18 / 63
螺旋状の殺意
第18話
しおりを挟む
白旗誠士郎が将棋部に入部して、一ヶ月が経った。
白旗は部員たちから囲いや戦法を教えられ、それらをみるみるうちに吸収し、部長の六角計介を上回る程の棋力を身に付けていた。
――放課後の将棋部の部室にて。
「まさかこの短期間で、ここまで力を付けるとは……」
六角が感嘆の声を漏らす。
「ま、これが才能ちゅうことなんでっしゃろなァ」
とは白旗だ。
小林声との推理対決では全く良いところがない白旗だったが、浪速のエルキュール・ポアロを名乗るだけあって、地頭はかなりいいらしい。
「もう六角先輩、簡単に負けないでくださいよー。白旗先輩が調子に乗るじゃないですかー」
美里ふみ香がむくれて言う。
「ま、美里には一週間で追いついたけどな」
「何よ、このォ!!」
「いやスマンスマン、冗談やて。せやけど真面目にやってみると、将棋て楽しいもんなんやな。自分でもこんなにハマるとは思ってへんかったわ。中々に奥が深い」
「……まァ、そう言って貰えるなら将棋部員として悪い気はしませんけど」
「きゃああああああああああああああああああああああああああッ!?」
そのとき、部室の近くで女の悲鳴が聞こえた。
「……何ごとや!?」
「外の非常階段の方から聞こえたぞ!!」
ふみ香たち将棋部員たちは揃って部室から飛び出し、走って声のした方へ向かう。
非常階段の扉の前には茶色い髪をツインテールにした、小柄な女子生徒が腰を抜かしたように座り込んでいる。上履きの色から二年生だとわかる。
先程の悲鳴の主だろう。
「おい、どないしたんや?」
「……あ、あっち」
ツインテール少女はそう言って、非常階段の扉を指差している。
「…………」
白旗は一度唾を飲み込むと、意を決した表情で非常階段の扉を開ける。
扉の先、非常階段の踊り場には左目から血を流して倒れている男子生徒の死体があった。背が高く、よく日に焼けている。生前はきっと爽やかなイケメンだったことだろう。
「……コイツは三年の梶原海斗だ」
そう言ったのは将棋部部長の六角だ。
「……お知り合いですか?」
「二年のとき、同じクラスだったんだ。テニス部員だった筈だ」
「……どうやら目を刃物で貫かれて殺されたようやなァ」
白旗が死体を覗き込みながら言う。
「……は、はやく!!」
ツインテールの少女が白旗のズボンを掴んで何かを訴えかけている。
「何や?」
「犯人の男は、その階段を下に降りて逃げて行ったのよ!!」
「……それをはよ言わんかい!! 美里、犯人追いかけるで!! 部長たちはこの子と現場の保存を頼みます!!」
「……わかった!!」
「どうして私まで犯人を追いかけなきゃいけないんですかァ!?」
「うるさい、黙って付いて来い!!」
ふみ香と白旗は、赤く錆びた金属製の螺旋階段を大急ぎで駆け下りていった。
白旗は部員たちから囲いや戦法を教えられ、それらをみるみるうちに吸収し、部長の六角計介を上回る程の棋力を身に付けていた。
――放課後の将棋部の部室にて。
「まさかこの短期間で、ここまで力を付けるとは……」
六角が感嘆の声を漏らす。
「ま、これが才能ちゅうことなんでっしゃろなァ」
とは白旗だ。
小林声との推理対決では全く良いところがない白旗だったが、浪速のエルキュール・ポアロを名乗るだけあって、地頭はかなりいいらしい。
「もう六角先輩、簡単に負けないでくださいよー。白旗先輩が調子に乗るじゃないですかー」
美里ふみ香がむくれて言う。
「ま、美里には一週間で追いついたけどな」
「何よ、このォ!!」
「いやスマンスマン、冗談やて。せやけど真面目にやってみると、将棋て楽しいもんなんやな。自分でもこんなにハマるとは思ってへんかったわ。中々に奥が深い」
「……まァ、そう言って貰えるなら将棋部員として悪い気はしませんけど」
「きゃああああああああああああああああああああああああああッ!?」
そのとき、部室の近くで女の悲鳴が聞こえた。
「……何ごとや!?」
「外の非常階段の方から聞こえたぞ!!」
ふみ香たち将棋部員たちは揃って部室から飛び出し、走って声のした方へ向かう。
非常階段の扉の前には茶色い髪をツインテールにした、小柄な女子生徒が腰を抜かしたように座り込んでいる。上履きの色から二年生だとわかる。
先程の悲鳴の主だろう。
「おい、どないしたんや?」
「……あ、あっち」
ツインテール少女はそう言って、非常階段の扉を指差している。
「…………」
白旗は一度唾を飲み込むと、意を決した表情で非常階段の扉を開ける。
扉の先、非常階段の踊り場には左目から血を流して倒れている男子生徒の死体があった。背が高く、よく日に焼けている。生前はきっと爽やかなイケメンだったことだろう。
「……コイツは三年の梶原海斗だ」
そう言ったのは将棋部部長の六角だ。
「……お知り合いですか?」
「二年のとき、同じクラスだったんだ。テニス部員だった筈だ」
