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復帰の章
舞踏会にて
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こういった舞踏会で王族はあとに入るのだと、ジャッジがささやく。
「国王夫妻が来て開催となる。そのあと国王夫妻がファーストダンスを踊ると、色んな人たちも踊る。
NPCの貴族たちもいるから、その人たちが踊りだしてからで大丈夫だよ。それからルールとして、同じ人と踊っていいのは最高で二曲まで。四曲は完全なマナー違反だ」
「……色々大変なんですね」
「このあたりは中世ヨーロッパの貴族社会をモチーフにしているから仕方ない。俺たちは、ある程度の順番が来たら国王夫妻に挨拶する。大半をディッチさんがやってくれるから大丈夫だ。何かあってもパパンさんとママンさんが解決できるだろ」
「……はい」
「カナリアがすることは、背筋を伸ばして堂々としていること。それからアクセサリーとドレスを綺麗に見せること。そのために一曲だけ俺と踊る」
「はい」
「俺と」を強調された気がしたが、あえて黙っていた。
ジャッジの説明どおりに進んでいく。貴族たちの挨拶が終わると、PCたちが挨拶に行く。自分の作ったものを売り出すということなのかも知れないが、カナリアの視線は他の人たちのアクセサリーとドレスにしか行ってなかった。
「カナリア?」
「あれ、凄いです。石を綺麗に配置してます。……すっごく参考になります」
それ以上にギルド「カエルム」がいる場所を他の人たちが見ているということに、気付いていない。
「カナリア君」
「は、はいっ」
「集中して観察しているところ悪いが、そろそろ俺たちの挨拶の番だから行くよ」
ディッチの言葉に促され、差し出されたジャッジの手をとり、進んでいく。
前にパパンとママン、後ろにジャスティスとスカーレットがいる。
「それで、また新しい発明をしたそうだな」
「また、と申しますか……我々のギルドは生産関係に特化しているだけです。今回は八人乗りの車と、二十人乗りのマイクロバス……」
「それも、燃料が水と申すか?」
「はい」
その言葉に周囲がざわりとどよめいた。
「あとは、服飾関係です。特許も取っておりますので陛下のお耳にも入っていらっしゃるでしょうが、あの硬いと評判の錬金材料、『竜鱗』を使った首飾りと耳飾り、そして髪飾りです」
すいっと、ディッチが従者に渡していた。それを国王が受け取るといった感じだ。
「ほほう。この虹色に輝くは、確かに竜の鱗。こちらは?」
「一度錬金してくすんだものです」
「こちらも味があるな。して、この布は?」
「スパイダーシルクとプラチナをあわせて織り出した布と、スパイダーシルクの糸に、竜鱗の粉を加え織り出したものです。シフォンの布に少しばかりかけるだけで、光を反射し綺麗に見えます。しつこくならない程度に噴射いたしました」
「……なるほど。これは見事だ」
「ありがとうございます」
「製作はギルド全員で行っていると聞いたが」
「はい。他のアクセサリーと違い、使うアイテムの採取LVがとても高いものですから」
音楽すら止まり、全員がこちらを見ていた。
「ふむ。これは献上品ということでよいのか?」
「お眼鏡に叶うのでしたら」
「これは王妃に贈るとしよう。そなたらの本拠地がここでないことが残念だ」
「ギルド本拠地はガレ連邦共和国ですが、メンバーそれぞれが拠点を持っておりますから」
「我が王国を拠点にしている者もおると?」
「はい」
「左様か」
この会話で国王も満足し、音楽が鳴り始めた。
「カナリア、踊ろうか」
「はいっ」
その言葉でギルドメンバーが踊り始めた。
「カムエル」の女性陣が踊るたびにキラキラと竜鱗の粉が光る。
眩惑な光景がそこに広がる。
よし、ディッチは思った。興味はそれなりにひいている。そして、一月以上見ていないカナリアが公の場にいるということ自体が、PCたちの話題になるだろう。
