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調合師教育計画
アベスカ男爵領の最高権力者は誰?
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そんな話をされているとは露知らず。
現在、マイヤは先代公爵と集落を見て回っていた。自他ともに認める「ジジコン」なマイヤは、即座に懐いた。そらもう、ヴァルッテリが己の祖父にやきもちを妬くくらいに。
「ヴァルは放っておいていいのかのぅ」
「ヴァルッテリ様は近衛騎士としてのお仕事もありますし、こちらの集落用結界維持と大変ですから」
半分はマイヤが忙しくしたのだが、あえて知らぬふりをした。
「其方の祖父とその執事に会いたかったのぅ」
「同じようなことを大旦那様も仰っていましたよ」
「え?」
ヘイノの言葉に、マイヤは驚いた。どうやって、片田舎のアベスカ男爵領が他国の公爵様を知るというのだ。
「私をスカウトするということと同時並行で、オヤヤルヴィ公爵様とお会いしたかったよですぞ。あの方の情報網は計り知れませんし。おそらく、当時の神官を通して知ったのでしょうが。
己の進退をかけて王太子夫妻を守った方、あるべき道を取られた方。大旦那様にとっていつか旦那様が取らざるを得ない道に見えたようですからな」
「ほっほっほっ。儂もそう言ってもらえると嬉しいのぅ。そのうち男爵領に遊びに行くとするかの」
既にオヤヤルヴィ公爵夫妻が遊び歩いているとは知らないらしい。知らぬなら、教えることもないだろうとマイヤは思った。
「いくら税収免除とはいえ、活気があるのぅ」
「税収免除は二年ほどしかありませんから。その間に集落を終の棲家としてまとめなくてはいけませんから」
「住みよい場所にせんでええのか?」
「住みよい場所、とはどのような所でしょう? 彼らからしてみれば、あばら家の軒下でないだけまし、仕事があるだけまし、食事がとれるだけまし、他者に言われのない侮蔑を投げつけられないだけましなのです」
「そこまで落ちぶれておったか、帝都は」
悩まし気に先代公爵が呟いた。おそらく、「混血児」をヒラルキーに一番下に置いた理由は、王妃が「転生者」だからだ。己が「転生者」だとばれた時に保険をかけておきたかったはずだ。
「理由を知っているようじゃの。……しかも儂に言いたくないと見た」
「当たりですわ」
「お嬢さんが言いたくなったらでよかろう。おそらく帝国を混乱の渦に持っていくような内容じゃろ。そのうち婿殿に聞いてみるとするか」
「ありがとう存じます」
そう言ってもらえただけ、ありがたかった。近いうちに耳に入るだろうが、煎れる順番というものがある。
「ふむ。この「げすいしょり」とやらは領内に張り巡らせて良いかのぅ」
「そちらは公爵夫妻が現在頑張っていらっしゃいますわ。病気にならないためにも、衛生面に気を遣うのが一番ですし」
病気を持ってくる魔獣を優先的に倒して焼却する。それも伝えておく。
「それでミーラット討伐が優先されおるわけか」
「はい。あれが致死性の病気を運んできやすいというのは調べで分かっています。タイガーキャットが天敵ですので、飼いならせるのならそちらでもいいのですが」
「タイガーャットなぞ飼いならせぬぞ」
アベスカ男爵領では飼いならしておりました。言いそうになった言葉をヘイノと二人飲み込んだ。
「その様子から、アベスカ男爵領では飼いならしておると見た。コツを聞きたいものじゃな」
えーー。一応ゾルターンの許可を取ってから。そう先代公爵に伝えると、不思議そうな顔をしていた。
「男爵殿でなくてよろしいのか?」
「……父は間違いなくそういったことはゾルターンたちに聞いて判断しますもの」
一人で判断したりしない。ただでさえマイヤ可愛さに色々と情報の規制がおかしくなっている。
現在、マイヤは先代公爵と集落を見て回っていた。自他ともに認める「ジジコン」なマイヤは、即座に懐いた。そらもう、ヴァルッテリが己の祖父にやきもちを妬くくらいに。
「ヴァルは放っておいていいのかのぅ」
「ヴァルッテリ様は近衛騎士としてのお仕事もありますし、こちらの集落用結界維持と大変ですから」
半分はマイヤが忙しくしたのだが、あえて知らぬふりをした。
「其方の祖父とその執事に会いたかったのぅ」
「同じようなことを大旦那様も仰っていましたよ」
「え?」
ヘイノの言葉に、マイヤは驚いた。どうやって、片田舎のアベスカ男爵領が他国の公爵様を知るというのだ。
「私をスカウトするということと同時並行で、オヤヤルヴィ公爵様とお会いしたかったよですぞ。あの方の情報網は計り知れませんし。おそらく、当時の神官を通して知ったのでしょうが。
己の進退をかけて王太子夫妻を守った方、あるべき道を取られた方。大旦那様にとっていつか旦那様が取らざるを得ない道に見えたようですからな」
「ほっほっほっ。儂もそう言ってもらえると嬉しいのぅ。そのうち男爵領に遊びに行くとするかの」
既にオヤヤルヴィ公爵夫妻が遊び歩いているとは知らないらしい。知らぬなら、教えることもないだろうとマイヤは思った。
「いくら税収免除とはいえ、活気があるのぅ」
「税収免除は二年ほどしかありませんから。その間に集落を終の棲家としてまとめなくてはいけませんから」
「住みよい場所にせんでええのか?」
「住みよい場所、とはどのような所でしょう? 彼らからしてみれば、あばら家の軒下でないだけまし、仕事があるだけまし、食事がとれるだけまし、他者に言われのない侮蔑を投げつけられないだけましなのです」
「そこまで落ちぶれておったか、帝都は」
悩まし気に先代公爵が呟いた。おそらく、「混血児」をヒラルキーに一番下に置いた理由は、王妃が「転生者」だからだ。己が「転生者」だとばれた時に保険をかけておきたかったはずだ。
「理由を知っているようじゃの。……しかも儂に言いたくないと見た」
「当たりですわ」
「お嬢さんが言いたくなったらでよかろう。おそらく帝国を混乱の渦に持っていくような内容じゃろ。そのうち婿殿に聞いてみるとするか」
「ありがとう存じます」
そう言ってもらえただけ、ありがたかった。近いうちに耳に入るだろうが、煎れる順番というものがある。
「ふむ。この「げすいしょり」とやらは領内に張り巡らせて良いかのぅ」
「そちらは公爵夫妻が現在頑張っていらっしゃいますわ。病気にならないためにも、衛生面に気を遣うのが一番ですし」
病気を持ってくる魔獣を優先的に倒して焼却する。それも伝えておく。
「それでミーラット討伐が優先されおるわけか」
「はい。あれが致死性の病気を運んできやすいというのは調べで分かっています。タイガーキャットが天敵ですので、飼いならせるのならそちらでもいいのですが」
「タイガーャットなぞ飼いならせぬぞ」
アベスカ男爵領では飼いならしておりました。言いそうになった言葉をヘイノと二人飲み込んだ。
「その様子から、アベスカ男爵領では飼いならしておると見た。コツを聞きたいものじゃな」
えーー。一応ゾルターンの許可を取ってから。そう先代公爵に伝えると、不思議そうな顔をしていた。
「男爵殿でなくてよろしいのか?」
「……父は間違いなくそういったことはゾルターンたちに聞いて判断しますもの」
一人で判断したりしない。ただでさえマイヤ可愛さに色々と情報の規制がおかしくなっている。
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