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『腸』――14日目

125.『八木沼 由絵』

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 ――――PM16:30、リビングルーム

筒井 惣子郎
「ここへ来て、もう14日か」

道明寺 晶
「…………ああ」

小田切 冬司
「長い二週間だったね。とてもとても、長い」
(…………人狼じゃないだけ、君たちはマシだけどね。
 俺はここに来て、…………白百合さんに対する醜い感情と向き合わなきゃいけなくて、大変だって言うのに)

道明寺 晶
「…………本当に、長かったよな」
(美海と、勝平と、小田切が人狼……。
 …………毎晩、びくびくしながら襲撃に行ってたんだろうな。美海なんか、特に。
 ………………この小田切が、上手く取り持ってくれればいいが。
 …………小田切、すこし冷静すぎやしないか?
 ………………こんなところが、勝平と折り合いが悪そうで不安要素なんだよな)

八木沼 由絵
「……あ! アキラぁ~」

道明寺 晶
「……おお、由絵」
(リビングでだらだらしていたら、由絵がやって来た)

八木沼 由絵
「あ、せーとかいちょーと小田切くんもいる~!
 ちょうど良かった! 由絵、話があったんだ~!」

筒井 惣子郎
「どうした?」

八木沼 由絵
「襲撃のことなんだけど、
 由絵も一回だけでいいから参加したいんだ!
 お願いぃ~」
(……そうすれば、勝平もすこしは心配してくれるかもだから)

道明寺 晶
「……それはダメだ」

八木沼 由絵
「なんでぇ~?」

筒井 惣子郎
「初めに決めたことなんだ。
 今更変えられないだろう」

八木沼 由絵
「ん~でも、由絵思ったんだけど、
 …………それって不公平じゃない?」

道明寺 晶
「…………それを言われると弱いな」

小田切 冬司
「………………」
(あーあ…………八木沼さんは言い出したら聞かないから)

八木沼 由絵
「それに由絵は用心棒でも人狼でもないよ?
 なんの心配もいらないよ?」

道明寺 晶
「……けどな、由絵だけ特別扱いするのは出来ないって、わかるだろ?」

八木沼 由絵
「………………」
(……なによ、みんな頭が固いんだから)

道明寺 晶
「それに勝平が心配するだろ?
 あいつことだから、ものすごーく怒るぞ?」

八木沼 由絵
「…………それが目的だもん」

筒井 惣子郎
「え……?」

八木沼 由絵
「…………見てて気付かない?
 勝平が、最近あたしに冷たいなって。
 …………勝平と付き合って、3年になるの。
 …………あたしたち、もうダメなのかも知れない」

道明寺 晶
「おーいおい、考えすぎだって。
 そりゃただの慣れってやつだ。安定した証拠だろ?」

八木沼 由絵
「違うもん! 勝平は…………勝平は…………、
 たぶん、美海のことが好きなの。
 アキラも無関係じゃないんだよ!?」

道明寺 晶
「…………はい?」
(…………勝平が美海に優しいのは今に始まったことじゃないんだが……)

筒井 惣子郎
「…………俺たちはいない方がいいか?」

小田切 冬司
「そうだね…………」

八木沼 由絵
「ううん! いて!
 …………とにかく、そんなわけだから、
 あたしと勝平の今後のために、させてほしいの。
 …………明日だけでいいから。……お願い」

筒井 惣子郎
「………………」

小田切 冬司
「………………」

道明寺 晶
「………………」

八木沼 由絵
「………………」

筒井 惣子郎
「…………どうする?」

道明寺 晶
「…………それで由絵が納得するなら。
 …………いいか? 明日、一回だけだぞ?」

八木沼 由絵
「あ! ありがとー! アキラぁ!」

道明寺 晶
「おぉおぉおぉ」
(由絵はそう言って、俺に抱き付いた。
 おいおい、美海はこんなことじゃ怒らないけど、……まずいだろって)

八木沼 由絵
「ほんとに! うれしい!
 じゃああたしは部屋に戻るね!
 3人ともありがと~ばいば~い!」

道明寺 晶
「………………」
(そうして由絵は軽やかに去って行った)

小田切 冬司
「…………よかったの?」

道明寺 晶
「まあ、あの子は本当に言い出したら聞かないから。
 ああ見えて」

小田切 冬司
「そう…………」

筒井 惣子郎
「……まあ、きっと大丈夫だろう」

道明寺 晶
「…………だな」
(ならいいけどねえ…………。
 …………14日、二週間、か。
 そろそろ、犯人がなにか仕掛けてくるんじゃないだろうか。
 …………なにごとも、なければ良いがな……)
**





本堂 空太
(この日の投票も処刑はなかった。
 みんな、騒ぎはしないけど、顔を合わせて普通に会話ができるようにはなっていた。
 助けが来るまで…………見つけてもらうまで、こうであればいい。
 …………来るかどうかは、わからないけど。

 ………………。
 ……………………。

 ……………………けど。

 …………けどこの日の夜、恐れていたことがついに現実となった……)





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