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第一部 風の魔物と天狗の子
第五話 諏訪の主 (後)
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五、「諏訪の主」 後篇
諏訪湖畔公園近郊の街は台風の季節でもないのに、がたがたと窓を鳴らす暴風に恐怖を感じていた。
「ママ、怖い……」
人間達は身を寄せ合い、防災用の避難袋を引っ張り出してくる始末。両親は怖がる子供を抱きしめ、家族で屋鳴りに怯えながら子供の背を摩る。
信心深い年寄りは「諏訪湖の龍神様がお怒りなんじゃろうか」と口に上らせる者もいた。
人には、人ならざる者の命懸けの戦いは決して目に映らない。
◇
『手負いの獅子が如く』
龍神は、身を低くしてふうふうと血を吐きながら風を操る最澄に吐き捨てた。全身の毛穴からまで鮮血を吹き出しながらも退こうとはしない最澄は、眼だけが爛々と輝きを放つ。風と言う牙と爪が折れない分、獣よりもタチが悪い。
「主様、もうおやめ下さいまし!! 本当に死んでしまいます!!」
『無駄じゃ、狐。もう正気ではないわ』
「そんな……!!」
双葉の制止を振り切って、とうとう龍神の真正面に飛びあがった最澄に、双葉から喉が破れそうな叫びが発せられた。
「主様!!」
夜空に咲く紅の星粒が正視できず、双葉は両手で顔を覆った。しかし、予想に反して訪れたのは静寂だった。おそるおそる震える両手をどけると、最澄は空虚な目をしたまま龍神の顔の前で滞空している。その額からは虹色の光が発せられている。
――あたたかい。
『風魔、一刻も早くこの地から去るが良い。其方は誰の目にも毒じゃ。哀れがすぎる』
額から陽だまりのような温もりが最澄を包む。その微睡みに身を預けた最澄は「落ちる」と解っていても、もう指の一本も動かせなかった。地に叩きつけられることを覚悟した最澄を救ったのは柔い風だった。
その風の柔らかな優しさに姉を思い出す。
そっと地に寝かせられた最澄は、双葉の声を認識し、まだぼんやりとする頭で龍神の言葉を聞いていた。
『間違えるでない。与えるのではなく、一時だけ貸してやるのだ。全てが終わったらまた此処に来よ。真実はなによりも残酷で奇なり。真実を知った後でもまだ己を保っていられたら、其方は必ず諏訪に戻ってくるであろう』
急に饒舌になった龍神は、最澄にそう言い残すと月の影に潜るように消えた。強大な神気の消失に諏訪湖の空気は一変する。なにかが足りないような、大きな空洞が湖の上にできたような、そんな感覚に襲われた。
「主様、お身体は……」
双葉がやっとの思いで口にした最澄の身を案じる言葉に、最澄はまだ熱を持っている額を押さえながらも上半身だけをゆっくりと起こした。
「……ああ、問題ない。額が熱いな。これが龍麟か……」
最澄の声はひどく掠れていた。龍神はどうやら鱗を最澄の額に埋め込んだらしい。最澄は己の手を見た。爪の間からも血が出ていたはずだが、今は綺麗に修復されている。
「まったくもう!! 肝が冷えましたわ!! ……本当に、生きておられてよかった……」
「ごめん、つい箍が外れてしまった。僕も修業が足りないな」
双葉の泣きそうな顔が弱虫だった姉を思い出させた。最澄を抱き止めた、あの風のように。
「不本意ながら、目的の龍麟も手に入った。……ああ、これはすごいな……この大地の裏側まで見通せるよ。風の力も段違いに跳ね上がっている」
「あれだけ心配をかけて、もう風をお使いになるのですか!! 少しは自重してくださいませ!!」
「わかった、わかった――けど、これだけは終わらせたい。滝丸の霊魂が鞍馬山に向かっている」
「まあ……!! 鞍馬山に入られては不味いですね」
「そういうこと。奴には聞きたいことが山ほどある。鞍馬の関係者よりも先に押さえる」
最澄の瞳にまた不穏な気配が感じ取れた。
滝丸は迎賓館襲撃事件の事実上の実行犯だ。最澄から見れば憎くて仕方のないことだろう。最澄が発する狂気の中に悦びがうかがえた。双葉はまた胸の痛みを感じたが、その感情に蓋をして紙人形の姿に戻った。
この主に仕える以上、いったいいくつの言葉を双葉は無かったことにするのかを、最澄は考えもしないだろう。
◇
滝丸は霊魂の姿でありながらも、逃げに逃げた。
――バケモノだ……!!
滝丸は最澄と面識がない。それにも拘わらず、最澄は的確に滝丸を追い詰める。鞍馬山の結界に爪先だけでも触れられれば、どんな扱いにせよ、保護は約束されるはずだ。しかし、先ほどから自らの遺体が上がった貴船川沿いに鞍馬山へと向かっているはずなのに、結界らしきものが見当たらないのだ。
「気が済んだかい? 僕は短気だから、追いかけっこの趣味はないんだ」
終わりのない逃亡劇に終止符を打ったのは、他でもない。滝丸がこの世で最も恐れる存在となり果てた最澄の姿だった。背後に取って返そうとすれば、退路は白い狐に威嚇された。
「ひっ!!」
「お前だけは逃がさないよ――さあ、迎賓館の人たちを殺めたのは誰の命令か、なぜ『刻渡りの時計』を盗んだのか、洗いざらい吐いてもらおう」
「お、脅しだけで俺がこれこれしかじかと話すと思うか?」
「思わないね。言ったろ? 僕は短気だって。君が消える前に聞きださないとね」
最澄の暗い目がひそめられたと同時に、滝丸は霊体であるのに手足の先から激烈な痛みに襲われた。
「な、なんだ――!?」
「僕は陰陽師でもある。師の安倍清明からは古今東西の呪殺を教えて下さった。まさか霊魂の殺し方や拷問までご教授頂いた時は、彼の人間性を疑ったけれど今は感謝しかないな」
川縁にうずくまって「痛い!! 助けてくれ!!」と泣き叫ぶ滝丸に歩み寄った最澄は、薄笑いを浮かべて滝丸の黒い羽根に手をかけた。
「な、なにをす――ぎゃあああっ!!」
べりべりと嫌な音を立てて、滝丸の羽根を一枚一枚もぎとった。涙と鼻水まみれになりながら薄れる身体の痛みと、背からの激痛に滝丸は失神してしまえたらどんなに楽だったかとのたうち回る。
「うるさいな。いいからっさっさと吐け。君を操っていた黒幕は誰だ。目的はなんだ。なぜ罪もない迎賓館の人々を殺した!!」
「や、約束したんだ……。『鞍馬の狐』が持つ時計を使えば、遮那王の過去を変えてくれると……」
「遮那王? 源義経公か。たしか幼少時に鞍馬山で武芸の修行をしたとか……」
「そうだ。俺と遮那王は幼友達だった……。なのに、あいつは兄貴に奥州まで追い詰められて自刃した。あいつこそ、この国を治めるに相応しい人物だった。だから、あの方が遮那王の未来を変えてくれると!! だから取引した……あの時計を奪ってくるから遮那王を蘇らせてくれるように……」
滝丸が熱弁すればするほど、最澄の心は凍てついていく。
「お前の都合や痛みなんか考慮してやらない。お前が迎賓館の人々にそうしたように。僕の最愛に一片の情もなかったように!! 安息なんかやらない。過去も未来もお前には無用だ――失せろ」
やめてくれと泣き叫んだ滝丸の祈りはとうとう最澄には届かなかった。宣言通り、滝丸は骨の欠片どころか、影すら遺らず龍麟の放つ光に分散されてしまった。
「……どこもかしこも馬鹿ばかりだ!! 過去を変えるだと!? 『時計』にはそんな力は無いのに……!!」
滝丸を殺せば、少しは胸もすいた心地になれるかと思ったが逆に怒りで血が沸騰しそうである。滝丸が居た場所を強く踏みつけた最澄に双葉がそっと語りかける。
「ですが……滝丸はまこと『時計』に過去を変える力があると信じきっておりました。背後の人物の暗示だけで、あれほど信じられるものでしょうか? ましてや義経公ほどの偉人の過去を変えるなど、神域の御業としか思えません」
双葉の言葉にひどく不安を感じた最澄は、鈍く熱を発している額の龍麟に触れた。これがあれば、おそらく――。
「双葉、黄泉に行く。黄泉大神様に永久牢に閉じ込められていたという人物について、尋ねに行くよ。確か脱走に手引きした奴が居るとも言っていたな。その正体をつきとめなければ」
「黄泉へは黄泉比良坂からしか入れません。では、松江まで飛ばれますか?」
「ああ、ここは鞍馬に近すぎる。天狗どもの奇襲にあう前に島根まで行こう」
最澄の身体は疲れを訴えているが、ひとまずは京都から離れることを優先した。黄泉――隠り世が最澄を受け入れてくれるかは後回しにして、最澄はまたふわりと風に乗って一路、西を目指した。
続...
諏訪湖畔公園近郊の街は台風の季節でもないのに、がたがたと窓を鳴らす暴風に恐怖を感じていた。
「ママ、怖い……」
人間達は身を寄せ合い、防災用の避難袋を引っ張り出してくる始末。両親は怖がる子供を抱きしめ、家族で屋鳴りに怯えながら子供の背を摩る。
信心深い年寄りは「諏訪湖の龍神様がお怒りなんじゃろうか」と口に上らせる者もいた。
人には、人ならざる者の命懸けの戦いは決して目に映らない。
◇
『手負いの獅子が如く』
龍神は、身を低くしてふうふうと血を吐きながら風を操る最澄に吐き捨てた。全身の毛穴からまで鮮血を吹き出しながらも退こうとはしない最澄は、眼だけが爛々と輝きを放つ。風と言う牙と爪が折れない分、獣よりもタチが悪い。
「主様、もうおやめ下さいまし!! 本当に死んでしまいます!!」
『無駄じゃ、狐。もう正気ではないわ』
「そんな……!!」
双葉の制止を振り切って、とうとう龍神の真正面に飛びあがった最澄に、双葉から喉が破れそうな叫びが発せられた。
「主様!!」
夜空に咲く紅の星粒が正視できず、双葉は両手で顔を覆った。しかし、予想に反して訪れたのは静寂だった。おそるおそる震える両手をどけると、最澄は空虚な目をしたまま龍神の顔の前で滞空している。その額からは虹色の光が発せられている。
――あたたかい。
『風魔、一刻も早くこの地から去るが良い。其方は誰の目にも毒じゃ。哀れがすぎる』
額から陽だまりのような温もりが最澄を包む。その微睡みに身を預けた最澄は「落ちる」と解っていても、もう指の一本も動かせなかった。地に叩きつけられることを覚悟した最澄を救ったのは柔い風だった。
その風の柔らかな優しさに姉を思い出す。
そっと地に寝かせられた最澄は、双葉の声を認識し、まだぼんやりとする頭で龍神の言葉を聞いていた。
『間違えるでない。与えるのではなく、一時だけ貸してやるのだ。全てが終わったらまた此処に来よ。真実はなによりも残酷で奇なり。真実を知った後でもまだ己を保っていられたら、其方は必ず諏訪に戻ってくるであろう』
急に饒舌になった龍神は、最澄にそう言い残すと月の影に潜るように消えた。強大な神気の消失に諏訪湖の空気は一変する。なにかが足りないような、大きな空洞が湖の上にできたような、そんな感覚に襲われた。
「主様、お身体は……」
双葉がやっとの思いで口にした最澄の身を案じる言葉に、最澄はまだ熱を持っている額を押さえながらも上半身だけをゆっくりと起こした。
「……ああ、問題ない。額が熱いな。これが龍麟か……」
最澄の声はひどく掠れていた。龍神はどうやら鱗を最澄の額に埋め込んだらしい。最澄は己の手を見た。爪の間からも血が出ていたはずだが、今は綺麗に修復されている。
「まったくもう!! 肝が冷えましたわ!! ……本当に、生きておられてよかった……」
「ごめん、つい箍が外れてしまった。僕も修業が足りないな」
双葉の泣きそうな顔が弱虫だった姉を思い出させた。最澄を抱き止めた、あの風のように。
「不本意ながら、目的の龍麟も手に入った。……ああ、これはすごいな……この大地の裏側まで見通せるよ。風の力も段違いに跳ね上がっている」
「あれだけ心配をかけて、もう風をお使いになるのですか!! 少しは自重してくださいませ!!」
「わかった、わかった――けど、これだけは終わらせたい。滝丸の霊魂が鞍馬山に向かっている」
「まあ……!! 鞍馬山に入られては不味いですね」
「そういうこと。奴には聞きたいことが山ほどある。鞍馬の関係者よりも先に押さえる」
最澄の瞳にまた不穏な気配が感じ取れた。
滝丸は迎賓館襲撃事件の事実上の実行犯だ。最澄から見れば憎くて仕方のないことだろう。最澄が発する狂気の中に悦びがうかがえた。双葉はまた胸の痛みを感じたが、その感情に蓋をして紙人形の姿に戻った。
この主に仕える以上、いったいいくつの言葉を双葉は無かったことにするのかを、最澄は考えもしないだろう。
◇
滝丸は霊魂の姿でありながらも、逃げに逃げた。
――バケモノだ……!!
滝丸は最澄と面識がない。それにも拘わらず、最澄は的確に滝丸を追い詰める。鞍馬山の結界に爪先だけでも触れられれば、どんな扱いにせよ、保護は約束されるはずだ。しかし、先ほどから自らの遺体が上がった貴船川沿いに鞍馬山へと向かっているはずなのに、結界らしきものが見当たらないのだ。
「気が済んだかい? 僕は短気だから、追いかけっこの趣味はないんだ」
終わりのない逃亡劇に終止符を打ったのは、他でもない。滝丸がこの世で最も恐れる存在となり果てた最澄の姿だった。背後に取って返そうとすれば、退路は白い狐に威嚇された。
「ひっ!!」
「お前だけは逃がさないよ――さあ、迎賓館の人たちを殺めたのは誰の命令か、なぜ『刻渡りの時計』を盗んだのか、洗いざらい吐いてもらおう」
「お、脅しだけで俺がこれこれしかじかと話すと思うか?」
「思わないね。言ったろ? 僕は短気だって。君が消える前に聞きださないとね」
最澄の暗い目がひそめられたと同時に、滝丸は霊体であるのに手足の先から激烈な痛みに襲われた。
「な、なんだ――!?」
「僕は陰陽師でもある。師の安倍清明からは古今東西の呪殺を教えて下さった。まさか霊魂の殺し方や拷問までご教授頂いた時は、彼の人間性を疑ったけれど今は感謝しかないな」
川縁にうずくまって「痛い!! 助けてくれ!!」と泣き叫ぶ滝丸に歩み寄った最澄は、薄笑いを浮かべて滝丸の黒い羽根に手をかけた。
「な、なにをす――ぎゃあああっ!!」
べりべりと嫌な音を立てて、滝丸の羽根を一枚一枚もぎとった。涙と鼻水まみれになりながら薄れる身体の痛みと、背からの激痛に滝丸は失神してしまえたらどんなに楽だったかとのたうち回る。
「うるさいな。いいからっさっさと吐け。君を操っていた黒幕は誰だ。目的はなんだ。なぜ罪もない迎賓館の人々を殺した!!」
「や、約束したんだ……。『鞍馬の狐』が持つ時計を使えば、遮那王の過去を変えてくれると……」
「遮那王? 源義経公か。たしか幼少時に鞍馬山で武芸の修行をしたとか……」
「そうだ。俺と遮那王は幼友達だった……。なのに、あいつは兄貴に奥州まで追い詰められて自刃した。あいつこそ、この国を治めるに相応しい人物だった。だから、あの方が遮那王の未来を変えてくれると!! だから取引した……あの時計を奪ってくるから遮那王を蘇らせてくれるように……」
滝丸が熱弁すればするほど、最澄の心は凍てついていく。
「お前の都合や痛みなんか考慮してやらない。お前が迎賓館の人々にそうしたように。僕の最愛に一片の情もなかったように!! 安息なんかやらない。過去も未来もお前には無用だ――失せろ」
やめてくれと泣き叫んだ滝丸の祈りはとうとう最澄には届かなかった。宣言通り、滝丸は骨の欠片どころか、影すら遺らず龍麟の放つ光に分散されてしまった。
「……どこもかしこも馬鹿ばかりだ!! 過去を変えるだと!? 『時計』にはそんな力は無いのに……!!」
滝丸を殺せば、少しは胸もすいた心地になれるかと思ったが逆に怒りで血が沸騰しそうである。滝丸が居た場所を強く踏みつけた最澄に双葉がそっと語りかける。
「ですが……滝丸はまこと『時計』に過去を変える力があると信じきっておりました。背後の人物の暗示だけで、あれほど信じられるものでしょうか? ましてや義経公ほどの偉人の過去を変えるなど、神域の御業としか思えません」
双葉の言葉にひどく不安を感じた最澄は、鈍く熱を発している額の龍麟に触れた。これがあれば、おそらく――。
「双葉、黄泉に行く。黄泉大神様に永久牢に閉じ込められていたという人物について、尋ねに行くよ。確か脱走に手引きした奴が居るとも言っていたな。その正体をつきとめなければ」
「黄泉へは黄泉比良坂からしか入れません。では、松江まで飛ばれますか?」
「ああ、ここは鞍馬に近すぎる。天狗どもの奇襲にあう前に島根まで行こう」
最澄の身体は疲れを訴えているが、ひとまずは京都から離れることを優先した。黄泉――隠り世が最澄を受け入れてくれるかは後回しにして、最澄はまたふわりと風に乗って一路、西を目指した。
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