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第19話 トリック城殺人事件

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 工口こうぐち彰久あきひさ肉倉ししくらエリカ、朝立あさだち元気げんきの三人は謎の招待状を受けて、西洋の古城のような建物へ赴いていた。

 そこで彼らを待ち受けていたのは、奇妙な不可能殺人だった。

     🏰 🏰 🏰

「まずは状況を確認しましょう。殺されていたのはイラストレーターの美蘭田みらんだ美々みみ、二十四歳。現場は内側から鍵が掛けられた密室。死因は頭に毒矢が刺さったことでしょう。犯人は部屋に飾られていたからくり人形を遠隔で操り、弓を引かせて矢を飛ばしたと考えられます」
 朝立が二人に現場の状況を説明する。

 部屋の中には死体が横たわったベッドと「弓曳童子ゆみひきどうじ」と呼ばれるからくり人形がある。ゼンマイを引くことで人形が自動で矢を手にとり、弓で飛ばす仕掛けだ。
 約200年前、からくり技師・田中たなか久重ひさしげが作ったからくり人形の傑作である。

「問題は弓矢の飛距離です。弓曳童子が置いてある箪笥の上から矢を飛ばしても、美蘭田には届かない。犯人はどうやって矢の飛距離を伸ばしたのでしょうか?」

「犯人、わかったんだけど」
 肉倉エリカの瞳がキラリと光る。

「エリカちゃん、本当か?」
 工口がエリカを熱い目で見ている。

「犯人は矢の飛距離を伸ばしたんじゃない。

「……どゆこと?」

「ウチらがいるこのトリック城は西洋の城じゃなかった。。それも昭和に建てられた古いホテル。それを犯人は改築したんだ」

「……そうか、わかったぞ! このベッドは回転する仕掛けだったんだな!」

「流石はエロ警部! 昭和のスケベオヤジにとっては回転ベッドはラブホテルの代名詞と言っても過言ではないよね」

「全面鏡張りの部屋で回転しながらするセックスは、そりゃもう盛り上がったものだ」
 工口は昔を懐かしむように目を細めた。

「風営法の改正で近頃では絶滅寸前の回転ベッドだけど、江戸のからくり人形といい、日本人の発想力と技術力には舌を巻くよ」

「うむ。回転ベッドは正にエロの文化遺産だな」

「……ラブホテルの回転ベッドと江戸のからくり人形を同列に扱わないでください」
 朝立が遠慮がちに突っ込みを入れる。

「犯人はこの館の持ち主の佐理伴さりばんアキ。回転ベッドの設置には風営法の認可が必要だから、そっちで引っ張って取り調べするのがいいかもね」

 こうして事件は一件落着。今回も難事件であった。ふぅ。







「ところでエリカちゃん、巣鴨にまだ現役の回転ベッドがあるホテルがあるんだけど、今度二人で行かない?」

「絶対ヤダ」
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