女30歳、脳梗塞、左半身不自由になりまして

ゆるり

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8章

8-3 出来ないこと~外で~

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 靴の問題が解決しても、当然身体機能が回復したわけではなく「出来ないこと」はたくさんあった。 


 階段の昇り降りは、入院中のリハビリでやっていたのだが、やはり難しくて難しくてしんどかった。
 階段の昇り降りは嫌になるほど難しかった。
 ものすごく嫌だった。
 手すりのない階段の昇り降りは恐怖だった。そんな時は壁をつたうようにしていた。 

 入院中は病院の非常階段で「階段の昇り降り」の練習をした。
 左手で手すりを持つのは難しかったので右手で手すりを持って練習した。
 左手で手すりを持つと震えて支えるどころではなくなり危険で、むしろ手すりを持たない方が安全に思えたくらいだった。
 なので、右手で手すりを持って階段の昇り降りの練習をした。 

 でも退院後の階段の昇り降りは、病院の非常階段でのリハビリではないわけで、当然手ぶらではないし、左側通行なので右手に手すりを持って昇り降りをすると一般的には邪魔になる。
 それでも右手で手すりを持たないと危ないので、人から邪魔と思われても右手で手すりを持つようにした。 

 階段の昇り降りをする時、私の左足がどうなっているかというと、こんな感じだ。 
 昇る時、左足を上げようとすると左足が後ろに必要以上に大きく蹴るように出て昇ろうとして、その左足は上げきることが出来ずに左足の甲が段にぶつかる。
 一段昇るごとに緊張で足にぎゅっと力が入るので次の一段を昇る動作に移るのがスムーズに出来ない。 
 降りる時、震える足の置き場を確認しながら手すりを握りしめながら降りる。
 降りる時は本当に怖かった。特に地下鉄の階段は長いので、ものすごく嫌だった。
 昇り降りそのものが大変なのに、長いともうしんどくてたまらなかった。 

 階段の昇り降りがそんな感じで大変だったので、エレベーターの有無は重要だった。 
 倒れる前までは気付かなかったが、階段のみの建物はけっこう多かった。
 地下鉄もエレベーターのある出口は限られているし、ほとんど階段かエスカレーターだ。 


 エスカレーターはものすごく怖かった。
 手すりに手を置くと自動だから足がそれについていかないといけないのだが、そんなにうまく出来ず、すると脳と身体がパニックでも起こしたかのように左手が手すりの上でものすごく震える。
 これが瞬間的に起こるのだ。
 正直、めちゃくちゃ怖かった。
 手が震えると右手で震える左手を抑えた。
 なんとかエスカレーターに乗れても、エスカレーターに乗ってる間、私の左手はエスカレーターの手すりをぎゅっと握っているものだから降りる前に「手を離す」ことを意識させなければならなかった。
 「手を離す」ことを意識させなかったら、私の左手はエスカレーターの手すりから離れてくれなかった。
 これもやはり怖かった。 

 そして、歩道でも階段でもエスカレーターでも外出時につきまとう問題はバッグの存在だった。
 外出する時というのは、だいたいの場合バッグや何かしらの荷物を持っている。
 リハビリの時はもちろん手ぶらでバッグを持つことは想定していない。
 この違いは大きかった。 

 ショルダーバッグを持つのは無理と判断した私はリュックを背負うようにした。
 それでも、ショルダーバッグだろうがリュックだろうがバッグがあるということは身体が感じる重さや重心は変わるので、外出時はそれだけでストレスだった。
 しかしこれはもう慣れるしかなかった。 

 手ぶらでリハビリで歩いていた時にはなんともなかった道でも荷物を持つだけでバランスが変わり、「おっとっと」となることは多かったし、「バスに乗って立つ」ためのリハビリの時は「全然いけるじゃーん」と軽く考えていたのに、実際は荷物を持ってバスで立って揺られる身体を支えるのは大変だった。 

 また、人と並んで歩く時。
 例えば前にまっすぐ歩く場合身体はもちろん前を向いて歩くわけだが、顔は隣を歩いている人の方を向いてお喋りしながら歩く。
 これが出来なかった。
 ただまっすぐ歩くというそれだけでも神経をつかうのに、バッグなりリュックなりの荷物を持って、且つ隣を歩く人の方に顔を向けて歩くなんて、・・・出来なかった。
 荷物がなくても出来なかった。 
 入院中のリハビリの時は療法士さんと並んで歩いていたのにそんなことは思わなかった。
 きっと多分その時は「歩く」ことに集中していたのだろう。
 療法士さんたちも仕事なわけだし、きっと患者が「歩く」ことに集中させてくれていたのだろう。 
 でも退院後友人なんかと歩く時は、そうはいかない。友人らは普通に喋りながら歩く。
 私は横を向いて喋るという動作が出来なかったので仕方なく前を向くか足元を見るかして喋っていた。 

 
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