2 / 5
2、「情報屋」と「抹消屋」
しおりを挟む
BAR「タンホイザー」の営業時間は夜の七時から朝の二時までだ。
ワーグナーだけが朝の九時に起床し、朝食を済ませる。その後は店の掃除と雑務、仕込みやカップ磨きとくるくると働く。気が向いた時や忙しい時に限り、ヴェルディは手伝ってくれる。アマデウスは絶対に動かない。頼み込んで手伝わせた後は、色々と要求を押し付けて来るので面倒だ。
ヴェルディは店の上にあるマンションの一室をワーグナーとシェアしているので、手伝ってくれる。だが愛想笑いもなく、口も利かないので接客を手伝えとは言えない。
問題はアマデウスだ。このマンションはワーグナーの父親が管理人をしているので、一人息子であるワーグナーが部屋と店を間借りしているのは理解もできよう。
しかし、接客も店の手伝いも一切しないアマデウスが、ひとりで悠々自適に一室を借りている件について、ワーグナーはいつも「解せないわ」と文句を言いつつ、二人の食事を作る。
その日は、ワーグナーは別の店のヘルプに駆り出されて不在だった。ヴェルディとアマデウスは勝手にBGMをロッシーニの「セビーリャの理髪師」に変えて、のんびり読書やら、カップ拭きなど各々好き勝手に過ごしていた。
夜の八時を過ぎた頃、休業の下げ札を無視して金髪の青年が入ってきた。
「あれ、ルーイさん。今、ワーグナーはいないよ」
「久しぶり。知ってるよ。仲介したのは僕だもの」
見目も人当たりも良いワーグナーの第三の仕事――それは近所のホストクラブのヘルプである。
今日もきらきらと艶めく金髪を纏めもせず、ルーイは白いローブとスキニーパンツ姿だ。顔と服の絶望的な乖離を指摘するのはワーグナーぐらいで、残りの二人は放置する。
ルーイはBGMに合わせた鼻歌を歌いながら、勝手にカウンターに入ってワインセラーを漁る。
「あ、シャルドネの新作だー。貰おうっと」
風のように気ままな青年は、ヴェルが磨いたワイングラスを一つ手にして、カウンターに腰かけた。
「ねえ、ワーグナーって、ホストやっててもあの口調なの? 女の人は大丈夫な訳?」
「いつも通りだよ。女の子も、最初は驚くけどすぐに慣れる。気安く話せるって評判はいい。ワーグナーは口調と仕草が女性っぽいだけで、中身はノンケだもん。ホストは向いてると思う。僕はそれを観察するのが楽しい」
「悪趣味」
「君に褒めてもらえるとは光栄だなあ」
アマデウスの毒舌も通じない。このマンションのオーナーなので強気にも出られないという点では、この青年が最強と言える。
「ルーイさんとワーグナーが親子って設定はいつまで引っ張る気? 無理がありすぎる」
「そんなこと言っても事実だから変えようがないよ。別れた奥さんとの子がワーグナー。母親が刑事なんてやっていたせいか、あの子もなーんか几帳面でさあ……学生時代に進学校だの、塾だの行って、母親の期待に沿えるように頑張りすぎたせいか、オペラに出逢ってからは、まあ、頭の螺子がはじけ飛んじゃった」
「……嘘だ。ルーイさんは十八か、多く見積もっても二十代前半にしか見えないじゃん!!」
「疑り深いなあ。DNA鑑定書を持ってこようかな。この世に多少の不思議があった方がいいスパイスじゃないか。年齢詐欺に関して君だけは人のことをとやかく言えないよ」
「所詮僕らは異端児なんだからさ」とルーイはグラスを掲げた。
それを言われては、アマデウスはぐうの音も出ない。この生意気で口達者な子供を黙らせられるのはルーイくらいだ。
彼は日本全土を統括する「JOKERS」という情報屋の幹部だ。彼らには独自のルールがあり、長年日本の迷宮入り事件を解決に導いてきた。その実績ゆえ、警察と司法でさえ「JOKERS」には手出しができない。
「ワーグナーはなんで『JOKERS』に入らなかったの?」
「今日は質問攻めだね」
「うるさいのがいないからね」
「あの子はさ、よくも悪くも目立つだろ。『抹消』の能力が厄介でねー、警察と裁判所とは絶妙なバランスを取ってる僕らの中にあっては、狂っちゃう恐れがあるというボスの一声で入れられなかった。あと、単にうちの連中と仲が悪い」
「最後の一言で台無し。ヴェルは知ってたの?」
急に話を振られて、ソファでスマホゲームをしていたヴェルは顔を上げて首を振った。知らないということらしい。一瞬、目を離した隙に負けたのか、びくりと肩を跳ねさせ、スマホ画面をしょんぼりと見つめ、アマデウスに殺気を向けてくる。
「あはは、言葉を話さなくてもヴェルは雄弁だなあ」
ルーイは酔ってもいないのに快活に笑う。
その時だ。
「ルーイ!!」
突如、店の扉が開き、ワーグナーがスーツを乱して帰ってきた。
「やあ、お疲れ。邪魔してるよ」
「あんた、母さんにあたしがホストもやってるってばらしたでしょ!?」
「うん。隠すことでも無いから言ったねえ。なにか言われたの? 明松さん、元気だった?」
「言われたどころじゃないわ!! 生き生きとして、大量の見合い写真と婚活パーティーのお知らせを押し付けられたわよ!! このキャラクターで回避してきたのに台無しじゃない!!」
「一人息子の宿命じゃないか」
「あたしは気ままな夜の蝶でいたいの」
「ノンケがよく言う……。久しぶりにパパって呼んでくれたら話を付けてあげる」
「嫌よ。あたしよりもすべすべのお肌してるのがむかつくのに!!」
ワーグナーが帰ってきた途端に、店の中は大騒ぎだ。アマデウスは両耳を塞いで二人から距離を取る。ヴェルはまだゲームに夢中のようだ。
「ところで、先日の山の井組の案件は綺麗に片づけたね。えらいぞー」
「依頼人のおっさんが面倒くさくて『抹消』して欲しかったんじゃないの?」
「そうだよ。僕は依存されるのが一番嫌いだもん」
金切り声でルーイに怒るワーグナーだが、標的であるルーイは笑顔を絶やさない。
「しかもマンションの廊下の電球が切れてるって相談したのに、業者に頼んでくれてないわ!!」
「忘れてた。じゃあ明日電話しておくよ」
「相談したの三か月前……あんたを待ってたら年が変わるわ!!」
「じゃあ、電話してくれたんだ。えらいね、ありがとう」
ルーイはワーグナーのふわふわとしたハニーブロンドを撫でた。ワーグナーはなぜか顔を赤くして震え始めた。
やかましい親子喧嘩から離れて、ヴェルの横に腰かけたアマデウスが、こそりと呟く。
「ワーグナーってさ、ルーイさんに認めてもらいたい節があったの、『抹消屋』の仕事としてだと勘違いしてた。あの様子じゃあ、なんでもいいと思わない?」
ヴェルディはやっとゲームを辞め、ルーイとワーグナーをしばし観察し、アマデウスにこくりと頷いた。
「まあまあ、今日は僕が直々に依頼を持ってきたんだ」
「先に言いなさいよ!!」
狭い店内で叫ぶワーグナーを無視して、ルーイはワイングラスと瓶を持ってソファに座った。
ワーグナーに「タブレット、貸して」と当然のように息子を顎で使う。
文句を言いながらも、白いタブレットをルーイに渡し、ワーグナーは立ったままタブレットを覗き込む。
ルーイは検索サイトで頭の中にある英数字の数列を入力し、検索した。繋がったのは「JOKERS」のアーカイブサイトだ。
「来週、東京芸術劇場でイタリアのパレモディオン歌劇団が『トスカ』を演るんだけどね、困ったことに、こいつらはコカインの運び人なんだ。でも、スポンサーがマフィアにもイタリアの外交官のトップにも顔が利く大物の財閥関係者でさ。彼が死んじゃうとイタリアの経済基盤どころか、ユーロ自体が打撃を食らう。そこで、君達にはコカインとマフィア、そして官僚のコカイン販売ルートだけの『抹消』をお願いしたい」
ワーグナーは「また面倒な……」とあからさまに渋い顔をする。
「もちろん、報酬は弾むさ。三千万でどう?」
「いいよ」
「アマっち、勝手に受けないでよ」
「だって三千万は魅力的すぎる。一人当たり一千万でしょ。断る理由があるの?」
「付随してくる責任が大きいの。下手を打てば、ヨーロッパに大打撃を与えちゃうし、偉大な歌劇団が一つ消えるわ」
「さすが、よく考えているじゃないか」
「ルーイ、最低でも一週間は調査時間を貰うわよ。『JOKERS』のボスにも話を通して、全面バックアップして頂戴――それが無いなら、この依頼はお断り」
口を挟みかけたアマデウスを背後からヴェルディが両手で口を塞いだ。事件の規模を正しく理解しているようだ。
「了解。ボスへの交渉も二日はかかる。どう連携するのかも相談しないと――じゃあ、僕はこれで失礼する。調査の進捗はこまめにお願いする。こちらも話の進展は逐一連絡する」
「またね」とルーイは軽やかに店を後にした。
「……潜入調査か?」
本日初めてヴェルディが口を開いた。ワーグナーは「そうなるわね」と肩を竦める。
ヴェルディはサングラスを外した。その目は淡い水色をしていた。
「あれ、もう外すの?」
「来週が公演なら、もう来日してるわよ」
ヴェルディはタブレットで歌劇団の宿泊先を確認すると「いってくる」と店を出た。
「ヴェルの百面相、久しぶりだね」
「あれを使った後の三日はポンコツよ。呼吸と排泄しかできないもの。調査期間を一週間も貰っておいて正解だったわ」
運び屋の調査に加えて、三日間、使い物にならないヴェルディの世話を考えると、今から頭が痛いワーグナーであった。
to be continued...
ワーグナーだけが朝の九時に起床し、朝食を済ませる。その後は店の掃除と雑務、仕込みやカップ磨きとくるくると働く。気が向いた時や忙しい時に限り、ヴェルディは手伝ってくれる。アマデウスは絶対に動かない。頼み込んで手伝わせた後は、色々と要求を押し付けて来るので面倒だ。
ヴェルディは店の上にあるマンションの一室をワーグナーとシェアしているので、手伝ってくれる。だが愛想笑いもなく、口も利かないので接客を手伝えとは言えない。
問題はアマデウスだ。このマンションはワーグナーの父親が管理人をしているので、一人息子であるワーグナーが部屋と店を間借りしているのは理解もできよう。
しかし、接客も店の手伝いも一切しないアマデウスが、ひとりで悠々自適に一室を借りている件について、ワーグナーはいつも「解せないわ」と文句を言いつつ、二人の食事を作る。
その日は、ワーグナーは別の店のヘルプに駆り出されて不在だった。ヴェルディとアマデウスは勝手にBGMをロッシーニの「セビーリャの理髪師」に変えて、のんびり読書やら、カップ拭きなど各々好き勝手に過ごしていた。
夜の八時を過ぎた頃、休業の下げ札を無視して金髪の青年が入ってきた。
「あれ、ルーイさん。今、ワーグナーはいないよ」
「久しぶり。知ってるよ。仲介したのは僕だもの」
見目も人当たりも良いワーグナーの第三の仕事――それは近所のホストクラブのヘルプである。
今日もきらきらと艶めく金髪を纏めもせず、ルーイは白いローブとスキニーパンツ姿だ。顔と服の絶望的な乖離を指摘するのはワーグナーぐらいで、残りの二人は放置する。
ルーイはBGMに合わせた鼻歌を歌いながら、勝手にカウンターに入ってワインセラーを漁る。
「あ、シャルドネの新作だー。貰おうっと」
風のように気ままな青年は、ヴェルが磨いたワイングラスを一つ手にして、カウンターに腰かけた。
「ねえ、ワーグナーって、ホストやっててもあの口調なの? 女の人は大丈夫な訳?」
「いつも通りだよ。女の子も、最初は驚くけどすぐに慣れる。気安く話せるって評判はいい。ワーグナーは口調と仕草が女性っぽいだけで、中身はノンケだもん。ホストは向いてると思う。僕はそれを観察するのが楽しい」
「悪趣味」
「君に褒めてもらえるとは光栄だなあ」
アマデウスの毒舌も通じない。このマンションのオーナーなので強気にも出られないという点では、この青年が最強と言える。
「ルーイさんとワーグナーが親子って設定はいつまで引っ張る気? 無理がありすぎる」
「そんなこと言っても事実だから変えようがないよ。別れた奥さんとの子がワーグナー。母親が刑事なんてやっていたせいか、あの子もなーんか几帳面でさあ……学生時代に進学校だの、塾だの行って、母親の期待に沿えるように頑張りすぎたせいか、オペラに出逢ってからは、まあ、頭の螺子がはじけ飛んじゃった」
「……嘘だ。ルーイさんは十八か、多く見積もっても二十代前半にしか見えないじゃん!!」
「疑り深いなあ。DNA鑑定書を持ってこようかな。この世に多少の不思議があった方がいいスパイスじゃないか。年齢詐欺に関して君だけは人のことをとやかく言えないよ」
「所詮僕らは異端児なんだからさ」とルーイはグラスを掲げた。
それを言われては、アマデウスはぐうの音も出ない。この生意気で口達者な子供を黙らせられるのはルーイくらいだ。
彼は日本全土を統括する「JOKERS」という情報屋の幹部だ。彼らには独自のルールがあり、長年日本の迷宮入り事件を解決に導いてきた。その実績ゆえ、警察と司法でさえ「JOKERS」には手出しができない。
「ワーグナーはなんで『JOKERS』に入らなかったの?」
「今日は質問攻めだね」
「うるさいのがいないからね」
「あの子はさ、よくも悪くも目立つだろ。『抹消』の能力が厄介でねー、警察と裁判所とは絶妙なバランスを取ってる僕らの中にあっては、狂っちゃう恐れがあるというボスの一声で入れられなかった。あと、単にうちの連中と仲が悪い」
「最後の一言で台無し。ヴェルは知ってたの?」
急に話を振られて、ソファでスマホゲームをしていたヴェルは顔を上げて首を振った。知らないということらしい。一瞬、目を離した隙に負けたのか、びくりと肩を跳ねさせ、スマホ画面をしょんぼりと見つめ、アマデウスに殺気を向けてくる。
「あはは、言葉を話さなくてもヴェルは雄弁だなあ」
ルーイは酔ってもいないのに快活に笑う。
その時だ。
「ルーイ!!」
突如、店の扉が開き、ワーグナーがスーツを乱して帰ってきた。
「やあ、お疲れ。邪魔してるよ」
「あんた、母さんにあたしがホストもやってるってばらしたでしょ!?」
「うん。隠すことでも無いから言ったねえ。なにか言われたの? 明松さん、元気だった?」
「言われたどころじゃないわ!! 生き生きとして、大量の見合い写真と婚活パーティーのお知らせを押し付けられたわよ!! このキャラクターで回避してきたのに台無しじゃない!!」
「一人息子の宿命じゃないか」
「あたしは気ままな夜の蝶でいたいの」
「ノンケがよく言う……。久しぶりにパパって呼んでくれたら話を付けてあげる」
「嫌よ。あたしよりもすべすべのお肌してるのがむかつくのに!!」
ワーグナーが帰ってきた途端に、店の中は大騒ぎだ。アマデウスは両耳を塞いで二人から距離を取る。ヴェルはまだゲームに夢中のようだ。
「ところで、先日の山の井組の案件は綺麗に片づけたね。えらいぞー」
「依頼人のおっさんが面倒くさくて『抹消』して欲しかったんじゃないの?」
「そうだよ。僕は依存されるのが一番嫌いだもん」
金切り声でルーイに怒るワーグナーだが、標的であるルーイは笑顔を絶やさない。
「しかもマンションの廊下の電球が切れてるって相談したのに、業者に頼んでくれてないわ!!」
「忘れてた。じゃあ明日電話しておくよ」
「相談したの三か月前……あんたを待ってたら年が変わるわ!!」
「じゃあ、電話してくれたんだ。えらいね、ありがとう」
ルーイはワーグナーのふわふわとしたハニーブロンドを撫でた。ワーグナーはなぜか顔を赤くして震え始めた。
やかましい親子喧嘩から離れて、ヴェルの横に腰かけたアマデウスが、こそりと呟く。
「ワーグナーってさ、ルーイさんに認めてもらいたい節があったの、『抹消屋』の仕事としてだと勘違いしてた。あの様子じゃあ、なんでもいいと思わない?」
ヴェルディはやっとゲームを辞め、ルーイとワーグナーをしばし観察し、アマデウスにこくりと頷いた。
「まあまあ、今日は僕が直々に依頼を持ってきたんだ」
「先に言いなさいよ!!」
狭い店内で叫ぶワーグナーを無視して、ルーイはワイングラスと瓶を持ってソファに座った。
ワーグナーに「タブレット、貸して」と当然のように息子を顎で使う。
文句を言いながらも、白いタブレットをルーイに渡し、ワーグナーは立ったままタブレットを覗き込む。
ルーイは検索サイトで頭の中にある英数字の数列を入力し、検索した。繋がったのは「JOKERS」のアーカイブサイトだ。
「来週、東京芸術劇場でイタリアのパレモディオン歌劇団が『トスカ』を演るんだけどね、困ったことに、こいつらはコカインの運び人なんだ。でも、スポンサーがマフィアにもイタリアの外交官のトップにも顔が利く大物の財閥関係者でさ。彼が死んじゃうとイタリアの経済基盤どころか、ユーロ自体が打撃を食らう。そこで、君達にはコカインとマフィア、そして官僚のコカイン販売ルートだけの『抹消』をお願いしたい」
ワーグナーは「また面倒な……」とあからさまに渋い顔をする。
「もちろん、報酬は弾むさ。三千万でどう?」
「いいよ」
「アマっち、勝手に受けないでよ」
「だって三千万は魅力的すぎる。一人当たり一千万でしょ。断る理由があるの?」
「付随してくる責任が大きいの。下手を打てば、ヨーロッパに大打撃を与えちゃうし、偉大な歌劇団が一つ消えるわ」
「さすが、よく考えているじゃないか」
「ルーイ、最低でも一週間は調査時間を貰うわよ。『JOKERS』のボスにも話を通して、全面バックアップして頂戴――それが無いなら、この依頼はお断り」
口を挟みかけたアマデウスを背後からヴェルディが両手で口を塞いだ。事件の規模を正しく理解しているようだ。
「了解。ボスへの交渉も二日はかかる。どう連携するのかも相談しないと――じゃあ、僕はこれで失礼する。調査の進捗はこまめにお願いする。こちらも話の進展は逐一連絡する」
「またね」とルーイは軽やかに店を後にした。
「……潜入調査か?」
本日初めてヴェルディが口を開いた。ワーグナーは「そうなるわね」と肩を竦める。
ヴェルディはサングラスを外した。その目は淡い水色をしていた。
「あれ、もう外すの?」
「来週が公演なら、もう来日してるわよ」
ヴェルディはタブレットで歌劇団の宿泊先を確認すると「いってくる」と店を出た。
「ヴェルの百面相、久しぶりだね」
「あれを使った後の三日はポンコツよ。呼吸と排泄しかできないもの。調査期間を一週間も貰っておいて正解だったわ」
運び屋の調査に加えて、三日間、使い物にならないヴェルディの世話を考えると、今から頭が痛いワーグナーであった。
to be continued...
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
椿の国の後宮のはなし
犬噛 クロ
キャラ文芸
※毎日18時更新予定です。
架空の国の後宮物語。
若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。
有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。
しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。
幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……?
あまり暗くなり過ぎない後宮物語。
雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。
※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。
エリア51戦線~リカバリー~
島田つき
キャラ文芸
今時のギャル(?)佐藤と、奇妙な特撮オタク鈴木。彼らの日常に迫る異変。本当にあった都市伝説――被害にあう友達――その正体は。
漫画で投稿している「エリア51戦線」の小説版です。
自サイトのものを改稿し、漫画準拠の設定にしてあります。
漫画でまだ投稿していない部分のストーリーが出てくるので、ネタバレ注意です。
また、微妙に漫画版とは流れや台詞が違ったり、心理が掘り下げられていたりするので、これはこれで楽しめる内容となっているかと思います。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる