49 / 99
調合師教育計画
聖獣とレイス
しおりを挟む
集落へもこの内容を教え、ヴァルッテリが神殿に向かって獄炎魔法を放った。
一瞬にして、出ていたレイスたちは消え去ったものの、再度神殿からレイスが出て来たのだ。
「なっ!?」
さすがにこれはまずい! 全員が同じことを思ったものの、どうしようもない。
他にやりようというものがないのだ。
「もっと面子が集まったら再度、獄炎魔法を放って、神殿への距離を縮めますか?」
神殿内部に入らないと無理なようである。
「それしかないか」
応援に駆け付けた冒険者に後ろを任せて、ヴァルッテリは再度獄炎魔法を放つ。消え去った一瞬を見逃すことなく、神殿との距離を縮めていく。
それを繰り返すこと数回。やっと神殿入り口までたどり着いた。内側から扉が開かないよう、数人がかりでまずは抑える。
ヴァルッテリがこくりと頷くと、アハトとウルヤナが扉を開けるために近づく。
獄炎魔法を放つ瞬間を見計らい、二人が扉を開けた。
これまでにない量の魔力を使った獄炎魔法が、神殿内部に放たれた。
罰当たりな、という声も聞こえたが、マイヤは、果たしてここからレイスが発生していたという証拠が残っていればいいが、と明後日のことを考えていた。
「お嬢様、それよりも中にいるかもしれないという、聖獣を心配してくださいませ」
そう言ったのはベレッカだ。
ヴァルッテリも聖獣の存在をすっかり忘れて魔法を放ったようで、ばつの悪そうな顔をしていた。
そこにいたのは、傷だらけの聖獣と、その聖獣を守ろうとするレイスだった。
ただ、その聖獣をマイヤは見たことがない。他国にある程度行っていたはずのヴァルッテリも知らない姿かたちだった。
「お聞きいたします。その方は海に住まうお方ですか?」
恭しく頭を下げ、マイヤは訊ねた。湧き出るレイスをヴァルッテリたちが潰している、その目の前で。
『如何にも』
レイスが答えた。
「レイスを出すのを止めていただけませんか」
『否』
「ここに人用とはいえ、ヒーリングポーションがありますので、聖獣様に使わせていただきたく」
きゅぽん、とマイヤがポーションを一瓶開けた。そして半分ほど飲む。つまりは、毒見である。
『効かぬ。呪い故』
聖獣を呪えるものなど、そうそういないはずである。マイヤたちは首を傾げた。
「問います。あなた様は聖獣様を守るためにレイスになられたのですか?」
「!!」
周囲の空気が凍りついたのが分かった。
『如何にも』
「その聖獣様を呪ったのはこの国の者ですか?」
『否』
「では、傷つけたのは」
『応。この国の者』
「海の神の怒りと関係はありますか?」
『応』
「傷をつけたのが、この国の者だからですか?」
『応』
「では、あなた方はどの国に属する方ですか?」
『この国が滅した、北にある国、バサロヴァ海国也』
バサロヴァ海国という名前を、マイヤは知らない。
「今はペトレンコ公国という名前になっているよ」
滅ぼしたというよりも、ペトレンコ公国になる手伝いをしたというのが正しいと、ヴァルッテリは言う。
『王族を弑逆した者の末裔が何をぬかすか!!』
減り始めていたレイスが一気に増えた。
レイスの言葉を、マイヤはひたすら考えていた。
今は亡き国、バサロヴァ海国。おそらくそこの聖獣だったのだろう。呪いをもたらしたのは誰か。いくつか考えれられるが、帝国の者が呪っていないということは、もしかするとペトレンコ公国の者なのか。……違う気がする、とマイヤは思った。
そして、いくら滅んだ国だからと、聖獣の姿かたちが残されていないのはおかしいのだ。
「お待ちくださいませ」
マイヤはレイスに近づき、再度頭を下げた。
「その呪い、解く手助けをわたくしにさせてくださいませ」
一瞬にして、出ていたレイスたちは消え去ったものの、再度神殿からレイスが出て来たのだ。
「なっ!?」
さすがにこれはまずい! 全員が同じことを思ったものの、どうしようもない。
他にやりようというものがないのだ。
「もっと面子が集まったら再度、獄炎魔法を放って、神殿への距離を縮めますか?」
神殿内部に入らないと無理なようである。
「それしかないか」
応援に駆け付けた冒険者に後ろを任せて、ヴァルッテリは再度獄炎魔法を放つ。消え去った一瞬を見逃すことなく、神殿との距離を縮めていく。
それを繰り返すこと数回。やっと神殿入り口までたどり着いた。内側から扉が開かないよう、数人がかりでまずは抑える。
ヴァルッテリがこくりと頷くと、アハトとウルヤナが扉を開けるために近づく。
獄炎魔法を放つ瞬間を見計らい、二人が扉を開けた。
これまでにない量の魔力を使った獄炎魔法が、神殿内部に放たれた。
罰当たりな、という声も聞こえたが、マイヤは、果たしてここからレイスが発生していたという証拠が残っていればいいが、と明後日のことを考えていた。
「お嬢様、それよりも中にいるかもしれないという、聖獣を心配してくださいませ」
そう言ったのはベレッカだ。
ヴァルッテリも聖獣の存在をすっかり忘れて魔法を放ったようで、ばつの悪そうな顔をしていた。
そこにいたのは、傷だらけの聖獣と、その聖獣を守ろうとするレイスだった。
ただ、その聖獣をマイヤは見たことがない。他国にある程度行っていたはずのヴァルッテリも知らない姿かたちだった。
「お聞きいたします。その方は海に住まうお方ですか?」
恭しく頭を下げ、マイヤは訊ねた。湧き出るレイスをヴァルッテリたちが潰している、その目の前で。
『如何にも』
レイスが答えた。
「レイスを出すのを止めていただけませんか」
『否』
「ここに人用とはいえ、ヒーリングポーションがありますので、聖獣様に使わせていただきたく」
きゅぽん、とマイヤがポーションを一瓶開けた。そして半分ほど飲む。つまりは、毒見である。
『効かぬ。呪い故』
聖獣を呪えるものなど、そうそういないはずである。マイヤたちは首を傾げた。
「問います。あなた様は聖獣様を守るためにレイスになられたのですか?」
「!!」
周囲の空気が凍りついたのが分かった。
『如何にも』
「その聖獣様を呪ったのはこの国の者ですか?」
『否』
「では、傷つけたのは」
『応。この国の者』
「海の神の怒りと関係はありますか?」
『応』
「傷をつけたのが、この国の者だからですか?」
『応』
「では、あなた方はどの国に属する方ですか?」
『この国が滅した、北にある国、バサロヴァ海国也』
バサロヴァ海国という名前を、マイヤは知らない。
「今はペトレンコ公国という名前になっているよ」
滅ぼしたというよりも、ペトレンコ公国になる手伝いをしたというのが正しいと、ヴァルッテリは言う。
『王族を弑逆した者の末裔が何をぬかすか!!』
減り始めていたレイスが一気に増えた。
レイスの言葉を、マイヤはひたすら考えていた。
今は亡き国、バサロヴァ海国。おそらくそこの聖獣だったのだろう。呪いをもたらしたのは誰か。いくつか考えれられるが、帝国の者が呪っていないということは、もしかするとペトレンコ公国の者なのか。……違う気がする、とマイヤは思った。
そして、いくら滅んだ国だからと、聖獣の姿かたちが残されていないのはおかしいのだ。
「お待ちくださいませ」
マイヤはレイスに近づき、再度頭を下げた。
「その呪い、解く手助けをわたくしにさせてくださいませ」
0
お気に入りに追加
912
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
天才になるはずだった幼女は最強パパに溺愛される
雪野ゆきの
ファンタジー
記憶を失った少女は森に倒れていたところをを拾われ、特殊部隊の隊長ブレイクの娘になった。
スペックは高いけどポンコツ気味の幼女と、娘を溺愛するチートパパの話。
※誤字報告、感想などありがとうございます!
書籍はレジーナブックス様より2021年12月1日に発売されました!
電子書籍も出ました。
文庫版が2024年7月5日に発売されました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる