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悪意のレイド
ギルド「深窓の宴」
しおりを挟む「カナリア君。ギルドへすぐ行く。俺たちも一緒に行くから」
「はい」
「タブレットが知らせてくるということは、それなりに緊急度が高い。ただ、カナリア君のしか鳴っていないから、慌てる必要はない」
「?」
ディッチの言ってるいる意味が分からない。
「本当の緊急クエストになると、半径○キロ以内にいる全員に配信されるんだ。それがないってことは、拠点をここに構えているPCでなんとかなるレベルのもだと思う」
「分かりました。行ってきます」
「あ、だから俺らも行くから」
ディッチに言われても、「緊急」という言葉からどうしても急いでしまう。
そして、その緊急クエストがかなり重大なものだと知ることになる。
今回の「緊急クエスト」を町単位にした理由は、ひとえに「深窓の宴」もメンバーが近くにいたからだ。しかも、イエローカードギリギリの行いばかりしている連中だ。「初心者の町」に拠点を構える冒険者はほとんどいない。
それでも、今回ばかりはと思っていた。
「あ、『緊急クエスト』受けに来ました」
にやにやと笑う、「深窓の宴」のメンバー。受けると言われてしまえば、カウンターにいる面々は手続きをしなくてはいけない。
こんなにも手際よくできるものなのか、もしかするとこの「緊急クエスト」自体、やつらが引き起こしたものではないのか、それがカウンターに立つものたちの一致した意見だった。
だが、証拠がない。だから、引き受けざるを得ない。
カナリアがこの町にいないことを願うしかないのだ。
「深窓の宴」のメンバーのクエスト受注が終わった頃、パタパタとした足音が聞こえた。
ナース服を着たウサミミのカナリアだ。
「『緊急クエスト』のお知らせを受けたんですけど」
しまった。そこにいた面々が全員思ったことだった。
「あ、俺らも受けたの。一緒行く?」
注射器を抱きしめたカナリアへ、「深窓の宴」のメンバーが向かっていく。
「あ……」
「一人じゃ無理なんだよね~~。俺らも一人足りないから、丁度いいよ」
カタカタと足が震えている。カナリアへクエスト拒否をしたところで、「深窓の宴」のメンバーは無理矢理パーティに入れるだろう。
「あ……あの……」
しどろもどろになりながら、後ろへと後ずさっていく。それを面白そうに男たちが見ていた。
「悪いけど、カナリアちゃんとはあたしたちがやるの。下種は引っ込んでなさい」
「スカーレットさん」
「さ、クエストを選んで」
「はいっ」
スカーレットに促される形で、カナリアはカウンターにやって来た。そしてクエストを受注していく。
「外に番犬が四人いるから、六人編成。やつらは一緒に行かないから大丈夫」
にっこりと笑ってスカーレットが耳打ちしてきた。カウンターにいた男は、それだけでほっとする。
カナリアとスカーレットが出て行くのを、「深窓の宴」の中でも札付きの悪は悔しそうに見ていた
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