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第5話 白衣の天使殺人事件

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 工口こうぐち警部と肉倉ししくらエリカ。
 かつて犯罪捜査の名コンビとも謳われた二人だったが、今はアクリル板を挟んで向かい合っている。

「……警部のこと信じてたのに。サイテー」
「エリカちゃん、誤解だ。信じてくれ、俺は無実だ!」

 工口彰久あきひさは強姦殺人の容疑で逮捕されていた。

     🍆 🍆 🍆

 ことの発端は警部の緊急入院だった。警部はそこで担当の看護師の相武あいぶ葉子ようこと親しい関係になる。
 そして警部の手術当日、相武が病院内の多目的トイレで首を絞めて殺されているのが見つかった。
 相武葉子の髪や衣服には工口警部の精液が付着しており、現場には警部の陰毛も残されていた。

「ま、何時かはやると思っていたけど」

「全然信じてないじゃねーか」

「冗談だよ」
 エリカはケラケラ笑っている。

「こんなときに笑えない冗談なんか言うな」
 警部は流石に心細い様子で何時もの元気がなかった。

「……しゃーねーなァ、助けてやるから詳しく事情を聞かせろよ。で、何で被害者に警部の精液ザーメンが付いてたんだ?」

「葉子ちゃんに下の処理をして貰っているときにその、ぶっかけちゃって……。多分そのとき付いたのだと思う」

「早漏なんだ、警部って」

「ほっとけ」

「警部の部屋は個室? それとも大部屋?」

「その中間くらいだな。三人部屋だったんだが一人退院して、事件のあった夜は二人で使っていた」

「……ふーん」
 エリカは何時しか真剣な顔になっていた。

「最後の質問。そもそも警部はどうして入院してたの?」

「何だ、そんなことか。盲腸だよ。腹が痛くて入院したのに、まさか痛くもない腹を探られることになろうとはな」
 警部は弱り目に祟り目といった様子で溜息をついた。
 ――次の瞬間。

「犯人、わかったんだけど」

     🍆 🍆 🍆

「本当か? エリカちゃん!」

「うん。この事件の犯人は警部ではあり得ない。何故なら、警部は盲腸の手術を受ける予定だったから」

「……どういうこと?」

「盲腸なら手術の前に必ず剃毛ていもうするじゃん? つまり警部は事件当時、とぅるんとぅるんのパイパン警部だったということになる」

「誰がパイパン警部だ」

「なら、現場に残されていた警部の陰毛はどう説明する? パイパン警部の毛が、何故現場から見つかったのか?」

「そうか!」

「犯人は警部の病室の相部屋の患者。恐らく犯人はカーテン越しに警部の暴発を知り、それを利用して罪を擦り付けようとした。犯人の誤算は、警部の射精の原因が剃毛処理だったということだね」

 こうして事件は一件落着。今回も難事件であった。ふぅ。
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