「さて、俺たちも踊りますか?」
「そうですわね」
ディッチがユーリに声をかけると、にこりと微笑み返してきた。
「国王夫妻が来て開催となる。そのあと国王夫妻がファーストダンスを踊ると、色んな人たちも踊る。
NPCの貴族たちもいるから、その人たちが踊りだしてからで大丈夫だよ。それからルールとして、同じ人と踊っていいのは最高で二曲まで。四曲は完全なマナー違反だ」
「……色々大変なんですね」
「このあたりは中世ヨーロッパの貴族社会をモチーフにしているから仕方ない。俺たちは、ある程度の順番が来たら国王夫妻に挨拶する。大半をディッチさんがやってくれるから大丈夫だ。何かあってもパパンさんとママンさんが解決できるだろ」
「……はい」
「カナリアがすることは、背筋を伸ばして堂々としていること。それからアクセサリーとドレスを綺麗に見せること。そのために一曲だけ俺と踊る」
「はい」
「俺と」を強調された気がしたが、あえて黙っていた。
ジャッジの説明どおりに進んでいく。貴族たちの挨拶が終わると、PCたちが挨拶に行く。自分の作ったものを売り出すということなのかも知れないが、カナリアの視線は他の人たちのアクセサリーとドレスにしか行ってなかった。
「カナリア?」
「あれ、凄いです。石を綺麗に配置してます。……すっごく参考になります」
それ以上にギルド「カエルム」がいる場所を他の人たちが見ているということに、気付いていない。
「カナリア君」
「は、はいっ」
「集中して観察しているところ悪いが、そろそろ俺たちの挨拶の番だから行くよ」
ディッチの言葉に促され、差し出されたジャッジの手をとり、進んでいく。
前にパパンとママン、後ろにジャスティスとスカーレットがいる。
「それで、また新しい発明をしたそうだな」
「また、と申しますか……我々のギルドは生産関係に特化しているだけです。今回は八人乗りの車と、二十人乗りのマイクロバス……」
「それも、燃料が水と申すか?」
「はい」
その言葉に周囲がざわりとどよめいた。
「あとは、服飾関係です。特許も取っておりますので陛下のお耳にも入っていらっしゃるでしょうが、あの硬いと評判の錬金材料、『竜鱗』を使った首飾りと耳飾り、そして髪飾りです」
すいっと、ディッチが従者に渡していた。それを国王が受け取るといった感じだ。
「ほほう。この虹色に輝くは、確かに竜の鱗。こちらは?」
「一度錬金してくすんだものです」
「こちらも味があるな。して、この布は?」
「スパイダーシルクとプラチナをあわせて織り出した布と、スパイダーシルクの糸に、竜鱗の粉を加え織り出したものです。シフォンの布に少しばかりかけるだけで、光を反射し綺麗に見えます。しつこくならない程度に噴射いたしました」
「……なるほど。これは見事だ」
「ありがとうございます」
「製作はギルド全員で行っていると聞いたが」
「はい。他のアクセサリーと違い、使うアイテムの採取LVがとても高いものですから」
音楽すら止まり、全員がこちらを見ていた。
「ふむ。これは献上品ということでよいのか?」
「お眼鏡に叶うのでしたら」
「これは王妃に贈るとしよう。そなたらの本拠地がここでないことが残念だ」
「ギルド本拠地はガレ連邦共和国ですが、メンバーそれぞれが拠点を持っておりますから」
「我が王国を拠点にしている者もおると?」
「はい」
「左様か」
この会話で国王も満足し、音楽が鳴り始めた。
「カナリア、踊ろうか」
「はいっ」
その言葉でギルドメンバーが踊り始めた。
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よし、ディッチは思った。興味はそれなりにひいている。そして、一月以上見ていないカナリアが公の場にいるということ自体が、PCたちの話題になるだろう。
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