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『腸』――2日目

097.『夜の時間(14)』

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 ――――AM00:20、応接間

千景 勝平
「うまくいったな」

白百合 美海
「ね」

小田切 冬司
「大成功」

千景 勝平
「…………そうだ、ちょっと待ってろ」

小田切 冬司
「え、勝平くん!」

白百合 美海
「あれ~、どこ行っちゃったの」

小田切 冬司
(白百合さんと二人きりなんて…………気まずいじゃないか)

白百合 美海
「小田切くん、昨日はよく眠れた?」

小田切 冬司
「うん。ぐっすりとはいかなかったけど、平気だよ。
 …………白百合さんは?」

白百合 美海
「ふふ、あたしもだいたいそんな感じ。
 …………でも、これで本当に安心できるわね」

小田切 冬司
「そうだね」
(まあ、都丸さんの問題とか、本当に警察が来てくれるかとか、不安要素はいっぱいだけどね)

白百合 美海
「…………小田切くんは、どう思う?」

小田切 冬司
「え?」

白百合 美海
「このゲームのこと」

小田切 冬司
「…………昼間アキラが言ってたけど、
 快楽目的の可能性がやっぱり高いんじゃない?
 怨みを買うような人なんて、この中にはあまりいない…………こともないか」

白百合 美海
「え?」

小田切 冬司
「いや……ううん、怨みと言うか、やっかみを買いそうな人はむしろいっぱいいるなと思って」

白百合 美海
「…………例えば?」

小田切 冬司
「そうだね。
 …………アキラとか、朔也とか、筒井くんとか、…………勝平くんも白百合さんもね。
 と言うか、ほぼ全員かな」

白百合 美海
「…………自分で言うのも難だけど、否定できないわ」

小田切 冬司
「白百合さんは、嫌がらせ受けたこととかある?」

白百合 美海
「あたしはないかな。
 いつもそばに、アキラや朔也や果帆がいてくれたから」

小田切 冬司
「そう」

白百合 美海
「…………果帆や由絵はあったみたいね。
 特に由絵は、勝平くんと付き合うようになってから、すこし」

千景 勝平
「勝平くんはモテるからね」

白百合 美海
「男の子らしいもんね。
 …………でも、小田切くんは自覚してないかもだけど、あなたも結構女の子から人気があるのよ?」

小田切 冬司
「いや、まさか。俺なんて剣道くらいしかないし」

白百合 美海
「ふふ、その姿が素敵なんだって。
 あたしも小田切くん、素敵な男の子だなって思うよ」

小田切 冬司
「白百合さん…………テレるからさ」

白百合 美海
「ふふ、ごめんね」

小田切 冬司
「……………………」
(白百合さんに褒められちゃった。
 どうしよう…………嬉しいけど、動揺が出てなきゃいいけど。

 白百合さん、俺はね、犯人の目的は君だと思ってるよ。
 君はあまりにも美しすぎるから…………心も、体も、なにもかも。
 君を壊したい。そんな破壊願望が犯人にはあるんじゃないかな?
 …………俺と同じように)

千景 勝平
「おまたせー」

白百合 美海
「おかえりなさいー」

小田切 冬司
「おかえり、勝平くん」

白百合 美海
「なあに? それ」

千景 勝平
「倉庫にあった。…………酒」

小田切 冬司
「ちょっと、俺らまだ未成年なんだから」

千景 勝平
「うそだよノンアルコールだっての。
 乾杯しようぜ」

白百合 美海
「…………襲撃失敗を祝して?」

千景 勝平
「おう。ほら」

白百合 美海
「ありがとう」

小田切 冬司
「ありがとう」

千景 勝平
「…………じゃ、かんぱーい」

白百合 美海
「かんぱーい」

小田切 冬司
「乾杯。
 …………今日は早く寝ようね」

千景 勝平
「おう」

白百合 美海
「今日はゆっくり休みましょ。
 本当によかったわ。二人ともありがとう」

千景 勝平
「おう」

小田切 冬司
(……………………。
 いつまで、こんな日々が続くかな)
**





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