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過去と治療
ゲームの楽しみ方
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毎日、少しずつログインする時間が増えてきていた。
最初はたった数分で眩暈を覚え、ログアウトした。
その日はセバスチャンやリース、そしてジャッジと再会して終わった感じだった。
それから数日後。医師の許可も下りたので、長距離移動をすることになった。
移動といっても「初心者の町」から「ガレ連邦共和国首都」までグリフォンで移動するくらいである。
「初心者の町」はガレ連邦共和国にもソフィル王国にも属していない。そして、どちらの首都にもグリフォンであればゲーム時間にして四時間でつく。
カナリアが喜ぶという理由だけで、ジャッジはグリフォンを選んでくれたのだ。
「では、私たちは拠点の移動魔法を使って、先にギルド本拠地に行っております。道中お気をつけて」
「はいっ」
セバスチャンの言葉に、カナリアは元気に返事をした。
「カナリア、行くぞ」
あっという間に抱きかかえられて、グリフォンに乗っていた。従兄に抱きかかえられるのは嫌だが、ジャッジだと嬉しい。それがカナリアの本音だった。
「セバスチャンが、スコーンとマカロンを用意してくれました。途中で食べましょう」
「……さり気なく茶まで用意してんのな。さすが『TabTapS!』唯一の自立思考型AIだ」
「自立思考型AI?」
「あぁ。AIもいくつかに分類されるんだが、PCの思考を反映することも分かっている。大体が自立支援型とか自立攻撃型が多い。その他にもたくさんあるんだが、その中でも誰も作れないと思われていたのが『自立思考型』なんだ。メンテナンスの必要も最低限で済むっていう伝説のAIだな」
カナリアの場合は、セバスチャンをパートナーと見ている。そしてゲーム的発想が少なかった。それが要因となりセバスチャンが自立思考型になったのだろうとジャッジは言う。
「普通なら、PCがログインしない限りAIは動けないんだが、自立思考型に限りログインと関係なく動けると聞いたし、実際セバスは動いていた。……ただし、信頼関係に思いっきり左右されるらしい」
「そうなんですか。怒られてばっかりなのでよく分かりません」
「……だろうな」
心配することが多いセバスチャンは、カナリアによく忠告を行っている。そんなAIなどセバスチャン以外で見たことがない。ただ、最近は本当にセバスチャンのおかげか、他のAIも思考が凄い。
「ジャッジさん」
「ん?」
「この子の名前何ていうんですか?」
グリフォンを撫でながらカナリアが訊ねてきた。
「……考えたことなかったな」
召喚して乗るだけと考えていたジャッジにとって、これも新鮮だった。
「あとでミートパイあげていいですか?」
「……いいんじゃないか?」
くるるる、と嬉しそうにグリフォンが鳴いていた。
最初はたった数分で眩暈を覚え、ログアウトした。
その日はセバスチャンやリース、そしてジャッジと再会して終わった感じだった。
それから数日後。医師の許可も下りたので、長距離移動をすることになった。
移動といっても「初心者の町」から「ガレ連邦共和国首都」までグリフォンで移動するくらいである。
「初心者の町」はガレ連邦共和国にもソフィル王国にも属していない。そして、どちらの首都にもグリフォンであればゲーム時間にして四時間でつく。
カナリアが喜ぶという理由だけで、ジャッジはグリフォンを選んでくれたのだ。
「では、私たちは拠点の移動魔法を使って、先にギルド本拠地に行っております。道中お気をつけて」
「はいっ」
セバスチャンの言葉に、カナリアは元気に返事をした。
「カナリア、行くぞ」
あっという間に抱きかかえられて、グリフォンに乗っていた。従兄に抱きかかえられるのは嫌だが、ジャッジだと嬉しい。それがカナリアの本音だった。
「セバスチャンが、スコーンとマカロンを用意してくれました。途中で食べましょう」
「……さり気なく茶まで用意してんのな。さすが『TabTapS!』唯一の自立思考型AIだ」
「自立思考型AI?」
「あぁ。AIもいくつかに分類されるんだが、PCの思考を反映することも分かっている。大体が自立支援型とか自立攻撃型が多い。その他にもたくさんあるんだが、その中でも誰も作れないと思われていたのが『自立思考型』なんだ。メンテナンスの必要も最低限で済むっていう伝説のAIだな」
カナリアの場合は、セバスチャンをパートナーと見ている。そしてゲーム的発想が少なかった。それが要因となりセバスチャンが自立思考型になったのだろうとジャッジは言う。
「普通なら、PCがログインしない限りAIは動けないんだが、自立思考型に限りログインと関係なく動けると聞いたし、実際セバスは動いていた。……ただし、信頼関係に思いっきり左右されるらしい」
「そうなんですか。怒られてばっかりなのでよく分かりません」
「……だろうな」
心配することが多いセバスチャンは、カナリアによく忠告を行っている。そんなAIなどセバスチャン以外で見たことがない。ただ、最近は本当にセバスチャンのおかげか、他のAIも思考が凄い。
「ジャッジさん」
「ん?」
「この子の名前何ていうんですか?」
グリフォンを撫でながらカナリアが訊ねてきた。
「……考えたことなかったな」
召喚して乗るだけと考えていたジャッジにとって、これも新鮮だった。
「あとでミートパイあげていいですか?」
「……いいんじゃないか?」
くるるる、と嬉しそうにグリフォンが鳴いていた。
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