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終夜-1
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9、
グアム――本宮島に賀谷ノ島から移った島民は約八割である。殆どが元御庭番衆とその家族であった。日本近海とは全く異なる気候や風土に、当然ながら始めは戸惑いこそすれ、気がつけば十年が経とうとしている。
「ずるいぞ、八重!! 今日は僕の番だって母様が言っていただろう!?」
「嫌!! 八重もやるの!!」
本宮島へと移る間に清は女の子を出産した。歳は数えの九つ。兄の清助も数えの十二になる。二人とも健康なのはありがたいが、おかげで喧嘩が絶えない。
清と十勇士達は、今でも時折本宮島近海の海賊を蹴散らす為に出撃している。次に「十六夜」を託す兄妹は帰港したばかりの母にどちらが剣術を教えてもらうか、というのが専らの喧嘩の理由だった。
「ほら、そこまでだ。八重、今日は清助が剣術って約束だっただろう? それに母さんも戦で疲れてんだ。二人も同時に教えられねえよ」
才蔵の説得に、子供用の竹刀を抱きかかえた八重の目にはみるみる涙が溢れる。
「父様も兄様の味方なんだ……!!」
「そうじゃないの。そんなに何かしたいなら、小助達と一緒に海に行ってくる? アメリカ海軍で最新式の戦艦の入水式らしいわよ」
「行く!!」
「えー……それなら僕も観に行きたい」
さっき泣いた烏が笑った。清助も八重も共に三度の飯よりも船と剣が好きだ。おかげで島の子供達に打ち解けていない訳ではないのだが、どこか一線を画すところがある。
「じゃあ、二人とも見に行ってきなさい。帰ってきたら、剣術だけじゃなく手習いもちゃんと勉強するって約束するならね」
結局「約束する」と叫んで、二人は手を繋いで「十六夜」の方へと駆けていく。
「うーん……育て方を間違ったのか、これで良いのか、迷いどころね」
「まあ、今は良いんじゃないか? 日本刀の剣術を教えられるのは清しかいないし、俺達忍びの技を教えたところで、急激に発展している世界情勢では必要性を感じないからな」
「間者が入ってきた時の対処は必要な知識じゃない。……なにより人体について詳しくなるから、現に軽い怪我や病気くらいじゃ動揺するどころか薬をねだるくらいだもの」
そう言った点では、あの二人は島に住む忍びの子供達と山や野原で植物についての知識を交換して遊んでいる、と見張り役の鎌之助などから報告を受けている。楽しんでいるのは良いことだが、女の子である八重も兄と同じことをしたがるのが悩みどころではある。
「人形だの歌や毬になんか、欠片も興味ねえもんな。納得も行くが……」
「どういう意味?」
「自分の子供の頃を思い出してみろよ」
痛いところを的確に突いてくる才蔵に、清は返す言葉が見つからない。くつくつと楽しそうに才蔵は清をからかってくるのももう今となっては日常である。
平和な日々だと痛感する。だが、嵐の前の静けさだとも思ってしまうくらいには清達は平和慣れしていないのだ。
「次のイギリスの海底調査に、清助と八重も連れて行くってのは本気か?」
「ええ、清助にはそろそろ本格的に海戦術や船の操作を教えて行こうと思っているの。幸い、二人とも、陸よりも海が好きだしね」
「今でもさりげなく甚八と小助に遊び感覚で操舵方法を教え込んでいるが……清助も八重も、人の上に立つ素質があるのかが心許無い、か」
「うん。だから、なんとか私達が生きている内にね。ヨーロッパは雲行きが怪しいから尚更……。おそらくヨーロッパで戦争が起きたとしたら、海底の覇権を握っているイギリスが優位。そうなる前に、こちらとしても遺せる物は余すところなく遺しておきたい」
年齢を重ね、同時に経験してきた航海の数だけ清は大局を見る目を養ってきた。そんな彼女に寄り添って、才蔵も世界の均衡は常に危ういのだと思い知らされた。――だが、今は。
「せっかくの静かな時間だ。清助と八重にはまだ子供らしくあって貰いたいのは親の勝手か」
「そんなことないよ。才蔵の言う通り……いずれ、あの子達は嫌でも厳しい現実を突きつけられるのだから」
平和を願わずにはいられない。本宮島を包む優しい風のように。
◇
各国がこぞって探る日本沈没の原因は、イギリスの協力で何度か海底に潜ることが成功している。しかし、引き上げられるのは家屋の一部や金属類ばかりで島国を沈めるほどの大きな手掛かりは掴めていないのが現状だった。
今のところ有力なのは、小助の推論である海底火山説とイギリスが提唱している万有引力と宇宙力学説だが、どちらも確証はないままだ。
清自身は、まだ技術が足りないと考えている。それでも調べずにはいられない。清は故国喪失の原因究明を掲げて発ったからである。
「せめて火山の噴火と地震が逆だったら、私達も発足しなかったんだろうなあ」
本宮島でアメリカ暫定政府が残していった家を改修した我が家――その寝室の鏡台で長い髪を乾かしながら、清は何の気なしに漏らした。
「それを言ったら終いだな。――どうした? らしくもない」
入水式ではしゃぎ倒して帰ってきた子供たちは、興奮冷めやらぬまま帰ってきて夕飯時はとても賑やかだった。それも風呂に入れてしまえば、糸が切れたかのように眠ってしまった。
その様子を微笑ましく思いながら、清と才蔵は二人で語らえる時間に本音を語る。
「んー……? 日本の沈没は各国で議論されているけど、皆、そこで躓いて頭を痛めているからね。あの小助がやけっぱちになって『もう地震が先で良いのでは?』なんていうんだよ。思わず笑っちゃった」
「へえ、クソ真面目なあいつがねえ。それだけ追い込まれていると思えば笑えないが……」
「そう。笑えるようで笑えないなあって」
才蔵は一瞬だけ笑ったが、あながち馬鹿にはできないとすぐに考えを改めた。
「一部の宗教では神罰だの、世界崩壊の兆しだの、露骨に怪しい説を唱える奴もいるらしいぜ」
「ここに移ってきてからはアメリカが近いせいか、切支丹にも抵抗なくなったし、それどころか異人への抵抗がなくなったよね。セイや八重の友達なんか大半がアメリカ人だから、気がつけば英語で会話してるんだもん。びっくりしたよ」
「こっちが通訳して欲しい時があるくらいだもんな。子供の適応力ってのは恐ろしいもんだ。八重はまだ日米両方の読み書きに半べそかいてっけど」
「――楽しみだね」
「ああ、どんな大人になるんだろうな」
手はかかるが、今はただ子供達の将来が輝けるものである事を祈っている。言葉にせずとも、それは清も才蔵も同じであった。
◇
来たる海底調査の日は晴天に恵まれた。風は南西。
その風を受けて「十六夜」に同行する帆船の帆が広がった。
航行の最中は甲板で清助と八重が竹刀を振っていた。
相手は清と多少の剣術の心得がある鎌之助が交代しながら相手をする。日数があるので、これを機に徹底的に相手をする清に、清助は四半時で息が上がってしまった。
「降参する?」
「しない。まだ、母様から一本も取れていないから」
「ほお、おひいさんから一本取ろうって気概が良いねえ。若、それにはまず呼吸を整えな。教えたろ?」
冷やかしの甚八が横から清助の動きに口を挟む。おそらく清助に操舵や海戦術だけでなく、本格的な武器の扱いを教えているのは、才蔵と甚八だろう。幼い八重も、それに負けじと隻腕の鎌之助へ強く打ち込むが、これは軽く流される。
「お嬢、若につられて力んじゃあ駄目でしょ」
「むう……鎌、全然本気出してくれない」
「そりゃね。さ、続けるよ」
負けず嫌いの八重は兄を最大の宿敵だと思っている。誰よりも母の戦う姿に憧れているのだ。
「男は侍として誇りと上に立つ者を護り、女が家を護る――そんな日本は既に無い。だから母君は誰よりも強く、多くの命を背負い、海を行くのです」
以前、小助はそう言っていた。数か月前に初めて本宮島近海で暴れていた海賊と戦う父と母の勇姿を安全な帆船から見せてもらったのだ。
母は刀を手に風と波を操るように船を操作し、父は母の背を護りながら十勇士達に指令を出す。わざと白兵戦に持ちこみ、人を殺める恐ろしさと、鬼神の如く刀を振るう母の姿は圧巻の一言に尽きた。
――なりたい、母のように猛々しく。父のように雄々しく。
清助と八重は心震えた、あの一戦が忘れられない。
父は焦る必要はないと諭す。母は目指すなら命の重みを知れと説く。
「もう一本!!」
小さな獣達の声が響き渡る。
★続...
グアム――本宮島に賀谷ノ島から移った島民は約八割である。殆どが元御庭番衆とその家族であった。日本近海とは全く異なる気候や風土に、当然ながら始めは戸惑いこそすれ、気がつけば十年が経とうとしている。
「ずるいぞ、八重!! 今日は僕の番だって母様が言っていただろう!?」
「嫌!! 八重もやるの!!」
本宮島へと移る間に清は女の子を出産した。歳は数えの九つ。兄の清助も数えの十二になる。二人とも健康なのはありがたいが、おかげで喧嘩が絶えない。
清と十勇士達は、今でも時折本宮島近海の海賊を蹴散らす為に出撃している。次に「十六夜」を託す兄妹は帰港したばかりの母にどちらが剣術を教えてもらうか、というのが専らの喧嘩の理由だった。
「ほら、そこまでだ。八重、今日は清助が剣術って約束だっただろう? それに母さんも戦で疲れてんだ。二人も同時に教えられねえよ」
才蔵の説得に、子供用の竹刀を抱きかかえた八重の目にはみるみる涙が溢れる。
「父様も兄様の味方なんだ……!!」
「そうじゃないの。そんなに何かしたいなら、小助達と一緒に海に行ってくる? アメリカ海軍で最新式の戦艦の入水式らしいわよ」
「行く!!」
「えー……それなら僕も観に行きたい」
さっき泣いた烏が笑った。清助も八重も共に三度の飯よりも船と剣が好きだ。おかげで島の子供達に打ち解けていない訳ではないのだが、どこか一線を画すところがある。
「じゃあ、二人とも見に行ってきなさい。帰ってきたら、剣術だけじゃなく手習いもちゃんと勉強するって約束するならね」
結局「約束する」と叫んで、二人は手を繋いで「十六夜」の方へと駆けていく。
「うーん……育て方を間違ったのか、これで良いのか、迷いどころね」
「まあ、今は良いんじゃないか? 日本刀の剣術を教えられるのは清しかいないし、俺達忍びの技を教えたところで、急激に発展している世界情勢では必要性を感じないからな」
「間者が入ってきた時の対処は必要な知識じゃない。……なにより人体について詳しくなるから、現に軽い怪我や病気くらいじゃ動揺するどころか薬をねだるくらいだもの」
そう言った点では、あの二人は島に住む忍びの子供達と山や野原で植物についての知識を交換して遊んでいる、と見張り役の鎌之助などから報告を受けている。楽しんでいるのは良いことだが、女の子である八重も兄と同じことをしたがるのが悩みどころではある。
「人形だの歌や毬になんか、欠片も興味ねえもんな。納得も行くが……」
「どういう意味?」
「自分の子供の頃を思い出してみろよ」
痛いところを的確に突いてくる才蔵に、清は返す言葉が見つからない。くつくつと楽しそうに才蔵は清をからかってくるのももう今となっては日常である。
平和な日々だと痛感する。だが、嵐の前の静けさだとも思ってしまうくらいには清達は平和慣れしていないのだ。
「次のイギリスの海底調査に、清助と八重も連れて行くってのは本気か?」
「ええ、清助にはそろそろ本格的に海戦術や船の操作を教えて行こうと思っているの。幸い、二人とも、陸よりも海が好きだしね」
「今でもさりげなく甚八と小助に遊び感覚で操舵方法を教え込んでいるが……清助も八重も、人の上に立つ素質があるのかが心許無い、か」
「うん。だから、なんとか私達が生きている内にね。ヨーロッパは雲行きが怪しいから尚更……。おそらくヨーロッパで戦争が起きたとしたら、海底の覇権を握っているイギリスが優位。そうなる前に、こちらとしても遺せる物は余すところなく遺しておきたい」
年齢を重ね、同時に経験してきた航海の数だけ清は大局を見る目を養ってきた。そんな彼女に寄り添って、才蔵も世界の均衡は常に危ういのだと思い知らされた。――だが、今は。
「せっかくの静かな時間だ。清助と八重にはまだ子供らしくあって貰いたいのは親の勝手か」
「そんなことないよ。才蔵の言う通り……いずれ、あの子達は嫌でも厳しい現実を突きつけられるのだから」
平和を願わずにはいられない。本宮島を包む優しい風のように。
◇
各国がこぞって探る日本沈没の原因は、イギリスの協力で何度か海底に潜ることが成功している。しかし、引き上げられるのは家屋の一部や金属類ばかりで島国を沈めるほどの大きな手掛かりは掴めていないのが現状だった。
今のところ有力なのは、小助の推論である海底火山説とイギリスが提唱している万有引力と宇宙力学説だが、どちらも確証はないままだ。
清自身は、まだ技術が足りないと考えている。それでも調べずにはいられない。清は故国喪失の原因究明を掲げて発ったからである。
「せめて火山の噴火と地震が逆だったら、私達も発足しなかったんだろうなあ」
本宮島でアメリカ暫定政府が残していった家を改修した我が家――その寝室の鏡台で長い髪を乾かしながら、清は何の気なしに漏らした。
「それを言ったら終いだな。――どうした? らしくもない」
入水式ではしゃぎ倒して帰ってきた子供たちは、興奮冷めやらぬまま帰ってきて夕飯時はとても賑やかだった。それも風呂に入れてしまえば、糸が切れたかのように眠ってしまった。
その様子を微笑ましく思いながら、清と才蔵は二人で語らえる時間に本音を語る。
「んー……? 日本の沈没は各国で議論されているけど、皆、そこで躓いて頭を痛めているからね。あの小助がやけっぱちになって『もう地震が先で良いのでは?』なんていうんだよ。思わず笑っちゃった」
「へえ、クソ真面目なあいつがねえ。それだけ追い込まれていると思えば笑えないが……」
「そう。笑えるようで笑えないなあって」
才蔵は一瞬だけ笑ったが、あながち馬鹿にはできないとすぐに考えを改めた。
「一部の宗教では神罰だの、世界崩壊の兆しだの、露骨に怪しい説を唱える奴もいるらしいぜ」
「ここに移ってきてからはアメリカが近いせいか、切支丹にも抵抗なくなったし、それどころか異人への抵抗がなくなったよね。セイや八重の友達なんか大半がアメリカ人だから、気がつけば英語で会話してるんだもん。びっくりしたよ」
「こっちが通訳して欲しい時があるくらいだもんな。子供の適応力ってのは恐ろしいもんだ。八重はまだ日米両方の読み書きに半べそかいてっけど」
「――楽しみだね」
「ああ、どんな大人になるんだろうな」
手はかかるが、今はただ子供達の将来が輝けるものである事を祈っている。言葉にせずとも、それは清も才蔵も同じであった。
◇
来たる海底調査の日は晴天に恵まれた。風は南西。
その風を受けて「十六夜」に同行する帆船の帆が広がった。
航行の最中は甲板で清助と八重が竹刀を振っていた。
相手は清と多少の剣術の心得がある鎌之助が交代しながら相手をする。日数があるので、これを機に徹底的に相手をする清に、清助は四半時で息が上がってしまった。
「降参する?」
「しない。まだ、母様から一本も取れていないから」
「ほお、おひいさんから一本取ろうって気概が良いねえ。若、それにはまず呼吸を整えな。教えたろ?」
冷やかしの甚八が横から清助の動きに口を挟む。おそらく清助に操舵や海戦術だけでなく、本格的な武器の扱いを教えているのは、才蔵と甚八だろう。幼い八重も、それに負けじと隻腕の鎌之助へ強く打ち込むが、これは軽く流される。
「お嬢、若につられて力んじゃあ駄目でしょ」
「むう……鎌、全然本気出してくれない」
「そりゃね。さ、続けるよ」
負けず嫌いの八重は兄を最大の宿敵だと思っている。誰よりも母の戦う姿に憧れているのだ。
「男は侍として誇りと上に立つ者を護り、女が家を護る――そんな日本は既に無い。だから母君は誰よりも強く、多くの命を背負い、海を行くのです」
以前、小助はそう言っていた。数か月前に初めて本宮島近海で暴れていた海賊と戦う父と母の勇姿を安全な帆船から見せてもらったのだ。
母は刀を手に風と波を操るように船を操作し、父は母の背を護りながら十勇士達に指令を出す。わざと白兵戦に持ちこみ、人を殺める恐ろしさと、鬼神の如く刀を振るう母の姿は圧巻の一言に尽きた。
――なりたい、母のように猛々しく。父のように雄々しく。
清助と八重は心震えた、あの一戦が忘れられない。
父は焦る必要はないと諭す。母は目指すなら命の重みを知れと説く。
「もう一本!!」
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