31 / 63
二人目の転校生
第31話
しおりを挟む
「せやから、何回も言うとるやないか!! 男子生徒の死体は一階の教室から、二階の生物室に一瞬のうちに移動しとったんやッ!!」
ふみ香と白旗はパトカーの中で、鷲鼻の警部からしつこく何度も同じ質問をされていた。
「とは言っても、実際にそんなことが起こるわけがないだろう。何かの見間違いだったんじゃないのかね?」
警部はそう言って何とか食い下がろうと、粘り強く白旗に尋ねる。
「……いえ、白旗先輩だけじゃなく、私も見ましたから。一階の教室には間違いなく死体がありました」
旧校舎で殺されていたのは、映画部三年の千秋英寿だった。千秋の死亡推定時刻は12時50分以降で、昼休み以降の足取りが掴めていないということだった。
「せや、俺らに旧校舎に来い言うたんは喜屋武やで!! 犯人はアイツなんやから、アイツから話聞けばええだけやないか!!」
そうだった。今回の事件に関して、犯人だけはハッキリしている。
喜屋武彩芽は瞬間移動能力を使える殺し屋を自称していた。ふみ香や白旗から話を聞くよりも、喜屋武を取り調べした方が事件解決に繋がるのではないか?
「……実はそのことなんだがね」
警部は渋面を作って言いにくそうに言った。
「喜屋武彩芽は瞬間移動能力で千秋の胸にナイフを移動させて殺害したと供述している。それでは警察としては喜屋武を逮捕することはできないんだ」
「はァ!? 自分が殺したって自供しとるのにか!?」
「ああ、現行の法律ではな。現実に実現不可能な方法で殺人をされては立件のしようがない。超能力による殺人は警察の管轄外なのだ」
「……ぐぬぬぬッ」
白旗は歯噛みして悔しがる。
「そうや!! 喜屋武が瞬間移動能力を使える証拠があるんやったわ!! 逆にアイツが瞬間移動能力を使えることを立証できれば、喜屋武を捕まえることも可能やろ!!」
白旗はそう叫ぶと、鞄の中をガサゴソとまさぐり始めた。
「……あれ? 妙やぞ!? 確かここに瓶詰めのオレンジをしまっとった筈やのに……」
「仮に喜屋武彩芽に物質を瞬間移動することができるなら、君が持っていた証拠品を消すこともできるのではないかね?」
「……あ」
警部に突っ込まれて、白旗は大きく口を開けている。
「……ま、何にせよだ。警察としては死体が瞬間移動したなどという話は到底受け入れられない。喜屋武を捕らえるには瞬間移動のトリックを暴く必要がある」
〇 〇 〇
19時になってようやく警察から解放されたふみ香は、小林声のスマホに電話してみることにする。
「……ふむ。中々面白そうな事件だ」
事件の概要を聞いた小林の第一声は、そんな不謹慎なものだった。
「死体の瞬間移動。この謎を解かない限り、犯人を捕らえることはできないということか」
「……小林先輩ならもう謎は解けたんですよね?」
「さてね。だが、これは私への挑戦状だ。私が相手になってやるのが礼儀だろう。美里、明日の放課後に喜屋武を旧校舎へ連れてきてくれないか? そこで決着を付けよう」
ふみ香と白旗はパトカーの中で、鷲鼻の警部からしつこく何度も同じ質問をされていた。
「とは言っても、実際にそんなことが起こるわけがないだろう。何かの見間違いだったんじゃないのかね?」
警部はそう言って何とか食い下がろうと、粘り強く白旗に尋ねる。
「……いえ、白旗先輩だけじゃなく、私も見ましたから。一階の教室には間違いなく死体がありました」
旧校舎で殺されていたのは、映画部三年の千秋英寿だった。千秋の死亡推定時刻は12時50分以降で、昼休み以降の足取りが掴めていないということだった。
「せや、俺らに旧校舎に来い言うたんは喜屋武やで!! 犯人はアイツなんやから、アイツから話聞けばええだけやないか!!」
そうだった。今回の事件に関して、犯人だけはハッキリしている。
喜屋武彩芽は瞬間移動能力を使える殺し屋を自称していた。ふみ香や白旗から話を聞くよりも、喜屋武を取り調べした方が事件解決に繋がるのではないか?
「……実はそのことなんだがね」
警部は渋面を作って言いにくそうに言った。
「喜屋武彩芽は瞬間移動能力で千秋の胸にナイフを移動させて殺害したと供述している。それでは警察としては喜屋武を逮捕することはできないんだ」
「はァ!? 自分が殺したって自供しとるのにか!?」
「ああ、現行の法律ではな。現実に実現不可能な方法で殺人をされては立件のしようがない。超能力による殺人は警察の管轄外なのだ」
「……ぐぬぬぬッ」
白旗は歯噛みして悔しがる。
「そうや!! 喜屋武が瞬間移動能力を使える証拠があるんやったわ!! 逆にアイツが瞬間移動能力を使えることを立証できれば、喜屋武を捕まえることも可能やろ!!」
白旗はそう叫ぶと、鞄の中をガサゴソとまさぐり始めた。
「……あれ? 妙やぞ!? 確かここに瓶詰めのオレンジをしまっとった筈やのに……」
「仮に喜屋武彩芽に物質を瞬間移動することができるなら、君が持っていた証拠品を消すこともできるのではないかね?」
「……あ」
警部に突っ込まれて、白旗は大きく口を開けている。
「……ま、何にせよだ。警察としては死体が瞬間移動したなどという話は到底受け入れられない。喜屋武を捕らえるには瞬間移動のトリックを暴く必要がある」
〇 〇 〇
19時になってようやく警察から解放されたふみ香は、小林声のスマホに電話してみることにする。
「……ふむ。中々面白そうな事件だ」
事件の概要を聞いた小林の第一声は、そんな不謹慎なものだった。
「死体の瞬間移動。この謎を解かない限り、犯人を捕らえることはできないということか」
「……小林先輩ならもう謎は解けたんですよね?」
「さてね。だが、これは私への挑戦状だ。私が相手になってやるのが礼儀だろう。美里、明日の放課後に喜屋武を旧校舎へ連れてきてくれないか? そこで決着を付けよう」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
巨象に刃向かう者たち
つっちーfrom千葉
ミステリー
インターネット黎明期、多くのライターに夢を与えた、とあるサイトの管理人へ感謝を込めて書きます。資産を持たぬ便利屋の私は、叔母へ金の融通を申し入れるが、拒絶され、縁を感じてシティバンクに向かうも、禿げた行員に挙動を疑われ追い出される。仕方なく、無一文で便利屋を始めると、すぐに怪しい来客が訪れ、あの有名アイドルチェリー・アパッチのためにひと肌脱いでくれと頼まれる。失敗したら命もきわどくなる、いかがわしい話だが、取りあえず乗ってみることに……。この先、どうなる……。 お笑いミステリーです。よろしくお願いいたします。
【完結】少女探偵・小林声と13の物理トリック
暗闇坂九死郞
ミステリー
私立探偵の鏑木俊はある事件をきっかけに、小学生男児のような外見の女子高生・小林声を助手に迎える。二人が遭遇する13の謎とトリック。
鏑木 俊 【かぶらき しゅん】……殺人事件が嫌いな私立探偵。
小林 声 【こばやし こえ】……探偵助手にして名探偵の少女。事件解決の為なら手段は選ばない。
蠱惑Ⅱ
壺の蓋政五郎
ミステリー
人は歩いていると邪悪な壁に入ってしまう時がある。その壁は透明なカーテンで仕切られている。勢いのある時は壁を弾き迷うことはない。しかし弱っている時、また嘘を吐いた時、憎しみを表に出した時、その壁に迷い込む。蠱惑の続編で不思議な短編集です。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
真夏の温泉物語
矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
隠蔽(T大法医学教室シリーズ・ミステリー)
桜坂詠恋
ミステリー
若き法医学者、月見里流星の元に、一人の弁護士がやって来た。
自殺とされた少年の死の真実を、再解剖にて調べて欲しいと言う。
しかし、解剖には鑑定処分許可状が必要であるが、警察には再捜査しないと言い渡されていた。
葬儀は翌日──。
遺体が火葬されてしまっては、真実は闇の中だ。
たまたま同席していた月見里の親友、警視庁・特殊事件対策室の刑事、高瀬と共に、3人は事件を調べていく中で、いくつもの事実が判明する。
果たして3人は鑑定処分許可状を手に入れ、少年の死の真実を暴くことが出来るのか。
吹きさらし
ちみあくた
ミステリー
大寒波により、豪雪にみまわれた或る地方都市で、「引きこもり状態の50代男性が痴呆症の母を探して街を彷徨い、見つけた直後に殺害する」という悲惨な事件が起きた。
被疑者・飛江田輝夫の取り調べを担当する刑事・小杉亮一は、母を殺した後、捕まるまで馴染みのパチンコ屋へ入り浸っていた輝夫に得体の知れぬ異常性を感じるが……
エブリスタ、小説家になろう、ノベルアップ+、にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる