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新しいトモダチ
名月クエスト4
しおりを挟む「ふぇぇぇ!!」
ジャッジの狩る早さがあまりにも早すぎるため、カナリアとセバスチャンでも足りない気がしてきてしまう。
機会を見ながら、リースが助けてくれるのが助かる。
「あの状態のマスターを他の方々は『無双ジャッジ』と呼んでます。ああなると死に戻りをするか、クエスト終了するまで他を見ることが出来なくなるのが残念です」
白兎相手に、にやりと笑みを浮かべるジャッジは確かに凄い。……その状態のジャッジを凄いで終わらせるカナリアも、かなりずれているということに気がついていないのだが。
「え、エリさん! 助けてくださいっ!! こっちの剥ぎ取りが終わりません!!」
「はぁぁぁ!? ってちょっとーー!!」
エリに助けを求めると、かなり驚いていた。
「急いで剥ぎ取りーー!! カエデ全速力ーー!」
「はいですーー」
……結局、空が明るくなる頃、白兎が逃げ出すまでこれが続いた。
「言ってなかったんですけどねー、団子とススキッスが全部なくなると白兎も黒兎も来なくなるんですよー。そこまで夜は頭回りませんでしたー」
「無双状態のマスターに言っても無駄ですよ」
「悪い。やりすぎたか?」
リースの非難めいた言葉に、ジャッジが謝っていた。
「いいえっ。私の剥ぎ取りが遅くて、エリさんにまで回ってもらったんです!」
角だけを取っていれば間に合ったかもしれないが、どうしても他の素材も欲しいと思っていまい、時間がかかったのだ。
「あれだけ動いたあとですから、朝から肉でも大丈夫でしょう。白兎の香草焼きです」
白兎の肉を綺麗に血抜きし、適当な大きさに切ったものを香草に来るんで焼くだけのものだ。あとはパンを鞄から出し、食事に入る。
「ノルマまであと何羽だ?」
かなり空腹だったのだろう、ジャッジが珍しく食べながら聞いてきた。
「んーとですねー。私が今週一杯で狩る目標値を昨日だけでクリアさせてもらいましたー。ありがとうございまーす」
エリももぐもぐ食べながら答えている。
「予備はあるか?」
「端数でてますからねー。ありますよー?」
「カナリアに……」
「それについて私から提案なんですがー。どれくらいこのクエストに関わるつもりですかー?」
その言葉に、ジャッジがこちらを見てきた。
「んとですね、とりあえず巨大一角兎一羽になるくらいと考えてました」
大きさを聞いた今、それ位で十分すぎると感じている。
「じゃあですねー。私からの提案でーす。あと一日白兎のイベントも付き合ってもらえませんかー? んでもって十一月の黒兎のイベントとー、巨大一角兎もお手伝いしてもらえると助かりますー。そうしたらカナリアちゃんが欲しい分だけ白兎と黒兎の角はあげまーす」
「いいんですか!?」
「はい。毛皮も全部カナリアちゃんにあげますー。ついでにお肉もあげまーす」
かなり魅惑的な話に聞こえてくる。
「というよりも、角以外は要らないからこっちで引き取って欲しいんだろうが」
「違いますー。確かにお肉はそうですが、毛皮はそれなりに取引されいるんですよー?」
「そりゃ失礼した」
「いいえー。角ほどじゃないってのは本当ですからー」
「じゃあ、それに加えてこちらからいくつか提案させてくれ」
ジャッジもおもむろに言い出した。
内容としては、エリのいるギルド本拠地へ連れて行ってもらうことと、時によっては写真を撮らせてもらうこと。それから、今まで依頼を受けた建物も見せてもらい、こちらも写真が撮れるのであれば撮るというものだった。
「ギルマスに相談しますー」
暫く誰かと連絡を取っていたが、すぐに了承の返事が来た。
「明日も私たちにおつき合いくださるのなら、こちらからお願いしますだそうですー」
なんともあっさりと交渉が終わってしまった。
そして、ギルド本拠地に行ってカナリアは驚いた。
お寺である。どこからどう見てもお寺だ。
「ギルド『神社仏閣を愛する会』の本拠地ですー」
「……確かにそんな名前のギルドがあったな。建築関係じゃないと思って除外してた」
ジャッジがぼそりと呟いていた。
そのあと、かなりの写真をジャッジが撮って、その日はログアウトした。
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