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調合師教育計画
嬉しくない!?
しおりを挟む浄化装置が作動し始めると、集落の住民はマイヤが泥水を忌避していた理由が分かった。
そのあと再度嵐があったものの、生活用水は綺麗なのである。しかもそのまま飲めるという。
「腹の弱い方は一度煮沸してからというのは変わりませんわよ」
「んな奴この集落にいねぇよ。とっくに向こう岸に渡ってら」
豪快に笑う最年長の住民に、マイヤは白湯を渡していく。現状、小さい子供とこの住民の腹が一番弱い。
「ついでに氷室も作りたいのですけどね」
「何でぇ、その『ヒムロ』ってのは」
「冬の間に雪を室に集めて夏場でも低温を保ちますの。保っておけば、様々なものを少しは長く保存できるというだけですわよ。……帝国にありませんの?」
「一応あるよ。と言っても貴族の家だけかな。魔力を使って保ぞ……」
「ヴァルッテリ様、お願いいたしますわね。それと並行して雪を使った氷室も開発しますけど」
ヴァルッテリに仕事が増えていくが、マイヤはお構いなしである。ついでに、この最年長の住民を始め、仕事にあぶれている者たちには「子守」を頼んでいるのだ。
「お嬢……」
「わたくしは見つかった密偵のところに尋問に行ってまいりますわ」
いつの間に!? それこそヴァルッテリがすべきことでは? と周囲の視線が痛いヴァルッテリだった。
「マイヤ、密偵が来ていたなんて、初めて聞いたんだけど?」
「一応、先代公爵様には伝えておきましたわ。ヴァルッテリ様がお仕事中でしたので」
「……あっそ」
ヴァルッテリの仕事を減らすためか、他の理由か。ヴァルッテリには入っていない。そして、住民たちも初めて知ったというありさまである。
集落なぞ、一つの村よりも小さいのだ。今まで知らなかったというのが驚きである。
「今までは黙っておりましたの。流石に、住民の子供年寄りを人質にとるような密偵が来そうでしたので、周知することにしましたわ」
その時点で密偵じゃない、その突っ込みは方々から出た。
「仕方ないでしょう? 聖獣様のこととか、この地でどうやって暮らしていけるのかとか、帝都周辺でも気になっていらっしゃるようですし」
「……今頃?」
「今頃というか、半年経過して誰一人戻ってこないとか、こちらから冒険者ギルドへコンスタンスに依頼を出しているとか、公爵領内でも特殊として扱われているとか、様々な理由が混ざっていらっしゃるようですわ。
わたくしが出ると舐めてかかってぼろを出してくださいますの。わたくしが『真贋』のスキルを持っていなくとも、持っていらっしゃる方は数多いるというのに」
あ、これ悪だくみをしている時の顔だ。ヴァルッテリと住民たちは一瞬にして悟った。
「……ち、ちなみに尋問官はだれ?」
「そちらはさすがに教えられませんわ。ただ、密偵割り出しはわたくしとガイアです。まったく、わたくしに知られるようでは、何の情報も手に入れられませんのに」
「君らが規格外なの! 男爵令嬢の密偵スキルが高いだなんて、誰も信じないよ!?」
「光栄ですわ」
話が通じないぃぃぃ!!
ヴァルッテリは頭を抱えた。そんなヴァルッテリにまたしても同情が集まるのだが、ヴァルッテリも、その従者であるウルヤナ、アハトも嬉しくなかったりするのだった。
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