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螺旋状の殺意
第19話
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非常階段を降りていく度に、カンカンカンと甲高い音が鳴る。
その途中、ふみ香は手すりや階段に血の水滴が落ちた形跡を幾つも発見する。
「……白旗先輩、これって!?」
「……ああ、わかっとる。この血の跡はさっきの被害者、梶原のもんやろう。つまり、この血の跡を追っていけば犯人に辿り着けるっちゅうこっちゃ」
ふみ香と白旗は三階から螺旋階段を降りていき、とうとう一階に到着する。
そこには更に男子生徒の死体が倒れていた。茶髪のパーマで学ランの前のボタンを全開にした、少しチャラい印象の男だった。死体の首筋には刃物で切り裂かれた跡があり、辺りには大量の血が飛び散っている。
そして死体のその手には、血で真っ赤に塗れた大きな鋏が握られていた。
「……せ、先輩、これって!?」
「多分、コイツが三階の殺人の犯人なんやろな。ほんでここまで逃げてきて、同じ兇器で自分の喉を切り裂いた」
白旗はポケットから撮り出したスマホで死体の写真を何枚も撮っている。
「……でも、どうして一度逃げてから自殺したんでしょう?」
「大方、逃げられへんことに気付いて絶望したとかやろ。よくあることや」
白旗はそう言って、非常階段の扉を開ける。
扉の外は駐車場になっていて、近くのベンチにはイチャつく一組のカップルが座っていた。
「スマンけど一個訊かせてくれ。あんたら、俺らの前に非常階段から降りてきた奴を見かけんかったか?」
「……あァん?」
ツーブロックの髪にガタイのいい強面の男は不機嫌そうに白旗を睨みつける。
「知らねーよ。消えろ」
「……ほうか、なら質問を変えるわ。このドアの先に死体があんねんけど、お前がやったっちゅうことでええか?」
すると男の顔がさっと青ざめる。
「……な、何で俺が!?」
「それこそ知るか、や。疑われるんが嫌なら、質問にちゃあんと答えた方が身の為やと思うでー」
「カズくんは何もやってないよ」
そう言って風船ガムを膨らますのは、男の隣に座る金髪ギャルの女子生徒だ。
「ウチら三十分前からずっとここにいるけど、その間は誰も階段から降りてきた人なんていなかった」
「貴重な証言、おおきに」
白旗は満足そうに頷いている。
「これで決まりやな。やっぱり犯人は一階で死んどる男や」
「……本当にそうなんでしょうか?」
ふみ香には腑に落ちない点がある。
「たとえばですけど、あちらのカップルが口裏を合わせていて、実際には彼氏の方が梶原さんと一階の男子生徒を殺害して逃走したということも考えられますよね?」
「あァん!?」
ツーブロックの男、カズくんが今度はふみ香を睨む。
「……た、たとえばの話です」
「どっちにしろ、そんなもん第一発見者の地雷系女子に訊けば一発や。一階で死んどったチャラ男は比較的細身で、そっちの彼氏はゴリゴリのオラオラ系やから、後ろ姿でもどっちかくらいは判断できるやろ」
白旗はそう言いながら、断りもなくスマホでカップルの写真を撮る。
「美里、お前は一旦これ持って三階まで戻れ。第一発見者に犯人の首実検《くびじっけん》をさせるんや」
「……白旗先輩は?」
「ここで現場を保存する。そこのカップルが事件と関係してないとはまだ言い切れへんからなァ」
その途中、ふみ香は手すりや階段に血の水滴が落ちた形跡を幾つも発見する。
「……白旗先輩、これって!?」
「……ああ、わかっとる。この血の跡はさっきの被害者、梶原のもんやろう。つまり、この血の跡を追っていけば犯人に辿り着けるっちゅうこっちゃ」
ふみ香と白旗は三階から螺旋階段を降りていき、とうとう一階に到着する。
そこには更に男子生徒の死体が倒れていた。茶髪のパーマで学ランの前のボタンを全開にした、少しチャラい印象の男だった。死体の首筋には刃物で切り裂かれた跡があり、辺りには大量の血が飛び散っている。
そして死体のその手には、血で真っ赤に塗れた大きな鋏が握られていた。
「……せ、先輩、これって!?」
「多分、コイツが三階の殺人の犯人なんやろな。ほんでここまで逃げてきて、同じ兇器で自分の喉を切り裂いた」
白旗はポケットから撮り出したスマホで死体の写真を何枚も撮っている。
「……でも、どうして一度逃げてから自殺したんでしょう?」
「大方、逃げられへんことに気付いて絶望したとかやろ。よくあることや」
白旗はそう言って、非常階段の扉を開ける。
扉の外は駐車場になっていて、近くのベンチにはイチャつく一組のカップルが座っていた。
「スマンけど一個訊かせてくれ。あんたら、俺らの前に非常階段から降りてきた奴を見かけんかったか?」
「……あァん?」
ツーブロックの髪にガタイのいい強面の男は不機嫌そうに白旗を睨みつける。
「知らねーよ。消えろ」
「……ほうか、なら質問を変えるわ。このドアの先に死体があんねんけど、お前がやったっちゅうことでええか?」
すると男の顔がさっと青ざめる。
「……な、何で俺が!?」
「それこそ知るか、や。疑われるんが嫌なら、質問にちゃあんと答えた方が身の為やと思うでー」
「カズくんは何もやってないよ」
そう言って風船ガムを膨らますのは、男の隣に座る金髪ギャルの女子生徒だ。
「ウチら三十分前からずっとここにいるけど、その間は誰も階段から降りてきた人なんていなかった」
「貴重な証言、おおきに」
白旗は満足そうに頷いている。
「これで決まりやな。やっぱり犯人は一階で死んどる男や」
「……本当にそうなんでしょうか?」
ふみ香には腑に落ちない点がある。
「たとえばですけど、あちらのカップルが口裏を合わせていて、実際には彼氏の方が梶原さんと一階の男子生徒を殺害して逃走したということも考えられますよね?」
「あァん!?」
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「……た、たとえばの話です」
「どっちにしろ、そんなもん第一発見者の地雷系女子に訊けば一発や。一階で死んどったチャラ男は比較的細身で、そっちの彼氏はゴリゴリのオラオラ系やから、後ろ姿でもどっちかくらいは判断できるやろ」
白旗はそう言いながら、断りもなくスマホでカップルの写真を撮る。
「美里、お前は一旦これ持って三階まで戻れ。第一発見者に犯人の首実検《くびじっけん》をさせるんや」
「……白旗先輩は?」
「ここで現場を保存する。そこのカップルが事件と関係してないとはまだ言い切れへんからなァ」
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