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フレンド
初顔合わせ
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ログインして拠点に行くと、既にジャッジは準備が終わっていた。
「おおお遅くなりましたっ」
「気にするな。どうせ出て来るのに時間がかかったとかだろ?」
「それもあるんですが、このゲームを紹介してくれたお祖母ちゃんと少しお話してたんです」
「そうかい。その遅刻は許せんな」
「ごごごごごめんなさいっ」
何度も頭をさげて謝るカナリアに、ジャッジが頭を撫でてきた。
「まぁ、そのばあさんの力添えがないと出来ないのは分かる。そんなに遅れてるわけじゃない。んなことするより準備しろ」
「はいっ。今度から気をつけます!」
ばたばたと走っていくカナリアを、ジャッジは笑ってみていた。
「……まさか、な」
ぼそりと呟いた声を誰も拾うことはなかった。
「お~~い。ジャッジ!!」
考える暇も寄越さないタイミングで、とある人物がこちらにやってきた。
「ディッチさん。明日か明後日って言ったでしょう? ってか何でこの場所が分かったんですか!?」
ディッチこと、溝内 良平が、拠点の外に立っていた。
「ん? 俺の作った車が出てるじゃないか。場所丸分かり」
「じゃなくて、何で拠点が『初心者の町』だって分かったんですかっ!?」
「偏屈的、お前の考えを俺なりに考察した結果。山奥か、『初心者の町』だろうなと。んで、ジャスに聞いたら、最近は初心者の子と一緒に活動していることが多いと答えた。拠点を構えず宿屋にいるか、それともジャッジ名義で拠点を購入したかどちらかだと思った。だけど、お前のフレ内容には山奥の倉庫しか拠点として書かれていない。
とすると、宿屋かと思ったんだ。だとしたら『初心者の町』にいるに違いないと結論付けた。
宿屋でもこんな車を置ける場所なんて『初心者の町』にはほとんどない。そこをしらみつぶしにあたっていけば、お前と会えると踏んだわけだ。
初歩の推理だよ。ワトソン君」
「誰が『ワトソン君』ですかっ! それに最後は間違えてますよっ!」
「細かいことは気にするな。で、この拠点は、フレンド限定にしてあるあたり、その初心者の子に金を渡して買ったんじゃないか?」
「あたりですが、既に金は返済されてます」
「したたかな子だねぇ」
「現在のあなたの教え子ですが」
「そうかい……ってえっ!?」
驚いてこちらを見てきた。
「だから俺、昨日リアルの電話で言いましたよね? 明日明後日を空けてて欲しいと。表向き学校か図書館で勉強という形を取って欲しいって」
「言われたよ? だけど誰が教え子だと思うんだい。ゲームで勉強を疎かにしている子だと思ったんだよ。ついでにVRの世界でも勉強教えようと思っていたんだ。
そうすれば嘘にならないだろう? 成績が思わしくないからゲームを禁じる親だっているんだし」
教師であるディッチの言葉に、ジャッジは何も言えなかった。ジャッジが在学中も同じようなことは何度もあり、その度にディッチが矢面にたち、ゲーム内で勉強を教える光景もあったくらいだ。
「お待たせしました!」
パタパタと走ってくるカナリアの服装は、未だもって男性ものの黒スーツとコートだ。
「……前後撤回。そこまで必死になる必要ないよ」
ディッチが驚いたように呟いていた。
「おおお遅くなりましたっ」
「気にするな。どうせ出て来るのに時間がかかったとかだろ?」
「それもあるんですが、このゲームを紹介してくれたお祖母ちゃんと少しお話してたんです」
「そうかい。その遅刻は許せんな」
「ごごごごごめんなさいっ」
何度も頭をさげて謝るカナリアに、ジャッジが頭を撫でてきた。
「まぁ、そのばあさんの力添えがないと出来ないのは分かる。そんなに遅れてるわけじゃない。んなことするより準備しろ」
「はいっ。今度から気をつけます!」
ばたばたと走っていくカナリアを、ジャッジは笑ってみていた。
「……まさか、な」
ぼそりと呟いた声を誰も拾うことはなかった。
「お~~い。ジャッジ!!」
考える暇も寄越さないタイミングで、とある人物がこちらにやってきた。
「ディッチさん。明日か明後日って言ったでしょう? ってか何でこの場所が分かったんですか!?」
ディッチこと、溝内 良平が、拠点の外に立っていた。
「ん? 俺の作った車が出てるじゃないか。場所丸分かり」
「じゃなくて、何で拠点が『初心者の町』だって分かったんですかっ!?」
「偏屈的、お前の考えを俺なりに考察した結果。山奥か、『初心者の町』だろうなと。んで、ジャスに聞いたら、最近は初心者の子と一緒に活動していることが多いと答えた。拠点を構えず宿屋にいるか、それともジャッジ名義で拠点を購入したかどちらかだと思った。だけど、お前のフレ内容には山奥の倉庫しか拠点として書かれていない。
とすると、宿屋かと思ったんだ。だとしたら『初心者の町』にいるに違いないと結論付けた。
宿屋でもこんな車を置ける場所なんて『初心者の町』にはほとんどない。そこをしらみつぶしにあたっていけば、お前と会えると踏んだわけだ。
初歩の推理だよ。ワトソン君」
「誰が『ワトソン君』ですかっ! それに最後は間違えてますよっ!」
「細かいことは気にするな。で、この拠点は、フレンド限定にしてあるあたり、その初心者の子に金を渡して買ったんじゃないか?」
「あたりですが、既に金は返済されてます」
「したたかな子だねぇ」
「現在のあなたの教え子ですが」
「そうかい……ってえっ!?」
驚いてこちらを見てきた。
「だから俺、昨日リアルの電話で言いましたよね? 明日明後日を空けてて欲しいと。表向き学校か図書館で勉強という形を取って欲しいって」
「言われたよ? だけど誰が教え子だと思うんだい。ゲームで勉強を疎かにしている子だと思ったんだよ。ついでにVRの世界でも勉強教えようと思っていたんだ。
そうすれば嘘にならないだろう? 成績が思わしくないからゲームを禁じる親だっているんだし」
教師であるディッチの言葉に、ジャッジは何も言えなかった。ジャッジが在学中も同じようなことは何度もあり、その度にディッチが矢面にたち、ゲーム内で勉強を教える光景もあったくらいだ。
「お待たせしました!」
パタパタと走ってくるカナリアの服装は、未だもって男性ものの黒スーツとコートだ。
「……前後撤回。そこまで必死になる必要ないよ」
ディッチが驚いたように呟いていた。
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