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悪意のレイド
「深窓の宴」サブマス・シュウ
しおりを挟む違うと思いたい。それが、先日噂の「カナリア」を見つけたときにシュウが思ったことだった。
何故だ。何故この雲行きが怪しい時に、この面倒なVRMMOを選んだのだと。
グリフォンに乗れる精鋭部隊をシュウは引き連れて、「初心者の町」へ向かっている。
お前は不器用だし、ゲームなんかしたことないんだから、もっと簡単なVRMMOを選べよ。俺に聞けば教えてやるのに。
「サブマス、『癒しのウサミミ嬢』と知り合いなんすか?」
「……なんだそれは」
「リアル時間の昨日ですかね。あのアクセサリー職人が服を変えたんすよね」
「あの男物の服だろ?」
「そのあともう一度。それがミニスカナースな上に、ナースキャップとウサミミつきなんすよ。首を傾げると、それに反応して耳がうごくんす。しかも感情も読み取るエンチャントがかかってるらしく、しょんぼりすると耳が垂れて、嬉しいと耳がぴくぴく動くという優れものっす!」
メンバーの言葉にシュウは頭を悩ませた。もしカナリアが本当にあの少女だとしたら、大問題である。しかも、その格好では目立つだろう。
「ネットの方でも凄い評判で、今日見かけたやつが『注射器を持ってた!』って書き込みが始まってから、その持ち方が可愛くて癒されるってことで……」
そんな格好をしていれば、男が多いこのゲームでアイドルになるのは間違いない。
ただでさえ、もう一人の猛者、スカーレットを「姐御」と慕う者たちもいるのだ。
「とりあえず急ぐぞ!」
「はいっす! ウサミミちゃん! 待っててくれーー!!」
後ろで叫び声をあげたメンバーを冷ややかな目で見て、シュウはグリフォンを操る。
グリフォンで休みなしに空を翔れば、VR時間にして四時間で首都から「初心者の町」へとたどり着く。
ギルドメンバーの言う「ウサミミ嬢」というのがどこにいるのかはすぐに分かった。
必死にパーティへ回復魔法をかけているのが、空からでも分かった。
やっぱり「あいつ」だ。何故ここにいる。今すぐ逃げろ。その言葉がシュウからでかかった。
「くそっ! 俺らは空から迎撃!!」
「はいっす!」
動きを見ればトールたちがモンスターを迎え入れているのが分かる。シュウの考えを呼んだメンバーがそれを記録し始めた。
これはギルド放逐と、運営への報告に使うものだ。
もう、我慢がならない。
あのパーティの後ろにドラゴンが張り付き始めた。
「後ろっ!!」
シュウは腹の奥底から叫び、グリフォンを駆った。
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