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序
Ⅲ, 旅立ち
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Ⅲ、「旅立ち」
明くる日の午後、アパルトマンのリビングには頬を張る乾いた音が響いた。父ヴィンセントに叩かれたのは、後にも先にもこの一度だけだ。じんじんと熱を持つ頬――自身の身に起こった出来事なのに、ユーリはそれを鏡の中にある世界の出来事のように感じていた。
「ヴィンセント!! なにも殴ることないじゃない」
「どけ、リリィ。日本にいる雪まで巻き込んで、そんなに傷つきてえのか!?」
泣きもしないユーリを抱く母は柔らかい。心臓の鼓動が聞こえる。感情表現の薄い父が怒る姿は初めて見る。
ああ、この二人はちゃんと『生きている』のだ。
――じゃあ、私は?
「……自分が何者なのか知りたいと思うのは、そんなにいけないこと?」
ユーリが母の腕の中からぽつりと呟く。
「ただ隠したかっただけじゃないの? 産まれてきた子供がバケモノだったなんて事実は後ろめたいよね。違うって言うなら私が納得できる説明をしてよ!!」
「ユーリ!!」
「教えてよ!! パパは神様なんでしょ!? ママとジャンヌは世界中の情報を知っているんでしょ!? 学校にも行けない。好きな人にも正体を打ち明けられない。私がこれからどうやって生きていけばいいのか、具体的に教えてよ!!」
「――っ、いい加減にしろ!! クソガキ!!」
母が押し付けるのも無視して目を血走らせたユーリに、父がまた腕を振り上げた時、間延びした声が聞こえてきた。
「あーっと、気持ちは解るけど暴力はダメ、絶対」
「雪……?」
「雪くん……どうして、ここに……?」
額に汗の珠を浮かせた爽やかな青年はにっこりと笑って、振り上げられた父の手を掴んでいた。
「こうなるんじゃないかと思って、日本からすっ飛んできたんだよ。義兄さんに無理を言って飛行機一台借りてね。――ヴィンセントさん、ユーリをぶつなら同罪の僕もぶってくれなきゃ。最重要機密と解っていながら、まだ八歳の子供に開示するべきではない情報を見せたんだ。罰は受けるよ」
笑顔から一転して、雪は真摯な表情で雪よりも僅かに長身の父に向き直る。
「……ツラ、貸せ」
「いくらでもどーぞ」
「パパ、やめて!! 雪くんは悪くない!! 私がお願いして――」
「黙ってろ」
有無を言わさぬ低い声だった。同時にゴツッと重い音が響いて、雪がたたらを踏んだ。雪が顔を上げると口の端から血が垂れ、左頬が腫れあがっている。
「雪くん!!」
「ただの人間が軽率に『こっち側』に入ってくるんじゃねえ。昔から勘が良かったお前のことだ。俺が人間じゃないのは気づいていたんだろ?」
「まあ、薄々ね。だってヴィンセントさんだけ全然歳を取らないんだもん。でも、まさか死神とは思ってなかったよ。ああ、リリィさん、安心して。姉さん達は知らない」
ジャンヌが急いで持ってきたタオルにくるまれた保冷材を「ありがとうございます」と受け取りながら、雪はまたヴィンセントに向き直った。
「僕にユーリを預けてくれませんか? このままじゃあ、家庭が崩壊しちゃうでしょ」
「日本に連れていくってか。お前、刑事だろ? いくら姪っ子と甥っ子をよく押し付けられたとは言え、これからは出世にも響いてくるだろう」
ヴィンセントの指摘に、保冷材を頬に当てながら雪はあっけらかんと「警察は辞めてきたからご心配なく」と言い放った。
「はあ!?」
「実は、前々から義兄さんに頼まれていたことがあってね。亡くなったお祖父さんの剣道場に、まだお弟子さんがいるから師範を探しているらしくてさ。とは言っても道場には週三回で、あとは在宅で海外の子会社との中継役だったり、サーバー管理だったり、やることは山ほどあるんだって。鬼畜だよねー。まあ、そういう訳でユーリが道場を手伝ってくれたらありがたいし、嘩蓮と朔夜もしょっちゅう来るから相手してくれたら嬉しいんだよね」
たった今、頬を殴られたとは思えないほど雪は陽気に話す。すっかり毒気は抜かれてしまったが、妙な気まずさだけが残った。
「雪、警察に憧れの人が居たんじゃないの? 月は怒らない?」
「うん、警察は本当に勉強になったよ。楽しかったしね。アコガレのヒトも僕が知らないアンダーグラウンドに連れ出してくれたり、酒にも強くなったりね。でも、あの機密文章を読んじゃった時点で僕には監視が付くんでしょ? それならユーリのガス抜きのついでに僕も一緒に行動した方が効率的だ」
「義兄さんが言い出しっぺだし、姉さんはどうとでも説得できるから心配しないで」とニコニコ笑って、雪はユーリに柔らかな視線を向ける。
「自分があの報告書を見せたせいだなんて思わないでね。僕はいつだって自分の意思で動いているから。ユーリ、日本に来ない?」
ユーリはとうとう大粒の涙を流ししゃくりあげながら願いを口にする。
「いきたい……もうパパもママもジャンヌも、もう誰も傷つけたくない……!!」
「うん。よく言えました。君は優しすぎるんだよ」
ブラウスの袖で涙を拭おうとした手を制して、母が桃色のタオルハンカチで泣きじゃくるユーリの涙を拭いてくれる。その眼はとても複雑そうで、精いっぱいの笑顔も今にも泣きだしそうだった。
「ヴィンセント……」
「……わかってる――ユーリが望むなら仕方がない。俺も殴って悪かった。お前はノラから俺をかばってくれたのにな……最低だ」
お互いにクールダウンが必要なのは明白だった。ユーリにも、両親にも。雪は昔からこういう調停役が上手かった。この時、雪が手を差し伸べてくれなかったら、両親との軋轢は修復不可能になっていただろう。
「今夜の便で発つの?」
「うん。ユーリの荷物を纏め次第ね。しばらくは難しいかもしれないけど、いつでも会いに来てよ」
はらはらとしていたジャンヌが安堵の吐息と共に出た質問に、雪はさらりと返答する。彼女も心中複雑だったはずだ。ジャンヌには離れて暮らす息子が居るが、実の子同然に成長を見てきたユーリと、長年家族同然に接してきたヴィンセントとリリィが、やっとの思いで築き上げた家庭が壊れていく様など見たくはない。
「ユーリ、おいで。荷造りしましょ」
「うん」
ジャンヌに目で合図されて、母がユーリの手を引いてジャンヌの後を追った。
母の右手には生まれつき白い百合のタトゥーがある。これは「神殺し」の証だと教わった。忌まわしい記憶も、温かい気持ちもすべてが詰まっているのだと、母はユーリが寝つくまで何度も繰り返し話してくれた。
「天使の幸せを願う」と天板に書かれたオルゴールと、その横に並ぶ二つの写真。一人は黒髪の青年で、もう一つはノラのように真っ白な白髪と髭の老人だ。どちらも美しい押し花のフォトフレームに入れられて、父と母はその前で語り合うのだ。
きっとユーリが出発したら晩酌をしながら写真の故人に語るに違いない。そんなことを考えながらユーリは日本への荷造りをする。
◇
「お前が来てくれてよかった」
ヴィンセントはアイボリーのソファに深く座り込んで天井を仰ぐ。大きな手で眼を覆い隠して。
「絶妙デショ、僕のタイミング」
斜め右に座って、まだ保冷材を当てている雪はにたりと笑った。
「ああ……勝てる気がしねえ」
「あっはは!! 死神様にそう言って貰えるなんて光栄だなあ」
「……お前なら、ユーリに寄り添ってやれるのかもな。人間か否かとは別問題で、身内のでかすぎる才能が壁で、自身のアイデンティティを探しているところがな……」
雪は疲れが声に滲み出ているヴィンセントに「どうだろうね」と曖昧な返答をした。
「僕は姉さんと同じ土俵に上がる事を早々に放棄した。ユーリは、これから自身の『核』になる何かを見つけて、今まさに囚われて息もできない『BLUE ROSE』の柵から脱出できればいいんだけど、ね。おそらく彼女の『何者でもない一生』を真に理解して、分かち合えるのは、あのNORAって子だけだよ」
相変わらず食えないやつだ、とヴィンセントは天を仰いだまま溜息を零した。そんなヴィンセントを無視して「でも」と雪は続ける。
「現実は小説より奇なりって言うから、もしかしたら僕らが考えも及ばない生き様がユーリにはあるかもよ」
「『BLUE ROSE』ゆえに、か?」
「そういうこと」
「はあ……頭いてえ」
「僕はほっぺたが痛い」
「口の減らねえ奴……!! 日本でユーリに手出したら薔薇に変えるからな」
「わかってるよ。何年経っても表現が下手なんだもんなあ……。ユーリのセカンドネームがロゼッタなのって、貴方が『薔薇の』死神だからでしょ? こんなに溺愛してんのにあまり伝わってないよね」
「うるせえ」
気づかないユーリも鈍感だが、この父にしてこの子ありだと雪は呆れ返った。双方、言葉が圧倒的に足りていないのだ。リリィとジャンヌが居て、なぜここまで溝が深まってしまったのかが雪には不思議でならない。
(僕が考えている以上に世間の『BLUE ROSE』への風当たりは強いって訳か……)
神界から縁遠い雪からすれば、ユーリが『BLUE ROSE』だと聞かされても何も特別な事を感じはしない。産まれた時から見守ってきた子供の一人だ。おそらくこれが他人の視点なのだ。
「ヴィンセントさん、神様の世界ってどんな感じ?」
「唐突だな。……俺個人の意見だが、高慢ちきな連中の集まりってところか。人間と結婚したってだけで、報告に戻る度に陰口が聞こえるように待ち構えている。俺は力で黙らせている節が強いが、ユーリなんか逆立ちしても入れない差別の世界ってところか。言葉通り、神界には一歩も立ち入れさせないだろうよ。連れていく気もないがな」
特に昨日の『異界侵攻』の斥候役で来たNORAのせいで『BLUE ROSE』への恨みはますます強まってしまった。ならば、やはり中途半端に神界に通じているこの家よりも、雪に任せて人間社会に埋没させた方がユーリの身の安全は保障されるはずだ。
「日本にも神様はいるんだ。ましてや僕は生粋の人間。神様に攻めてこられたらお手上げだけど、とりあえず今はユーリと貴方達の仲をクールダウンさせることだけ頭に入れておいてね」
雪がそう言い終えると荷造りを終えたユーリ達が戻ってきた。腰まであるハニーブロンドをハーフアップにして俯くユーリの手を引くリリィは聖母のように美しい。憂いを帯びた表情がこうも絵になる人物を雪は他に知らない。
ユーリも長じればさぞ美しくなるだろう。『BLUE ROSE』だと言われても引く手数多になる未来が見えるようだ、と雪は上目遣いで見上げてくる青い眼に笑みを返して猫毛でふわふわとした栗色の髪を撫でまわした。
◇
憔悴しきっていたのだろう。ユーリはシャルル・ド=ゴール空港まで見送りにきた保護者達に小さく「行ってきます」と呟き、飛行機に乗り込むと同時に食事も摂らず眠ってしまった。
「……なにが違うんだろうね、君と『世界』は」
雪はくうくうと深く眠るユーリの前髪をそっとかき分けた。
小さな窓から見える景色は雲の上。今のユーリには、雲の上で瞬く銀粒のような星々さえ目に入らない。
◇
東京の羽田空港に到着したのは明け方だった。日本特有のむわっとした湿気を久々に感じる。
まだ目を擦りつつ雪の手をしっかりと繋いでいるユーリに微笑みかけながら、雪は駐車場に停めていた白い軽自動車に乗った。
「ちょっと遠いから、まだ眠たかったら寝てくれていいよ」
「ん、ありがとう。そう言えば、もう引っ越したの?」
「ううん、急すぎたから引っ越しは来週。今日はいつも通り、僕のマンションに帰るだけ」
「東京にあるの?」
「いや、埼玉。そこそこ田舎なんだけど、数年前に大改装したから綺麗だよ。平屋の家と繋がってるしね。ところでお腹すいたから、朝ごはんにしようか。何が食べたい?」
雪は鼻歌でも歌いだしそうな程の陽気で、つられてユーリもくすりと笑顔が浮かぶ。
「じゃあ……大松屋の月見とろろ定食」
「ユーリ、渋いね。姉さんに聞かせてやりたいよ」
「月さん? 嘩蓮や朔夜じゃなくて?」
「ちび達よりもうるさいよ、あの人。うちにすぐ来るから、よく解ると思う……」
ユーリが知る限り、月は明るく元気で自由なイメージだ。もの静かな母とは正反対で、覆面歌手「DIVA」として世界的にも有名な歌手なのに自由気ままに歌ったり、ピアノを弾いたりする。
雪のげんなりした様子を、ユーリが知るのは数時間後のこと――。
◇
雪のマンションは桜田門駅から西に徒歩五分のところにあるタワーマンションだ。最上階の一室が事故物件だったらしく、破格の家賃でそこに住んでいた。2LDKのファミリータイプに男一人で住んでいるのは、ひとえにやかましい姉家族の奇襲を見越してのことだと言う。
キーケースも取りださずに「危ないから僕の後ろに居てね」とユーリに忠告すると、雪はそろりと扉を開ける。
「おっかえりー!! ユーリをさらいにフランスまで行ってきたって!?」
「ただいま、姉さん。ものすごく語弊があるからやめて」
駐車場に姉のワーゲン・ビートルが停まっていたので、来訪は知っていた。だが帰ってくるなり、姉のハイテンションな出迎えと、前振りもなく嘩蓮と朔夜がきゃらきゃらと笑いながら雪の脚に猿さながらに飛びつくので、疲れがどっと押し寄せてくる。
「おちび達、ご飯が遅くなるから離れて。ユーリ、怖がらせてごめんね。入っておいで」
ドアから少しだけ顔を出していたユーリを見て、月が「いらっしゃーい!! 久しぶりね」と太陽のように笑う。嘩蓮と朔夜はユーリにも飛びつこうとするので、雪が二人の首根っこを掴んで捕獲する。
「月さん、お世話になります」
ぺこりと身体を折ったユーリに、月は「ゆっくりしなよね」と白い歯を見せてまた笑った。よく笑う姉弟だ。それにフランスとイギリスの血が混じっている二人は、月は碧と緑のオッドアイを除けば、顔もそっくりである。性格は少々違うようだが。
「雪、夕飯はアクアパッツァとサーモンマリネとモッツアレラチーズのサラダが食べたい。柚子胡椒ドレッシングのやつ」
「はいはい、材料は冷蔵庫の中?」
「当然!! あ、そう言えばユーリ――」
「わ、は、はい!!」
突如矛先がこちらに向いてユーリは焦る。
「日本に友達が居る? 黒いキャップを被ったもやしみたいな男の子が『ユリア=ロゼッタが新しく住むのはここですか?』って訪ねてきてさ、怪しかったから『ここは私の弟が住んでいるけど』って誤魔化しておいたよ。ユーリと同じ青い眼の男の子だったんだけど……友達だったらごめんね」
――ノラだ。
(どうして……ノラがここに……?)
ユーリは言葉と血色を失って立ち尽くし、雪は平静を装ってユーリの頭に大きな手を置いた。
「姉さん、後で義兄さんも来るんだよね。引っ越しの予定、数日でもいい。早められない?」
「道場の掃除さえとっぱらえば、三日は早くできると思うけど。なに、やっぱり追い払っておいてよかった?」
「最重要警戒人物。でも危険だから手出しは絶対禁物だって、桐嶋のSPの人達に伝えておいて」
雪はつらつらとそう述べると、唇を噛みしめるユーリに「大丈夫だよ」と、やんわりとユーリの右手を取って三和土から玄関に上がり、反対の手に子供用のキャリーケースを持ってリビングへと向かった。
二時間後、ふらりとやってきた月の夫である桐嶋明光が、ユーリの来日祝いと言ってアップルパイを持ってきてくれた。
「雪くん、引っ越しの件だけど明後日に調整してもらった」
「ありがとう、助かるよ」
「その代わり、道場の掃除は自分達でしてくれって管理人さんが言ってた」
「はーい」
明後日にはここを離れられる――それを聞いても、ユーリはきつね色のアップルパイの味が感じられなかった。
どこに逃げても『BLUE ROSE』には居場所が無いのではという小さな恐怖さえ芽生える。
to be continued...
明くる日の午後、アパルトマンのリビングには頬を張る乾いた音が響いた。父ヴィンセントに叩かれたのは、後にも先にもこの一度だけだ。じんじんと熱を持つ頬――自身の身に起こった出来事なのに、ユーリはそれを鏡の中にある世界の出来事のように感じていた。
「ヴィンセント!! なにも殴ることないじゃない」
「どけ、リリィ。日本にいる雪まで巻き込んで、そんなに傷つきてえのか!?」
泣きもしないユーリを抱く母は柔らかい。心臓の鼓動が聞こえる。感情表現の薄い父が怒る姿は初めて見る。
ああ、この二人はちゃんと『生きている』のだ。
――じゃあ、私は?
「……自分が何者なのか知りたいと思うのは、そんなにいけないこと?」
ユーリが母の腕の中からぽつりと呟く。
「ただ隠したかっただけじゃないの? 産まれてきた子供がバケモノだったなんて事実は後ろめたいよね。違うって言うなら私が納得できる説明をしてよ!!」
「ユーリ!!」
「教えてよ!! パパは神様なんでしょ!? ママとジャンヌは世界中の情報を知っているんでしょ!? 学校にも行けない。好きな人にも正体を打ち明けられない。私がこれからどうやって生きていけばいいのか、具体的に教えてよ!!」
「――っ、いい加減にしろ!! クソガキ!!」
母が押し付けるのも無視して目を血走らせたユーリに、父がまた腕を振り上げた時、間延びした声が聞こえてきた。
「あーっと、気持ちは解るけど暴力はダメ、絶対」
「雪……?」
「雪くん……どうして、ここに……?」
額に汗の珠を浮かせた爽やかな青年はにっこりと笑って、振り上げられた父の手を掴んでいた。
「こうなるんじゃないかと思って、日本からすっ飛んできたんだよ。義兄さんに無理を言って飛行機一台借りてね。――ヴィンセントさん、ユーリをぶつなら同罪の僕もぶってくれなきゃ。最重要機密と解っていながら、まだ八歳の子供に開示するべきではない情報を見せたんだ。罰は受けるよ」
笑顔から一転して、雪は真摯な表情で雪よりも僅かに長身の父に向き直る。
「……ツラ、貸せ」
「いくらでもどーぞ」
「パパ、やめて!! 雪くんは悪くない!! 私がお願いして――」
「黙ってろ」
有無を言わさぬ低い声だった。同時にゴツッと重い音が響いて、雪がたたらを踏んだ。雪が顔を上げると口の端から血が垂れ、左頬が腫れあがっている。
「雪くん!!」
「ただの人間が軽率に『こっち側』に入ってくるんじゃねえ。昔から勘が良かったお前のことだ。俺が人間じゃないのは気づいていたんだろ?」
「まあ、薄々ね。だってヴィンセントさんだけ全然歳を取らないんだもん。でも、まさか死神とは思ってなかったよ。ああ、リリィさん、安心して。姉さん達は知らない」
ジャンヌが急いで持ってきたタオルにくるまれた保冷材を「ありがとうございます」と受け取りながら、雪はまたヴィンセントに向き直った。
「僕にユーリを預けてくれませんか? このままじゃあ、家庭が崩壊しちゃうでしょ」
「日本に連れていくってか。お前、刑事だろ? いくら姪っ子と甥っ子をよく押し付けられたとは言え、これからは出世にも響いてくるだろう」
ヴィンセントの指摘に、保冷材を頬に当てながら雪はあっけらかんと「警察は辞めてきたからご心配なく」と言い放った。
「はあ!?」
「実は、前々から義兄さんに頼まれていたことがあってね。亡くなったお祖父さんの剣道場に、まだお弟子さんがいるから師範を探しているらしくてさ。とは言っても道場には週三回で、あとは在宅で海外の子会社との中継役だったり、サーバー管理だったり、やることは山ほどあるんだって。鬼畜だよねー。まあ、そういう訳でユーリが道場を手伝ってくれたらありがたいし、嘩蓮と朔夜もしょっちゅう来るから相手してくれたら嬉しいんだよね」
たった今、頬を殴られたとは思えないほど雪は陽気に話す。すっかり毒気は抜かれてしまったが、妙な気まずさだけが残った。
「雪、警察に憧れの人が居たんじゃないの? 月は怒らない?」
「うん、警察は本当に勉強になったよ。楽しかったしね。アコガレのヒトも僕が知らないアンダーグラウンドに連れ出してくれたり、酒にも強くなったりね。でも、あの機密文章を読んじゃった時点で僕には監視が付くんでしょ? それならユーリのガス抜きのついでに僕も一緒に行動した方が効率的だ」
「義兄さんが言い出しっぺだし、姉さんはどうとでも説得できるから心配しないで」とニコニコ笑って、雪はユーリに柔らかな視線を向ける。
「自分があの報告書を見せたせいだなんて思わないでね。僕はいつだって自分の意思で動いているから。ユーリ、日本に来ない?」
ユーリはとうとう大粒の涙を流ししゃくりあげながら願いを口にする。
「いきたい……もうパパもママもジャンヌも、もう誰も傷つけたくない……!!」
「うん。よく言えました。君は優しすぎるんだよ」
ブラウスの袖で涙を拭おうとした手を制して、母が桃色のタオルハンカチで泣きじゃくるユーリの涙を拭いてくれる。その眼はとても複雑そうで、精いっぱいの笑顔も今にも泣きだしそうだった。
「ヴィンセント……」
「……わかってる――ユーリが望むなら仕方がない。俺も殴って悪かった。お前はノラから俺をかばってくれたのにな……最低だ」
お互いにクールダウンが必要なのは明白だった。ユーリにも、両親にも。雪は昔からこういう調停役が上手かった。この時、雪が手を差し伸べてくれなかったら、両親との軋轢は修復不可能になっていただろう。
「今夜の便で発つの?」
「うん。ユーリの荷物を纏め次第ね。しばらくは難しいかもしれないけど、いつでも会いに来てよ」
はらはらとしていたジャンヌが安堵の吐息と共に出た質問に、雪はさらりと返答する。彼女も心中複雑だったはずだ。ジャンヌには離れて暮らす息子が居るが、実の子同然に成長を見てきたユーリと、長年家族同然に接してきたヴィンセントとリリィが、やっとの思いで築き上げた家庭が壊れていく様など見たくはない。
「ユーリ、おいで。荷造りしましょ」
「うん」
ジャンヌに目で合図されて、母がユーリの手を引いてジャンヌの後を追った。
母の右手には生まれつき白い百合のタトゥーがある。これは「神殺し」の証だと教わった。忌まわしい記憶も、温かい気持ちもすべてが詰まっているのだと、母はユーリが寝つくまで何度も繰り返し話してくれた。
「天使の幸せを願う」と天板に書かれたオルゴールと、その横に並ぶ二つの写真。一人は黒髪の青年で、もう一つはノラのように真っ白な白髪と髭の老人だ。どちらも美しい押し花のフォトフレームに入れられて、父と母はその前で語り合うのだ。
きっとユーリが出発したら晩酌をしながら写真の故人に語るに違いない。そんなことを考えながらユーリは日本への荷造りをする。
◇
「お前が来てくれてよかった」
ヴィンセントはアイボリーのソファに深く座り込んで天井を仰ぐ。大きな手で眼を覆い隠して。
「絶妙デショ、僕のタイミング」
斜め右に座って、まだ保冷材を当てている雪はにたりと笑った。
「ああ……勝てる気がしねえ」
「あっはは!! 死神様にそう言って貰えるなんて光栄だなあ」
「……お前なら、ユーリに寄り添ってやれるのかもな。人間か否かとは別問題で、身内のでかすぎる才能が壁で、自身のアイデンティティを探しているところがな……」
雪は疲れが声に滲み出ているヴィンセントに「どうだろうね」と曖昧な返答をした。
「僕は姉さんと同じ土俵に上がる事を早々に放棄した。ユーリは、これから自身の『核』になる何かを見つけて、今まさに囚われて息もできない『BLUE ROSE』の柵から脱出できればいいんだけど、ね。おそらく彼女の『何者でもない一生』を真に理解して、分かち合えるのは、あのNORAって子だけだよ」
相変わらず食えないやつだ、とヴィンセントは天を仰いだまま溜息を零した。そんなヴィンセントを無視して「でも」と雪は続ける。
「現実は小説より奇なりって言うから、もしかしたら僕らが考えも及ばない生き様がユーリにはあるかもよ」
「『BLUE ROSE』ゆえに、か?」
「そういうこと」
「はあ……頭いてえ」
「僕はほっぺたが痛い」
「口の減らねえ奴……!! 日本でユーリに手出したら薔薇に変えるからな」
「わかってるよ。何年経っても表現が下手なんだもんなあ……。ユーリのセカンドネームがロゼッタなのって、貴方が『薔薇の』死神だからでしょ? こんなに溺愛してんのにあまり伝わってないよね」
「うるせえ」
気づかないユーリも鈍感だが、この父にしてこの子ありだと雪は呆れ返った。双方、言葉が圧倒的に足りていないのだ。リリィとジャンヌが居て、なぜここまで溝が深まってしまったのかが雪には不思議でならない。
(僕が考えている以上に世間の『BLUE ROSE』への風当たりは強いって訳か……)
神界から縁遠い雪からすれば、ユーリが『BLUE ROSE』だと聞かされても何も特別な事を感じはしない。産まれた時から見守ってきた子供の一人だ。おそらくこれが他人の視点なのだ。
「ヴィンセントさん、神様の世界ってどんな感じ?」
「唐突だな。……俺個人の意見だが、高慢ちきな連中の集まりってところか。人間と結婚したってだけで、報告に戻る度に陰口が聞こえるように待ち構えている。俺は力で黙らせている節が強いが、ユーリなんか逆立ちしても入れない差別の世界ってところか。言葉通り、神界には一歩も立ち入れさせないだろうよ。連れていく気もないがな」
特に昨日の『異界侵攻』の斥候役で来たNORAのせいで『BLUE ROSE』への恨みはますます強まってしまった。ならば、やはり中途半端に神界に通じているこの家よりも、雪に任せて人間社会に埋没させた方がユーリの身の安全は保障されるはずだ。
「日本にも神様はいるんだ。ましてや僕は生粋の人間。神様に攻めてこられたらお手上げだけど、とりあえず今はユーリと貴方達の仲をクールダウンさせることだけ頭に入れておいてね」
雪がそう言い終えると荷造りを終えたユーリ達が戻ってきた。腰まであるハニーブロンドをハーフアップにして俯くユーリの手を引くリリィは聖母のように美しい。憂いを帯びた表情がこうも絵になる人物を雪は他に知らない。
ユーリも長じればさぞ美しくなるだろう。『BLUE ROSE』だと言われても引く手数多になる未来が見えるようだ、と雪は上目遣いで見上げてくる青い眼に笑みを返して猫毛でふわふわとした栗色の髪を撫でまわした。
◇
憔悴しきっていたのだろう。ユーリはシャルル・ド=ゴール空港まで見送りにきた保護者達に小さく「行ってきます」と呟き、飛行機に乗り込むと同時に食事も摂らず眠ってしまった。
「……なにが違うんだろうね、君と『世界』は」
雪はくうくうと深く眠るユーリの前髪をそっとかき分けた。
小さな窓から見える景色は雲の上。今のユーリには、雲の上で瞬く銀粒のような星々さえ目に入らない。
◇
東京の羽田空港に到着したのは明け方だった。日本特有のむわっとした湿気を久々に感じる。
まだ目を擦りつつ雪の手をしっかりと繋いでいるユーリに微笑みかけながら、雪は駐車場に停めていた白い軽自動車に乗った。
「ちょっと遠いから、まだ眠たかったら寝てくれていいよ」
「ん、ありがとう。そう言えば、もう引っ越したの?」
「ううん、急すぎたから引っ越しは来週。今日はいつも通り、僕のマンションに帰るだけ」
「東京にあるの?」
「いや、埼玉。そこそこ田舎なんだけど、数年前に大改装したから綺麗だよ。平屋の家と繋がってるしね。ところでお腹すいたから、朝ごはんにしようか。何が食べたい?」
雪は鼻歌でも歌いだしそうな程の陽気で、つられてユーリもくすりと笑顔が浮かぶ。
「じゃあ……大松屋の月見とろろ定食」
「ユーリ、渋いね。姉さんに聞かせてやりたいよ」
「月さん? 嘩蓮や朔夜じゃなくて?」
「ちび達よりもうるさいよ、あの人。うちにすぐ来るから、よく解ると思う……」
ユーリが知る限り、月は明るく元気で自由なイメージだ。もの静かな母とは正反対で、覆面歌手「DIVA」として世界的にも有名な歌手なのに自由気ままに歌ったり、ピアノを弾いたりする。
雪のげんなりした様子を、ユーリが知るのは数時間後のこと――。
◇
雪のマンションは桜田門駅から西に徒歩五分のところにあるタワーマンションだ。最上階の一室が事故物件だったらしく、破格の家賃でそこに住んでいた。2LDKのファミリータイプに男一人で住んでいるのは、ひとえにやかましい姉家族の奇襲を見越してのことだと言う。
キーケースも取りださずに「危ないから僕の後ろに居てね」とユーリに忠告すると、雪はそろりと扉を開ける。
「おっかえりー!! ユーリをさらいにフランスまで行ってきたって!?」
「ただいま、姉さん。ものすごく語弊があるからやめて」
駐車場に姉のワーゲン・ビートルが停まっていたので、来訪は知っていた。だが帰ってくるなり、姉のハイテンションな出迎えと、前振りもなく嘩蓮と朔夜がきゃらきゃらと笑いながら雪の脚に猿さながらに飛びつくので、疲れがどっと押し寄せてくる。
「おちび達、ご飯が遅くなるから離れて。ユーリ、怖がらせてごめんね。入っておいで」
ドアから少しだけ顔を出していたユーリを見て、月が「いらっしゃーい!! 久しぶりね」と太陽のように笑う。嘩蓮と朔夜はユーリにも飛びつこうとするので、雪が二人の首根っこを掴んで捕獲する。
「月さん、お世話になります」
ぺこりと身体を折ったユーリに、月は「ゆっくりしなよね」と白い歯を見せてまた笑った。よく笑う姉弟だ。それにフランスとイギリスの血が混じっている二人は、月は碧と緑のオッドアイを除けば、顔もそっくりである。性格は少々違うようだが。
「雪、夕飯はアクアパッツァとサーモンマリネとモッツアレラチーズのサラダが食べたい。柚子胡椒ドレッシングのやつ」
「はいはい、材料は冷蔵庫の中?」
「当然!! あ、そう言えばユーリ――」
「わ、は、はい!!」
突如矛先がこちらに向いてユーリは焦る。
「日本に友達が居る? 黒いキャップを被ったもやしみたいな男の子が『ユリア=ロゼッタが新しく住むのはここですか?』って訪ねてきてさ、怪しかったから『ここは私の弟が住んでいるけど』って誤魔化しておいたよ。ユーリと同じ青い眼の男の子だったんだけど……友達だったらごめんね」
――ノラだ。
(どうして……ノラがここに……?)
ユーリは言葉と血色を失って立ち尽くし、雪は平静を装ってユーリの頭に大きな手を置いた。
「姉さん、後で義兄さんも来るんだよね。引っ越しの予定、数日でもいい。早められない?」
「道場の掃除さえとっぱらえば、三日は早くできると思うけど。なに、やっぱり追い払っておいてよかった?」
「最重要警戒人物。でも危険だから手出しは絶対禁物だって、桐嶋のSPの人達に伝えておいて」
雪はつらつらとそう述べると、唇を噛みしめるユーリに「大丈夫だよ」と、やんわりとユーリの右手を取って三和土から玄関に上がり、反対の手に子供用のキャリーケースを持ってリビングへと向かった。
二時間後、ふらりとやってきた月の夫である桐嶋明光が、ユーリの来日祝いと言ってアップルパイを持ってきてくれた。
「雪くん、引っ越しの件だけど明後日に調整してもらった」
「ありがとう、助かるよ」
「その代わり、道場の掃除は自分達でしてくれって管理人さんが言ってた」
「はーい」
明後日にはここを離れられる――それを聞いても、ユーリはきつね色のアップルパイの味が感じられなかった。
どこに逃げても『BLUE ROSE』には居場所が無いのではという小さな恐怖さえ芽生える。
to be continued...
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