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螺旋状の殺意
第22話
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非常階段三階に関係者が集められた。
「さて、今回の殺人事件について順にご説明致しましょう」
小林声がぐるりと辺りを見回した。
第一発見者の木本ことね、白旗誠士郎、美里ふみ香、将棋部の部員たち、非常階段一階付近にいた土井和彦と手塚寧々のカップル。そして、刑事二人。
「……説明ったって、梶原殺したんは遊部で決まりやろ?」
白旗が口を尖らせて言う。
「いや、それは違うな。梶原を殺した犯人は別にいる」
「……それはあり得ないですよ。私たちは犯人の後を追って、非常階段を三階から一階まで駆け下りたんです。血の跡もあったし、そもそも兇器の鋏は遊部さんの手の中にありました」
ふみ香も小林の推理の無理を指摘する。
「断言するが、非常階段を一階まで降りて来た奴は三十分間一人もいなかったぞ。そこの関西弁の箒頭が犯人じゃないと言うのならな」
とは土井。先刻の白旗とのやり取りの意趣返しのつもりだろう。
多数からの反論を受けても、小林声はどこ吹く風である。むしろ、その反応を楽しみにしていたようにニヤニヤ笑みを浮かべている。
「皆さん、考える順番が逆なんですよ。だから犯人の仕掛けた罠に気が付かない」
「……逆? ……罠? 小林君、確かさっきもそんなことを言っていたが、どういうことかいい加減説明してくれ給え」
警部は腕組みしながらむくれてみせる。
「わかりました。まず前提として、殺された順番は梶原の次に遊部が殺されたのではありません。先に遊部が殺され、その後に梶原が殺されたと考えて間違いないでしょう」
「……なッ!?」
ふみ香は思わず驚きの声を上げてしまう。
「……んなアホな話があるかァ!? 二人を死に至らしめた兇器の鋏は一階で死んどった遊部が手に持っとったんやぞ!! 梶原の後に遊部が死んだちゅうのは確定事項や!!」
「ところがそれだと説明できない点が残る。階段に残された血痕だ。非常階段に点々と落ちていた血の跡は、梶原と遊部、二人の血が混じり合ったものだった。仮に梶原が先に殺されたのだとすれば、階段に落ちていた血は梶原だけのものでなくてはおかしい」
「……確かに血痕はAB型とO型、梶原と遊部の二人の血液が混ざったものでした」
オールバックの若手刑事が小林の推理を補足する。
「更に、遊部には致命傷となった首の傷以外に外傷はなかった。遊部優吾と梶原海斗、二人の血が混ざったものを非常階段に落とすには、先に遊部を殺しておかないと上手くいかないのだよ」
「……ほなら、犯人は先に一階で遊部を殺して、その後三階まで非常階段で上がってから梶原を殺し、また非常階段で一階に逃げた言うんか!? 動きとして不自然過ぎやし、犯人が一階に逃げたなら、カップルに目撃されてへんとおかしいやないか!!」
「…………」
白旗の指摘は的を得ている、とふみ香は感じた。
確かに先に遊部を殺していたなら、階段の血の跡には説明が付くが、今度はそれ以外の部分で矛盾が生じることになってしまう。
「それとも三階で梶原を殺した後、兇器の鋏だけが一階の遊部の死体の手元に戻って行ったとでも言うつもりか?」
「何だ白旗、今日はやけに冴えているじゃないか。正に今お前が言った通りだよ。犯人が二人の命を奪った後、兇器だけが一階の遊部の手元まで移動していったのだ」
「さて、今回の殺人事件について順にご説明致しましょう」
小林声がぐるりと辺りを見回した。
第一発見者の木本ことね、白旗誠士郎、美里ふみ香、将棋部の部員たち、非常階段一階付近にいた土井和彦と手塚寧々のカップル。そして、刑事二人。
「……説明ったって、梶原殺したんは遊部で決まりやろ?」
白旗が口を尖らせて言う。
「いや、それは違うな。梶原を殺した犯人は別にいる」
「……それはあり得ないですよ。私たちは犯人の後を追って、非常階段を三階から一階まで駆け下りたんです。血の跡もあったし、そもそも兇器の鋏は遊部さんの手の中にありました」
ふみ香も小林の推理の無理を指摘する。
「断言するが、非常階段を一階まで降りて来た奴は三十分間一人もいなかったぞ。そこの関西弁の箒頭が犯人じゃないと言うのならな」
とは土井。先刻の白旗とのやり取りの意趣返しのつもりだろう。
多数からの反論を受けても、小林声はどこ吹く風である。むしろ、その反応を楽しみにしていたようにニヤニヤ笑みを浮かべている。
「皆さん、考える順番が逆なんですよ。だから犯人の仕掛けた罠に気が付かない」
「……逆? ……罠? 小林君、確かさっきもそんなことを言っていたが、どういうことかいい加減説明してくれ給え」
警部は腕組みしながらむくれてみせる。
「わかりました。まず前提として、殺された順番は梶原の次に遊部が殺されたのではありません。先に遊部が殺され、その後に梶原が殺されたと考えて間違いないでしょう」
「……なッ!?」
ふみ香は思わず驚きの声を上げてしまう。
「……んなアホな話があるかァ!? 二人を死に至らしめた兇器の鋏は一階で死んどった遊部が手に持っとったんやぞ!! 梶原の後に遊部が死んだちゅうのは確定事項や!!」
「ところがそれだと説明できない点が残る。階段に残された血痕だ。非常階段に点々と落ちていた血の跡は、梶原と遊部、二人の血が混じり合ったものだった。仮に梶原が先に殺されたのだとすれば、階段に落ちていた血は梶原だけのものでなくてはおかしい」
「……確かに血痕はAB型とO型、梶原と遊部の二人の血液が混ざったものでした」
オールバックの若手刑事が小林の推理を補足する。
「更に、遊部には致命傷となった首の傷以外に外傷はなかった。遊部優吾と梶原海斗、二人の血が混ざったものを非常階段に落とすには、先に遊部を殺しておかないと上手くいかないのだよ」
「……ほなら、犯人は先に一階で遊部を殺して、その後三階まで非常階段で上がってから梶原を殺し、また非常階段で一階に逃げた言うんか!? 動きとして不自然過ぎやし、犯人が一階に逃げたなら、カップルに目撃されてへんとおかしいやないか!!」
「…………」
白旗の指摘は的を得ている、とふみ香は感じた。
確かに先に遊部を殺していたなら、階段の血の跡には説明が付くが、今度はそれ以外の部分で矛盾が生じることになってしまう。
「それとも三階で梶原を殺した後、兇器の鋏だけが一階の遊部の死体の手元に戻って行ったとでも言うつもりか?」
「何だ白旗、今日はやけに冴えているじゃないか。正に今お前が言った通りだよ。犯人が二人の命を奪った後、兇器だけが一階の遊部の手元まで移動していったのだ」
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