29 / 63
二人目の転校生
第29話
しおりを挟む
翌日、ふみ香と白旗は放課後の旧校舎の前に来ていた。
旧校舎は現在の校舎から雑木林を挟んだ500メートル離れた地点に、打ち捨てられたように建っていた。老朽化の為立ち入り禁止になっているが、取り壊すのにも費用がかかるということで先延ばしにされ続けているというのが現状だ。
入り口は鍵が壊されており、誰でも出入りすることができる。
この時期の放課後は既に空が薄暗くなっていて、壁に亀裂が入り、全体を蔦に覆われた旧校舎は酷く不気味に見えた。
「……先輩、どうして小林先輩を連れてこなかったんですか?」
「別に教えんかったわけちゃうわ。急用ができたとか言って断られたんや」
小林声は放課後は探偵事務所でアルバイトをしている。学校で起こる事件ばかりにかまけてもいられないのだろう。
「ま、アイツがおらんでも俺がズバッと事件解決したるわ。安心せえ」
「……まだ事件が起きると決まったわけでもないですけどね」
ふみ香は念の為、警察に喜屋武のことを話しておいた。しかし、まともに相手にされる筈もなく、何かあったら連絡しなさいと気休めを言われただけだった。
「ところで旧校舎に来いとは言われたが、どこに行けばええんや?」
「……さァ? 喜屋武さんは具体的な場所は言ってませんでしたからね」
「しゃーない、一階から順に見ていくしかないか」
ふみ香と白旗は暗い廊下を懐中電灯で照らしながら、ゆっくりと進んでいく。
聞こえるのはコツコツという二人の足音だけだ。
「……ちょっと先輩、あんまりこっちに来ないでくださいよ」
「……お、お前こそくっ付いてくんなや!!」
「…………」
暗闇の中で無言で睨み合うふみ香と白旗。険悪なムードが二人の間を流れる。
そのとき、ふみ香は教室の扉の窓が一瞬だけキラリと光ったことに気が付いた。
「……白旗先輩ッ!!」
「いや、さっきのは体育の授業で汗かいたから、あんまり近付いて欲しくなかったっちゅう意味であってやな……」
「そんなことより今、そこの扉の窓が一瞬光ったんですよ!!」
「何やて!?」
白旗は弾かれたように駆け出すと、ふみ香が指差す扉の窓を覗き込んだ。ふみ香も遅れて白旗の後を追う。
――ドア窓から見た教室の中の光景。
そこには胸にナイフが突き立てられた、血塗れの男子生徒の死体が横たわっていた。
旧校舎は現在の校舎から雑木林を挟んだ500メートル離れた地点に、打ち捨てられたように建っていた。老朽化の為立ち入り禁止になっているが、取り壊すのにも費用がかかるということで先延ばしにされ続けているというのが現状だ。
入り口は鍵が壊されており、誰でも出入りすることができる。
この時期の放課後は既に空が薄暗くなっていて、壁に亀裂が入り、全体を蔦に覆われた旧校舎は酷く不気味に見えた。
「……先輩、どうして小林先輩を連れてこなかったんですか?」
「別に教えんかったわけちゃうわ。急用ができたとか言って断られたんや」
小林声は放課後は探偵事務所でアルバイトをしている。学校で起こる事件ばかりにかまけてもいられないのだろう。
「ま、アイツがおらんでも俺がズバッと事件解決したるわ。安心せえ」
「……まだ事件が起きると決まったわけでもないですけどね」
ふみ香は念の為、警察に喜屋武のことを話しておいた。しかし、まともに相手にされる筈もなく、何かあったら連絡しなさいと気休めを言われただけだった。
「ところで旧校舎に来いとは言われたが、どこに行けばええんや?」
「……さァ? 喜屋武さんは具体的な場所は言ってませんでしたからね」
「しゃーない、一階から順に見ていくしかないか」
ふみ香と白旗は暗い廊下を懐中電灯で照らしながら、ゆっくりと進んでいく。
聞こえるのはコツコツという二人の足音だけだ。
「……ちょっと先輩、あんまりこっちに来ないでくださいよ」
「……お、お前こそくっ付いてくんなや!!」
「…………」
暗闇の中で無言で睨み合うふみ香と白旗。険悪なムードが二人の間を流れる。
そのとき、ふみ香は教室の扉の窓が一瞬だけキラリと光ったことに気が付いた。
「……白旗先輩ッ!!」
「いや、さっきのは体育の授業で汗かいたから、あんまり近付いて欲しくなかったっちゅう意味であってやな……」
「そんなことより今、そこの扉の窓が一瞬光ったんですよ!!」
「何やて!?」
白旗は弾かれたように駆け出すと、ふみ香が指差す扉の窓を覗き込んだ。ふみ香も遅れて白旗の後を追う。
――ドア窓から見た教室の中の光景。
そこには胸にナイフが突き立てられた、血塗れの男子生徒の死体が横たわっていた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
彩霞堂
綾瀬 りょう
ミステリー
無くした記憶がたどり着く喫茶店「彩霞堂」。
記憶を無くした一人の少女がたどりつき、店主との会話で消し去りたかった記憶を思い出す。
以前ネットにも出していたことがある作品です。
高校時代に描いて、とても思い入れがあります!!
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
三部作予定なので、そこまで書ききれるよう、頑張りたいです!!!!
瞳に潜む村
山口テトラ
ミステリー
人口千五百人以下の三角村。
過去に様々な事故、事件が起きた村にはやはり何かしらの祟りという名の呪いは存在するのかも知れない。
この村で起きた奇妙な事件を記憶喪失の青年、桜は遭遇して自分の記憶と対峙するのだった。
バージン・クライシス
アーケロン
ミステリー
友人たちと平穏な学園生活を送っていた女子高生が、密かに人身売買裏サイトのオークションに出展され、四千万の値がつけられてしまった。可憐な美少女バージンをめぐって繰り広げられる、熾烈で仁義なきバージン争奪戦!
変な屋敷 ~悪役令嬢を育てた部屋~
aihara
ミステリー
侯爵家の変わり者次女・ヴィッツ・ロードンは博物館で建築物史の学術研究院をしている。
ある日彼女のもとに、婚約者とともに王都でタウンハウスを探している妹・ヤマカ・ロードンが「この屋敷とてもいいんだけど、変な部屋があるの…」と相談を持ち掛けてきた。
とある作品リスペクトの謎解きストーリー。
本編9話(プロローグ含む)、閑話1話の全10話です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる