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見えない証拠
第49話
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僕(凩哲平)、鰤岡まりあ、燃杭元、塊原結麻の四人は、塊原家の自家用ヘリに乗せられて、結麻の所有する軽井沢の別荘に来ていた。
「それではお嬢様、明後日の夕刻迎えに参りますので」
「うん、藤原。ご苦労様」
そんなやり取りがあったあと、執事はヘリに乗って空に消えていったのだった。
「……はァー、やっぱ金持ちはスケールがちげェや」
元は感心したように、呆れたようにヘリの消えていった方角を見ている。
別荘は正方形のサイコロのような形をした巨大な建物だった。どうやらヘリポートがある屋上が玄関という特殊な構造のようだ。
「じゃあ、まずは荷物を部屋に運ぼっか。部屋割りはもう決めてあるから案内するね」
結麻が先陣を切って建物の中へ降りていく。
「ようこそ、四元素館へ!」
〇 〇 〇
別荘、四元素館は大きく二つの階層に分かれていた。
二階は四人分の客室だ。客室は四元素館の名前の通り、火の間、風の間、水の間、土の間、となっている。
火の間は壁全面が赤い煉瓦造りで、大きなマントルピースが取り付けられている。ちょうど人間が一人隠れられるくらいの大きさだ。
「……これって実際に使えるのか?」
元が結麻に尋ねる。
「勿論。だけどあまりお勧めはしないかな。もし火事起こしたら賠償請求するから、その覚悟があるならどうぞ」
「……いいや、遠慮しておく」
風の間はまるで屋外のような部屋だった。部屋の中に竹林があり、松があり、池の中には蓮の葉が浮かんでいる。
「……風の間というか、日本庭園だなこりゃ」
僕がそう言うと、結麻はニヤリと笑う。
「四元素の『風』は『気』や『空気』と表記されることもあるからね。酸素を作っているのは植物だから、風の間は植物の部屋というコンセプトになったの」
水の間はまるで水族館のような水槽だらけの空間だった。十以上ある水槽の中には色とりどりの魚や海月が泳いでいる。
「わァ、綺麗……」
まりあが思わず感嘆の声を漏らす。
「四つの客室の中で一番の自信作が水の間なんだ。まりあに気に入って貰えたようで私も嬉しいよ」
「この水槽には何がいるんだ?」
僕は水の間の一つだけ魚が泳いでいない水槽を指差して尋ねる。その水槽の中には砂利や木の枝が入っているだけだ。
「……ああ、それね。本当はそこにも魚がいたんだけど、最近死なせちゃって。まりあ、ごめんね」
「ううん、死んじゃったのは仕方ないよ」
そして最後の土の間は、壁や時計などあちこちにダイヤにルビー、エメラルドにアメシストなどの宝石で装飾された部屋だった。
「凄い部屋だね。泥棒が入ってこないかちょっと心配だけど……」
僕は率直な感想を言う。
「セキュリティは万全だから安心して。何者かが侵入してきたら、一分以内に警備員が駆けつけてくれるから」
部屋割りはそれぞれの名前から、火の間に燃杭元、風の間に凩哲平、水の間に鰤岡まりあ、土の間に塊原結麻、と割り振られた。
一階は全フロアぶち抜きの広大なプール付きバーベキュー場になっている。
キッチンと巨大な冷蔵庫も備え付けられていて、中にはビールやワイン、日本酒も入っている。
「うおー、酒だ! 酒があるぞ!」
元が冷蔵庫の中を見て歓喜の声を上げた。
「……おいおい、いいのかよ?」
僕は結麻にそっと耳打ちする。
「うん。今はまりあがああいう状況だしね。嫌なこととか不安を吹き飛ばすには、酒の力を借りるのが一番かと思って」
「……仕方ないな。でも大概にしておけよ」
「大丈夫。私たちがここにいる限り、何も起きたりしないよ」
「それではお嬢様、明後日の夕刻迎えに参りますので」
「うん、藤原。ご苦労様」
そんなやり取りがあったあと、執事はヘリに乗って空に消えていったのだった。
「……はァー、やっぱ金持ちはスケールがちげェや」
元は感心したように、呆れたようにヘリの消えていった方角を見ている。
別荘は正方形のサイコロのような形をした巨大な建物だった。どうやらヘリポートがある屋上が玄関という特殊な構造のようだ。
「じゃあ、まずは荷物を部屋に運ぼっか。部屋割りはもう決めてあるから案内するね」
結麻が先陣を切って建物の中へ降りていく。
「ようこそ、四元素館へ!」
〇 〇 〇
別荘、四元素館は大きく二つの階層に分かれていた。
二階は四人分の客室だ。客室は四元素館の名前の通り、火の間、風の間、水の間、土の間、となっている。
火の間は壁全面が赤い煉瓦造りで、大きなマントルピースが取り付けられている。ちょうど人間が一人隠れられるくらいの大きさだ。
「……これって実際に使えるのか?」
元が結麻に尋ねる。
「勿論。だけどあまりお勧めはしないかな。もし火事起こしたら賠償請求するから、その覚悟があるならどうぞ」
「……いいや、遠慮しておく」
風の間はまるで屋外のような部屋だった。部屋の中に竹林があり、松があり、池の中には蓮の葉が浮かんでいる。
「……風の間というか、日本庭園だなこりゃ」
僕がそう言うと、結麻はニヤリと笑う。
「四元素の『風』は『気』や『空気』と表記されることもあるからね。酸素を作っているのは植物だから、風の間は植物の部屋というコンセプトになったの」
水の間はまるで水族館のような水槽だらけの空間だった。十以上ある水槽の中には色とりどりの魚や海月が泳いでいる。
「わァ、綺麗……」
まりあが思わず感嘆の声を漏らす。
「四つの客室の中で一番の自信作が水の間なんだ。まりあに気に入って貰えたようで私も嬉しいよ」
「この水槽には何がいるんだ?」
僕は水の間の一つだけ魚が泳いでいない水槽を指差して尋ねる。その水槽の中には砂利や木の枝が入っているだけだ。
「……ああ、それね。本当はそこにも魚がいたんだけど、最近死なせちゃって。まりあ、ごめんね」
「ううん、死んじゃったのは仕方ないよ」
そして最後の土の間は、壁や時計などあちこちにダイヤにルビー、エメラルドにアメシストなどの宝石で装飾された部屋だった。
「凄い部屋だね。泥棒が入ってこないかちょっと心配だけど……」
僕は率直な感想を言う。
「セキュリティは万全だから安心して。何者かが侵入してきたら、一分以内に警備員が駆けつけてくれるから」
部屋割りはそれぞれの名前から、火の間に燃杭元、風の間に凩哲平、水の間に鰤岡まりあ、土の間に塊原結麻、と割り振られた。
一階は全フロアぶち抜きの広大なプール付きバーベキュー場になっている。
キッチンと巨大な冷蔵庫も備え付けられていて、中にはビールやワイン、日本酒も入っている。
「うおー、酒だ! 酒があるぞ!」
元が冷蔵庫の中を見て歓喜の声を上げた。
「……おいおい、いいのかよ?」
僕は結麻にそっと耳打ちする。
「うん。今はまりあがああいう状況だしね。嫌なこととか不安を吹き飛ばすには、酒の力を借りるのが一番かと思って」
「……仕方ないな。でも大概にしておけよ」
「大丈夫。私たちがここにいる限り、何も起きたりしないよ」
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