112 / 147
過去と治療
現実世界にて〈美玖の治療開始〉
しおりを挟む
「いやぁぁぁぁ!!」
医療VR用ヘッドギアを美玖に被せ、脳波測定を開始しようとした瞬間に、凄まじい拒絶反応を起こした。
研究者も医師も、ここまで酷いとは思いもしなかった。
固定してしまったため、取るまでにある一定のプロセスを踏まなくてはならないが、それすらも拒否して取ろうとする。
「もう少し待ってください!!」
一度測定しないと、ヘッドギアをはずすことなど出来ない。だが、この状態でははずすことすら難しいのも事実だ。
こんなことなら最初からカプセル型を使えばよかったと、皆が後悔していた。
耳と目のところだけを隠すヘッドギアであれば、どこでも出来るのがメリットだ。そして、その場で医師と会話し、必要とあらばすぐさまカウンセリングを受けれるし、食事代わりの点滴もしたままで出来る。だが、少しばかり衝撃に弱く、錯乱状態の患者には仕えない。脳波がまともに取れないのだ。そして、眠らせることが出来ない。
逆に、カプセル型であれば、麻酔を使い眠らせることで患者を大人しくさせることが出来る。そのあと起きてから会話、治療となっていく。カプセル型ということもありかなり大きく、場所をとるため必要機材のある専用室が必要であること、カウンセラーも最初から傍に置いておく必要もあり、点滴が出来ない。
どちらにもメリット、デメリットというものがあるのだ。
「転院させなさい。VR医療では最新設備のある病院へ、我名義で部屋を抑えてある」
和服姿の老女がいきなり入ってきて、言い出した。禰宜田から来たかなり年配の男が、その姿を見るなり硬直していた。ということは禰宜田の関係者か。
VR医療の最新設備があるところなど、限られている。一つは応仁会系列の病院だ。
だが、美玖に応仁会系列の病院はいかがかと思ってしまう。
「我用の診療所が北ヶ原にある。そこに禰宜田医療と研究所で開発した最新鋭のVR医療機器を、導入しておる」
「し……しかし……」
「さゆりには我が伝えておく。それから我のところに顧問弁護士の天原を呼んでおけ」
「?」
誰に言っているかと言いたくなってきたのは、主治医だけではないはずだ。
「お主がこの童子の主治医か? なればおぬしも来い」
「無理です! 彼女以外にも担当している患者は……」
北ヶ原はここから車で一時間ほどかかる海辺の町だ。そこまで通うだけでも大変である。
「何をしていらっしゃるの?」
丁度見舞いにやって来た悠里が呆れて問いただしていた。
「悠里、ちょうどよいところに来た。さゆりたちを北ヶ原につれて来い。それから顧問弁護士の天原だ」
「……天原は忙しいはずですわ」
「我の急用と伝えよ」
それだけ言って老女は出て行った。
すぐさま黒尽くめの男たちが来て、美玖を眠らせ連れて行った。
その光景を悠里は呆れてみていた。
だが、その老女のおかげで美玖の治療は順調にいくことになる。
医療VR用ヘッドギアを美玖に被せ、脳波測定を開始しようとした瞬間に、凄まじい拒絶反応を起こした。
研究者も医師も、ここまで酷いとは思いもしなかった。
固定してしまったため、取るまでにある一定のプロセスを踏まなくてはならないが、それすらも拒否して取ろうとする。
「もう少し待ってください!!」
一度測定しないと、ヘッドギアをはずすことなど出来ない。だが、この状態でははずすことすら難しいのも事実だ。
こんなことなら最初からカプセル型を使えばよかったと、皆が後悔していた。
耳と目のところだけを隠すヘッドギアであれば、どこでも出来るのがメリットだ。そして、その場で医師と会話し、必要とあらばすぐさまカウンセリングを受けれるし、食事代わりの点滴もしたままで出来る。だが、少しばかり衝撃に弱く、錯乱状態の患者には仕えない。脳波がまともに取れないのだ。そして、眠らせることが出来ない。
逆に、カプセル型であれば、麻酔を使い眠らせることで患者を大人しくさせることが出来る。そのあと起きてから会話、治療となっていく。カプセル型ということもありかなり大きく、場所をとるため必要機材のある専用室が必要であること、カウンセラーも最初から傍に置いておく必要もあり、点滴が出来ない。
どちらにもメリット、デメリットというものがあるのだ。
「転院させなさい。VR医療では最新設備のある病院へ、我名義で部屋を抑えてある」
和服姿の老女がいきなり入ってきて、言い出した。禰宜田から来たかなり年配の男が、その姿を見るなり硬直していた。ということは禰宜田の関係者か。
VR医療の最新設備があるところなど、限られている。一つは応仁会系列の病院だ。
だが、美玖に応仁会系列の病院はいかがかと思ってしまう。
「我用の診療所が北ヶ原にある。そこに禰宜田医療と研究所で開発した最新鋭のVR医療機器を、導入しておる」
「し……しかし……」
「さゆりには我が伝えておく。それから我のところに顧問弁護士の天原を呼んでおけ」
「?」
誰に言っているかと言いたくなってきたのは、主治医だけではないはずだ。
「お主がこの童子の主治医か? なればおぬしも来い」
「無理です! 彼女以外にも担当している患者は……」
北ヶ原はここから車で一時間ほどかかる海辺の町だ。そこまで通うだけでも大変である。
「何をしていらっしゃるの?」
丁度見舞いにやって来た悠里が呆れて問いただしていた。
「悠里、ちょうどよいところに来た。さゆりたちを北ヶ原につれて来い。それから顧問弁護士の天原だ」
「……天原は忙しいはずですわ」
「我の急用と伝えよ」
それだけ言って老女は出て行った。
すぐさま黒尽くめの男たちが来て、美玖を眠らせ連れて行った。
その光景を悠里は呆れてみていた。
だが、その老女のおかげで美玖の治療は順調にいくことになる。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説

【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。

冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

素直になる魔法薬を飲まされて
青葉めいこ
ファンタジー
公爵令嬢であるわたくしと婚約者である王太子とのお茶会で、それは起こった。
王太子手ずから淹れたハーブティーを飲んだら本音しか言えなくなったのだ。
「わたくしよりも容姿や能力が劣るあなたが大嫌いですわ」
「王太子妃や王妃程度では、このわたくしに相応しくありませんわ」
わたくしといちゃつきたくて素直になる魔法薬を飲ませた王太子は、わたくしの素直な気持ちにショックを受ける。
婚約解消後、わたくしは、わたくしに相応しい所に行った。
小説家になろうにも投稿しています。
転生リンゴは破滅のフラグを退ける
古森真朝
ファンタジー
ある日突然事故死してしまった高校生・千夏。しかし、たまたまその場面を見ていた超お人好しの女神・イズーナに『命の林檎』をもらい、半精霊ティナとして異世界で人生を再スタートさせることになった。
今度こそは平和に長生きして、自分の好きなこといっぱいするんだ! ――と、心に誓ってスローライフを満喫していたのだが。ツノの生えたウサギを見つけたのを皮切りに、それを追ってきたエルフ族、そのエルフと張り合うレンジャー、さらに北の王国で囁かれる妙なウワサと、身の回りではトラブルがひっきりなし。
何とか事態を軟着陸させ、平穏な暮らしを取り戻すべく――ティナの『フラグ粉砕作戦』がスタートする!
※ちょっとだけタイトルを変更しました(元:転生リンゴは破滅フラグを遠ざける)
※更新頑張り中ですが展開はゆっくり目です。のんびり見守っていただければ幸いです^^
※ただいまファンタジー小説大賞エントリー中&だいたい毎日更新中です。ぜひとも応援してやってくださいませ!!

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

学園長からのお話です
ラララキヲ
ファンタジー
学園長の声が学園に響く。
『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』
昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。
学園長の話はまだまだ続く……
◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない)
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。

モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる