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6章

6-10 回復期病院入院生活~パンツ忘れる~

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 風呂場は病室から離れた所にあり、いつも着替えを持って行っていた。 

 私が利用する風呂場は同じフロアの北側一番奥にあった。病室のドアを出て右にまっすぐ延びる廊下を歩いた先の右手に風呂場のドアがある。そこに着くまでにいくつかの病室の前を通る。
 風呂場の前に着き、そのドアを開けると緩やかなスロープになっていて、そのスロープの先に右手と左手に一つずつ風呂場があった。 

 風呂場はコマを決める時にどこの風呂場かも決められているので、私はこの左手の風呂場にしか入ったことはなく、他の風呂場の構造を知らない。
 私の利用していた風呂場はスロープの先の左手のドアを開けると広めの脱衣所があった。
 ドアを開けて左手にはトイレがあり、右奥の角に洗面台がありその横に脱衣カゴが置いてあった。
 その洗面台と脱衣カゴの左手奥が浴室になっていた。
 脱衣所の右手には窓があり、病室と同じ東側なので窓の外は道路のようだった。
 もちろん脱衣所の窓なので開けたことはないが。 

 ある日、こんなことがあった。
 いつも通り風呂場へ行きシャワーを浴びて上がった時のこと。
 その時は脱衣所の窓から入ってくる日の光がまだ明るかった。
 そんな中、脱衣所の足ふきマットのある所で髪をタオルで拭き、身体を拭き、脱衣カゴに入れていた自分の着替えを入れた布袋から着替えを出して着替えようとした時。
 布袋の中にはキャミソールとTシャツとリラコのみ...パンツがなかった。 

 え・・・ 

 どうしよう・・・ 

 パンツがない・・・ 

 どうしよう・・・ 

 どうしたらいい・・・ 

 焦った。
 時間にすると短かったと思うが、青ざめた私にとっては時が止まったようで短くは感じられなかった。
 とりあえずパンツ無しでキャミソールとTシャツとリラコを着て部屋に戻ろう!と思った。
 慌ててパンツ以外を身に着けて急いで部屋に戻った。
 髪の毛はタオルで拭いただけで濡れまくっていた。それはいつものことなのだが。
 ドライヤーはナースステーションに置いてあるのでいつもそこにドライヤーを借りに行って病室で髪は乾かすようにしていた。
 でもこの時はドライヤーをナースステーションに借りに行ってる場合ではなかった。 

 とにかくパンツだ。 

 部屋に戻って、「パンツ忘れたー!」と叫んで、急いでロッカーからパンツを取り出してベッド周りのカーテンをシャッと閉めて急いでパンツを履いた。 
 真剣に焦って叫んだ私の「パンツ忘れたー!」で部屋のみんなは大笑いだった。 

 パンツを無事履き終わって、カーテンの中から顔を出した私に誰かが「忘れたのが上(リラコ)じゃなくてよかったね」と笑いながら言った。
 そう言われて、ごもっともだなぁと思いながら、とりあえずほっとして「ほんとですね・・・」と私も笑いながら言った。この時のことはおかしくて忘れられない。 

 

 同室の方々とはそれぞれがお見舞いでいただいたお菓子をシェアしたり、サッカーのワールドカップの試合を観たり(相変わらず私はテレビを見なかったので、Bさんのテレビを遠目で観たり)、他愛もない話をよくしていた。 

 Bさんとは仲良くしてもらった。
 Bさんと病院のなんやらかんやらに文句を言っていてそれぞれ思っていることを投書用の紙に書き投書箱に入れたりもした。
 リラコはBさんのおかげで知ったものだった。Bさんが楽そうなものを着ていたので「それいいですね」なんて話になってそれがユニクロのリラコだということを知って、母にリラコの話をして買ってきてもらった。
 季節的にも入院生活的にもリラコはとても良かった。
 Bさんのところには毎日旦那様が来て着替えを持ってきたり持って帰ってくれたりしていて、いつもご夫婦仲良さそうだった。 

 
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