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7章
7-2 卵は割れない、紙は抑えられない
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私は元々お菓子作りが好きで、またお菓子作りをしたいと思っていたのだが、お菓子作りの工程の中での「ボールを持って支える」動作が出来なかった。
ボールに材料を入れて泡立て器で混ぜるという動作。泡立て器を持つ右手は当然何の問題もないのだが、ボールを支える左手が問題なのだ。
「ボールを持って支える」ことが出来ないのだ。
だから、ボールを自分の身体のおへそ当たりのところに当てて左手はボールを包み抱えるようにしてボールを支えた。そうすることでなんとか泡立て器で混ぜることが出来た。
また、料理も好きだったが包丁でモノを切る時左手でそのモノを抑えることが出来なかった。
ある日、いただいたフランスパン(厳密には明太フランス)を切ろうと思ってまな板の上にフランスパンを置いて切ろうとした。
右利きなので、右手に包丁を持ち、左手でパンを抑えて、切ろうとした。
すると、左手がぐにゃりと曲がりパンを抑えることが出来ないどころかぐにゃりと曲がる左手と一緒にパンも動いた。
左手の親指側がおへそのほうに、小指側が向こう側に、ぐにゃりと動き、パンも90度傾き、横に置いていたパンが縦になった。
また、ピーラーを使うことは包丁よりも難しかった。
例えばジャガイモを左手で持ってみてもちゃんと持てないのだ。
左手でジャガイモを持つ。
「ジャガイモを持つ」というそれだけで滑るのだ。
ちゃんと持てない。
ピーラーで皮を剥こうとすると、ジャガイモをどうにかして持つその左手が震えたり滑ったりして不安定なものだからその左手を切ってしまいそうになるし、そんな左手で持っているからなかなか剥けない。ピーラーは使えないと思った。
もちろん、卵を割るなんてことも出来なかった。卵を割るのは、微妙な力加減が必要で、その「微妙な力加減」が何よりも出来ないことだった。
また、来客の時に飲み物を出すためにコップに入れたお茶やコーヒーをお盆に乗せてお盆を持って歩くという時。
やってみたその時初めて知ったが、この動作が難しい。
お盆を持つだけでも震えて、液体の入ったコップを乗せるとその液体がこぼれそうになるのだ。
通常は股関節が安定しているのか、歩いてもお盆を上下左右にぶれないように持つことが出来る。その上に液体の入ったコップが乗ったとしても持つことが出来る。
でも私の場合、左半身は上下に動く。だからお盆も上下に動く。液体の入ったコップがそこに乗ると、液体ということもあって身体に伝わるお盆の重心は一定ではない。
そんなことになればもちろん持てるわけがない。持てたとしても液体がこぼれそうになる。そういう意味で持てない。
紙に字を書く時、左手で紙を抑えることが出来なかった。
通常、紙を抑える時のその手は、指先に軽く力が入ってるくらいだ。
でもそれが出来ない。
左の腕から手の平まですべてに全力の力が入る。
そしてどうにかしようとするとフランスパンの時と同じように紙が動くのだ。
左腕全部に力が入る動作で文字を書くようにしたが、これがすごく嫌な気持ちになるので、書く動作はとてもストレスだった。
そんな具合に、動作のひとつひとつにショックが伴った。
ボールに材料を入れて泡立て器で混ぜるという動作。泡立て器を持つ右手は当然何の問題もないのだが、ボールを支える左手が問題なのだ。
「ボールを持って支える」ことが出来ないのだ。
だから、ボールを自分の身体のおへそ当たりのところに当てて左手はボールを包み抱えるようにしてボールを支えた。そうすることでなんとか泡立て器で混ぜることが出来た。
また、料理も好きだったが包丁でモノを切る時左手でそのモノを抑えることが出来なかった。
ある日、いただいたフランスパン(厳密には明太フランス)を切ろうと思ってまな板の上にフランスパンを置いて切ろうとした。
右利きなので、右手に包丁を持ち、左手でパンを抑えて、切ろうとした。
すると、左手がぐにゃりと曲がりパンを抑えることが出来ないどころかぐにゃりと曲がる左手と一緒にパンも動いた。
左手の親指側がおへそのほうに、小指側が向こう側に、ぐにゃりと動き、パンも90度傾き、横に置いていたパンが縦になった。
また、ピーラーを使うことは包丁よりも難しかった。
例えばジャガイモを左手で持ってみてもちゃんと持てないのだ。
左手でジャガイモを持つ。
「ジャガイモを持つ」というそれだけで滑るのだ。
ちゃんと持てない。
ピーラーで皮を剥こうとすると、ジャガイモをどうにかして持つその左手が震えたり滑ったりして不安定なものだからその左手を切ってしまいそうになるし、そんな左手で持っているからなかなか剥けない。ピーラーは使えないと思った。
もちろん、卵を割るなんてことも出来なかった。卵を割るのは、微妙な力加減が必要で、その「微妙な力加減」が何よりも出来ないことだった。
また、来客の時に飲み物を出すためにコップに入れたお茶やコーヒーをお盆に乗せてお盆を持って歩くという時。
やってみたその時初めて知ったが、この動作が難しい。
お盆を持つだけでも震えて、液体の入ったコップを乗せるとその液体がこぼれそうになるのだ。
通常は股関節が安定しているのか、歩いてもお盆を上下左右にぶれないように持つことが出来る。その上に液体の入ったコップが乗ったとしても持つことが出来る。
でも私の場合、左半身は上下に動く。だからお盆も上下に動く。液体の入ったコップがそこに乗ると、液体ということもあって身体に伝わるお盆の重心は一定ではない。
そんなことになればもちろん持てるわけがない。持てたとしても液体がこぼれそうになる。そういう意味で持てない。
紙に字を書く時、左手で紙を抑えることが出来なかった。
通常、紙を抑える時のその手は、指先に軽く力が入ってるくらいだ。
でもそれが出来ない。
左の腕から手の平まですべてに全力の力が入る。
そしてどうにかしようとするとフランスパンの時と同じように紙が動くのだ。
左腕全部に力が入る動作で文字を書くようにしたが、これがすごく嫌な気持ちになるので、書く動作はとてもストレスだった。
そんな具合に、動作のひとつひとつにショックが伴った。
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