「……どうやら目を刃物で貫かれて殺されたようやなァ」
白旗が死体を覗き込みながら言う。
「……は、はやく!!」
ツインテールの少女が白旗のズボンを掴んで何かを訴えかけている。
「何や?」
「犯人の男は、その階段を下に降りて逃げて行ったのよ!!」
「……それをはよ言わんかい!! 美里、犯人追いかけるで!! 部長たちはこの子と現場の保存を頼みます!!」
「……わかった!!」
「どうして私まで犯人を追いかけなきゃいけないんですかァ!?」
「うるさい、黙って付いて来い!!」
ふみ香と白旗は、赤く錆びた金属製の螺旋階段を大急ぎで駆け下りていった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
四次元残響の檻(おり)
葉羽
ミステリー
音響学の権威である変わり者の学者、阿座河燐太郎(あざかわ りんたろう)博士が、古びた洋館を改装した音響研究所の地下実験室で謎の死を遂げた。密室状態の実験室から博士の身体は消失し、物証は一切残されていない。警察は超常現象として捜査を打ち切ろうとするが、事件の報を聞きつけた神藤葉羽は、そこに論理的なトリックが隠されていると確信する。葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、奇妙な音響装置が残された地下実験室を訪れる。そこで葉羽は、博士が四次元空間と共鳴現象を利用した前代未聞の殺人トリックを仕掛けた可能性に気づく。しかし、謎を解き明かそうとする葉羽と彩由美の周囲で、不可解な現象が次々と発生し、二人は見えない恐怖に追い詰められていく。四次元残響が引き起こす恐怖と、天才高校生・葉羽の推理が交錯する中、事件は想像を絶する結末へと向かっていく。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幽子さんの謎解きレポート~しんいち君と霊感少女幽子さんの実話を元にした本格心霊ミステリー~
しんいち
ミステリー
オカルトに魅了された主人公、しんいち君は、ある日、霊感を持つ少女「幽子」と出会う。彼女は不思議な力を持ち、様々な霊的な現象を感じ取ることができる。しんいち君は、幽子から依頼を受け、彼女の力を借りて数々のミステリアスな事件に挑むことになる。
彼らは、失われた魂の行方を追い、過去の悲劇に隠された真実を解き明かす旅に出る。幽子の霊感としんいち君の好奇心が交錯する中、彼らは次第に深い絆を築いていく。しかし、彼らの前には、恐ろしい霊や謎めいた存在が立ちはだかり、真実を知ることがどれほど危険であるかを思い知らされる。
果たして、しんいち君と幽子は、数々の試練を乗り越え、真実に辿り着くことができるのか?彼らの冒険は、オカルトの世界の奥深さと人間の心の闇を描き出す、ミステリアスな物語である。
No.15【短編×謎解き】余命5分
鉄生 裕
ミステリー
【短編×謎解き】
名探偵であるあなたのもとに、”連続爆弾魔ボマー”からの挑戦状が!
目の前にいるのは、身体に爆弾を括りつけられた四人の男
残り時間はあと5分
名探偵であるあんたは実際に謎を解き、
見事に四人の中から正解だと思う人物を当てることが出来るだろうか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
作中で、【※お手持ちのタイマーの開始ボタンを押してください】という文言が出てきます。
もしよければ、実際にスマホのタイマーを5分にセットして、
名探偵になりきって5分以内に謎を解き明かしてみてください。
また、”連続爆弾魔ボマー”の謎々は超難問ですので、くれぐれもご注意ください
旧校舎のフーディーニ
澤田慎梧
ミステリー
【「死体の写った写真」から始まる、人の死なないミステリー】
時は1993年。神奈川県立「比企谷(ひきがやつ)高校」一年生の藤本は、担任教師からクラス内で起こった盗難事件の解決を命じられてしまう。
困り果てた彼が頼ったのは、知る人ぞ知る「名探偵」である、奇術部の真白部長だった。
けれども、奇術部部室を訪ねてみると、そこには美少女の死体が転がっていて――。
奇術師にして名探偵、真白部長が学校の些細な謎や心霊現象を鮮やかに解決。
「タネも仕掛けもございます」
★毎週月水金の12時くらいに更新予定
※本作品は連作短編です。出来るだけ話数通りにお読みいただけると幸いです。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
※本作品の主な舞台は1993年(平成五年)ですが、当時の知識が無くてもお楽しみいただけます。
※本作品はカクヨム様にて連載していたものを加筆修正したものとなります。
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる