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調合師教育計画
呪いの原因
しおりを挟むさすが聖職者というべきか。あっさりと呪いの原因を突き止めていた。
「下手な欲さえださなければ、優秀な方ですのね」
マイヤの一言にその場にいた全員がアルフレードに同情のまなざしを向けた。その中にはヴァルッテリもいる。
「この呪いに聖国が関わっているとなると、かなり厄介だね」
これでも一応、国外にもそれなりに顔の利くヴァルッテリは、どうやってこの聖獣を聖国に連れていくか、頭を悩ませていた。
そして、前任の枢機卿。あれはこの聖獣を殺めようとしていなかった。それを考えると、聖国へ連れて行けば、証拠隠滅とばかりに殺されてしまわないか。
「……困りましたわねぇ」
さして困った風でもなく、マイヤは呟いた。
「お父様から最悪、アベスカ男爵領で面倒みるという言質はいただいているのですけどね」
ちょっと待て。いつの間に!? その場にいた全員が同じことを思った。
「マイヤ……」
「最後の手段ですわ。スレイプホッグ様方とは住む場所が被らないようにするとのことですわ」
「場所は?」
「未定だそうですが、おそらく館の中で療養となるかと」
それくらいなら、公爵領が広いわけで、匿う場所もあるというものだ。
「こちらにはヘイノがおりますでしょう? こちらで匿ったら嬉々として聖獣様を観察しますもの」
呪いを受けた聖獣の話を聞いたヘイノの顔を思い出したヴァルッテリは、何も言えなくなった。
「如何なさいます?」
『聖獣様に危害のない場所がいい』
呪いに聖国が関わっているのが確実となった今、レイスは無理やり行こうとはしなかった。
「あなたとしてはどうしたいのかしら、アルフレード様?」
「ひぃっ!!」
「ここで欲をかいて聖獣様に危害を加えます? それとも大人しくしています?」
それは脅しだ。またしてもその場にいた全員の心の声が一致したが、誰一人口に出せない。皆、この聖獣を何とか救いたいと思うようになっていたのだ。
「お嬢様の……」
「わたくしをだしに考えるのをやめるの、やめていただけないかしら。あなたがすべきことは経典通りに聖獣様を敬うか、それとも私利私欲のために聖獣様を売り渡すかという、二択ですわ」
魔力などないはずのマイヤから、冷気を感じたのは気のせいなのか。
「売り渡すというのなら、それ相応の覚悟はよろしくて?」
「マイヤ、それ俺の台詞ね」
アルフレードとマイヤの間にヴァルッテリが割って入った。
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