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見えない証拠

第47話

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「なァ小林こばやし、お前の思う最強のトリックとは何だ?」

「ふん、愚問ぐもんだな。私に解けない謎などない」

「……うん。まァお前ならそう言うだろうとは思っていたけどね。だがいて言うならでいい。どんなトリックならお前に対抗できると思う?」

「……そうだな。強いて言うなら」

「強いて言うなら?」

「目に見えないトリック、だな」

「目に見えない?」

「殺人事件のトリックというものは密室であれ何であれ、大抵事件現場に証拠を残してしまうものだ。どんなに巧妙に隠そうとしても、違和感を完全に消し去ることは不可能だ。それが致命傷になって、完全犯罪の計画は脆くも瓦解がかいする。だが、本来なら致命傷になり得る証拠が目に見えなかったらどうだ?」

「……よく言っている意味がわからないな。殺人事件の証拠が目に見えないってどういう状況だよ? 目に見えない細菌を兇器きょうきに使うとかか?」

「そうではない。細菌やウイルスなら、顕微鏡などの道具があれば見ることができる。私が言っているのは正真正銘、無色透明。そこに証拠はあるのに私たちには見ることができない。もしもそんなトリックで殺人を行われたなら、脅威ではあるな」

「証拠が目に見えないんじゃあ謎を解こうにもヒントがないってことだよな。俺にはそんな状況、想像することすらできないが……」

「まァ脅威ではあるが、最初に言った通り、私に解けない謎など存在しない。人間のやったことなら、必ず物理法則のルールの中で説明できるのだ。たとえ目には見えなくとも、必ず尻尾を掴んでやるさ」

(鏑木かぶらき探偵事務所にて、何時かの会話より)
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