った男性アナウンサーが突然死したのだ。
現場に臨場した薫に見つかってしまった京助は当然のように、捜査に参加する事となった。
果たして、この男性アナウンサーの死の真相如何に!?
ご期待ください。
昭和レトロな歴史&怪奇ミステリー 凶刀エピタム
かものすけ
ミステリー
昭和四十年代を舞台に繰り広げられる歴史&怪奇物語。
高名なアイヌ言語学者の研究の後を継いだ若き研究者・佐藤礼三郎に次から次へ降りかかる事件と災難。
そしてある日持ち込まれた一通の手紙から、礼三郎はついに人生最大の危機に巻き込まれていくのだった。
謎のアイヌ美女、紐解かれる禁忌の物語伝承、恐るべき人喰い刀の正体とは?
果たして礼三郎は、全ての謎を解明し、生きて北の大地から生還できるのか。
北海道の寒村を舞台に繰り広げられる謎が謎呼ぶ幻想ミステリーをどうぞ。

それは奇妙な町でした
ねこしゃけ日和
ミステリー
売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。
バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。
猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる