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調合師教育計画
模索
しおりを挟む呪いの種類は何なのか、そして聖獣同士で解呪を行っていたのか。それを知るのは倒れているリヴァイテヒアだけといえる。
そして、そのリヴァイテヒアにレイスは近寄らせない。近づく者をすべて威嚇するのだ。
「困りましたわ」
「困ったのぅ」
マイヤの声が先代公爵と重なった。
「お助けしようにも、アレではどうしようもありませんもの」
「然り」
「呪いを解くカギが聖獣様ご自身にあると思っても、さすがにレイスにはなりたくないですし」
「まったくだの」
意見が合うようで何より。互いがそう思った。
何せ、打ち合わせをしなくともレイスを揺さぶれる。
「儂とてある程度聖獣様のことを調べてはおるが、どの条項に当てはまるのか、あのようにされては見当もつかぬ」
「そうですわよねぇ。怪我で弱った聖獣様なら何度か手当したことがありますけど」
「とするならば、なおさら近づけば何かしら解決策はお嬢さんと儂で見つかる可能性があるのぅ」
『……かような話、信じぬ!』
信じたいということの裏返しのように、弱いレイスが生み出された。
それを見たマイヤは不思議に思った。
「先代様」
「なんじゃ?」
「わたくし、魔力なしですので魔術・魔法に関しては無知なのですけど」
「ほう。その割に気づいたか。孫よりも優秀じゃの」
「あのレイスは聖獣様の呪いに由来しませんか?」
「あのレイスはリヴァイテヒア様の呪いから生まれておるの」
またしてもほぼ同時だった。
「呪いをリヴァイテヒア様のお力で変換なさっておるのじゃろうよ。それをあのレイスに授けておる。おそらくレイスもそれに気づいておるから、聖国にたどり着くまで呪いを解きたくないのじゃろうな」
続いた先代公爵の言葉に、全員が言葉を失った。
それが真実だったのだろう。レイスの動きが止まった。
「ということは……」
今なら解呪できる! と意気込もうとしたマイヤを止めたのはヴァルッテリだった。
「父上が解呪しようとして失敗したって話聞いてた?」
そんなことはすっかり忘れていたマイヤである。
これがただの怪我であれば、ヘイノを呼んでくればすむ話で。対聖獣の解呪魔法など誰が知っているというのか。
「婿殿よ」
「何でしょうか」
「破戒僧的な神官に伝手はないかの」
「無いですね」
あったらここの神殿に迎えとる、という副音声がマイヤには聞こえた。
「わたくしも、力の弱い神官になら伝手はありますけど……」
もちろん、アベスカ男爵領に常駐する神官のことだ。やる気のなさだけは天下一品と言われる神官。「いやぁ、レイス狩りに付き合わされないだけ感謝ですわ」とのたまった人物で、祈り以外やっているのを見かけたことがない。当人も「そんなことしませんよ~。力つけて他の神殿に行きたくないですし」と公言している。
神官という枠組みにいれては、他の神官に失礼すぎる人物なのだ。住民には慕われているので、アベスカ家としてもそのままいて欲しいところだ。
やはり堂々巡りだ。こうなれば神官赴任を急がせるのが一番なのでは、という空気が漂い始めた。
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メインヒーローはヴァルですよーー(大声)
おじいちゃんではありませんw
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