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調合師教育計画
今後の見通し
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それにしても、とマイヤは思うのだ。スヴェント伯爵夫人の治りが早すぎる。
「アベスカ側とオヤヤルヴィ公爵に非を持っていきたかったと思われますな。病状自体は軽く、それを重く見せるのです。……問題は重く見せていた魔法」
「そのような魔法、ありますの?」
「逆なら聞いたことがありますな。王侯貴族が相手に舐められぬように重い病状でも、軽くみせます。どこかのお抱え侍医になるには必須の回復魔法ですよ」
その魔法を反転させる方法があれば、出来なくもない。そうヘイノは続けた。
「治りが早いのはいいことですが、問題ですわね」
「全くですな。まぁ、向こうさんとしてはそれで点数を稼ぎたかったのかもしれませんがな」
質が悪い。病状を軽く見せるも重く見せるも勝手だが、患者やその家族に断りもなく使うとはどういうことなのか。アベスカ領では考えられないのだが。
「マイヤお嬢様、それは医師としても考えられぬことですぞ」
「あらまぁ。では、そのならず者の医師はどうしましょうか」
「旦那様とゾルターンに任せておけば大丈夫でしょう。かようなことをされて大人しくしているお二人ではありますまい」
「そうですわね」
アベスカ印の薬瓶を使わなければ、ここまで調べられることもなかっただろうに、とも思うのだが。
「業突く張りというものは、どこまでも欲深いものですぞ」
「肝に銘じないといけませんわね」
ふふふっと楽し気にマイヤが笑う。
これを見ていたヴァルッテリとニーロが、「こいつら敵に回したくない」と本気で思うほどのオーラを出していたという。
「あら、そのように弱気でどうすのですか? 近衛騎士様とあろうお方たちが」
聞いたマイヤがそう言ったが、剣技や力業だけではどうしようもないときがあるのだ。
「わたくし剣も持てませんし、魔法も使えませんもの。何か反撃できるものを持っていないと」
「俺が絶対に助けに行くから。それまでは理不尽な暴力以外には大人しくしていて。マイヤにこれ以上怪我させたくないし」
「独り者の前で惚気てんじゃねぇ!!」
さりげなく二人の世界に入ろうとしたヴァルッテリに、ニーロの拳骨が落ちた。
これを機に、オヤヤルヴィ公爵家とスヴェント伯爵家が手を結ぶことになった。
表向き、ヴァルッテリとニーロは仲違いをすることにした。
現王族のやらかしはそれだけではないし、そちらにマイヤたちを関わらせるわけにはいかない。聖獣のことも、調合師育成も任せきりなのだから。
「アベスカ側とオヤヤルヴィ公爵に非を持っていきたかったと思われますな。病状自体は軽く、それを重く見せるのです。……問題は重く見せていた魔法」
「そのような魔法、ありますの?」
「逆なら聞いたことがありますな。王侯貴族が相手に舐められぬように重い病状でも、軽くみせます。どこかのお抱え侍医になるには必須の回復魔法ですよ」
その魔法を反転させる方法があれば、出来なくもない。そうヘイノは続けた。
「治りが早いのはいいことですが、問題ですわね」
「全くですな。まぁ、向こうさんとしてはそれで点数を稼ぎたかったのかもしれませんがな」
質が悪い。病状を軽く見せるも重く見せるも勝手だが、患者やその家族に断りもなく使うとはどういうことなのか。アベスカ領では考えられないのだが。
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「あらまぁ。では、そのならず者の医師はどうしましょうか」
「旦那様とゾルターンに任せておけば大丈夫でしょう。かようなことをされて大人しくしているお二人ではありますまい」
「そうですわね」
アベスカ印の薬瓶を使わなければ、ここまで調べられることもなかっただろうに、とも思うのだが。
「業突く張りというものは、どこまでも欲深いものですぞ」
「肝に銘じないといけませんわね」
ふふふっと楽し気にマイヤが笑う。
これを見ていたヴァルッテリとニーロが、「こいつら敵に回したくない」と本気で思うほどのオーラを出していたという。
「あら、そのように弱気でどうすのですか? 近衛騎士様とあろうお方たちが」
聞いたマイヤがそう言ったが、剣技や力業だけではどうしようもないときがあるのだ。
「わたくし剣も持てませんし、魔法も使えませんもの。何か反撃できるものを持っていないと」
「俺が絶対に助けに行くから。それまでは理不尽な暴力以外には大人しくしていて。マイヤにこれ以上怪我させたくないし」
「独り者の前で惚気てんじゃねぇ!!」
さりげなく二人の世界に入ろうとしたヴァルッテリに、ニーロの拳骨が落ちた。
これを機に、オヤヤルヴィ公爵家とスヴェント伯爵家が手を結ぶことになった。
表向き、ヴァルッテリとニーロは仲違いをすることにした。
現王族のやらかしはそれだけではないし、そちらにマイヤたちを関わらせるわけにはいかない。聖獣のことも、調合師育成も任せきりなのだから。
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