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夫婦になります(一応)
挙式に夢は見ませんが
しおりを挟む「……お前も阿呆か」
ヴァルッテリの隣でぼやいたのはオヤヤルヴィ公爵だった。
「いやさ、まさかここまで酷いと思わなかったんだよ」
「酷くなかったら、この国もここまで荒れることなぞないだろうに」
「言われてみればソウダネ」
果たしてそういう問題なのだろうか。マイヤとしてはこのまま挙式が流れてくれれば問題ないと思ってしまうのだが。
「参列客は置いておくとして、さっさと誓いを終わらせてしまいなさい」
「そうですね。俺もマイヤに逃げられたくないので」
どうやら気づかれたようである。舌打ちしたい気持ちをぐっとこらえるしかない。
結局収拾がつかない観衆を頭から捨て去り、王太后と公爵家の立ち合いのもと、挙式は終了したのだった。
文句を言いたげな司祭長は公爵と王太后が笑顔で黙らせていた。一体どんな弱みを握っているのだと言いたくなる。
マイヤは絶対に王太后を敵に回してはいけない。そう学んだ挙式だった。
さて、王都でそんな挙式になっている真っ最中、オヤヤルヴィ公爵領では一貫して祝福ムードのお祝いだった。何せここのところ衛生環境などが飛躍的に上がっている。そして医療に対する様々な取り組み。領民には好意的に受け取られていた。
それをもたらしてくれた、アベスカ家やマイヤ嬢に対する心証はかなりいいのだ。
そして、そんなオヤヤルヴィ公爵領の中でも、例の集落ではお祭り騒ぎと化していた。
「これでお嬢がグラーマル王国に帰る確率が減った!」
この時点で「帰る確率」と言っているあたり、マイヤの性格を熟知しているといえる。
「そろそろ騎士様を『領主様』って呼ばないと駄目かねぇ」
「でも、まだ公爵様に比べると領主としての貫禄がねぇ」
そこに前オヤヤルヴィ公爵がいるというのに、皆言いたい放題だ。それを止めることなく「確かにそうじゃの」と言ってのけていたりする。
「いや、年齢を顧みれば十分領主としての器でしょう」
「ほっほっほ。ヘイノ殿にそうおっしゃっていただけるのはありがたい。しかしのぅ……」
本来ならば、領主としての仕事をある程度やっていなければならない年齢のヴァルッテリ。今までまともにやらせていなかったため、その粗が目立つのだ。
「アベスカ家が異常なだけですぞ、かような所と比べては誰一人身が持ちますまい」
さらりと酷いことを言ってのけたヘイノに、「確かに」と同意する領民とそんな領民に絶句する前オヤヤルヴィ公爵だった。
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どんなに夢を見ないと言ってもこれはない(ヲイ
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