女30歳、脳梗塞、左半身不自由になりまして

ゆるり

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4章

4-4 急性期病院でのリハビリ~作業療法士さんのリハビリ~

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 作業療法士のIさんもさばさばした女性だった。
 私がお見舞いで借りた漫画本を彼女も読んだことがあったらしく漫画の話をよくした。 

 Iさんのリハビリでは、手で大きめの印鑑のような形のものを穴から取ったり穴に戻したり、プラスチックの透明のカップを取ったり重ねたり、輪投げやボールを取ったり、そんなことをした。 

 大きめの印鑑のような形のものを穴から取ったり穴に戻したりするものは、ペグボードというものだ。
 A4くらいのサイズの板に規則正しく穴があり、その穴に大・中・小のサイズの印鑑のようなものが刺さっている。
 この印鑑のようなものを不自由な左手で取って空いている穴にはめる。
 不自由な左手でのこの動作は難しかった。 
 自由な右手でならなんてことのない動作が、不自由な左手だとものすごく難しいのだ。 

 取ってはめる。 

 それだけなのに。 

 それだけのことがなかなか出来ない。 

 「指でつまむ」動作が難しい。 

 つまむことがなかなか出来ず、はめることもなかなか出来ず、難しくて出来なくて悲しくてイライラした。 

 プラスチックのカップを取ったり重ねたりの運動は、スタッキングコーン又はアクリルコーンというものを使った運動のことだ。
 カラフルな透明の三角錐の形をしたカップが口を下にして重ねられている。これを、不自由な左手で例えばカップを左から右に重ね直すような動作をする。
 この運動はなぜか好きだった。だからかそんなに苦痛は感じなかった。
 でも「普通に持つ」ことは出来ていなかった。ぎゅっと手の平全体でカップを持っていた。そして震えながら右に移動させていた。 

 輪投げやボールタッチもそんなにイライラはせずに出来た。
 リハビリ室の畳に座った状態で輪投げをした。
 輪投げの輪を引っかける棒に向かって不自由な左手で輪を投げた。
 あまりうまく出来なかったけれど、遊んでいるような気持ちになれるリハビリだったので、イライラせずに出来た。 

 ボールタッチは、やはりリハビリ室の畳に座った状態でやった。
 Iさんと向かい合って座って、Iさんが持つボールを目で追ってそのボールを掴むようにタッチするというものだった。
 例えば、目の前でIさんが右上や左下にボールを持ったまま動かす。そのボールを目で追ってタッチする。もちろん不自由な左手でタッチするのだ。
 Iさんがボールを右上に持っていくと、私は不自由な左手で右上のそのボールにタッチする。
 ちょんと触れるようなタッチではなく掴むようにタッチする。
 この動作もあまりイライラすることはなく、割と楽しくやれた。 

 作業療法では、「指・鼻・指」運動もやった。
 運動というよりも動作の評価をするためのものなのだろうが、不自由な側の手、私の場合は左手の人差し指を、自分の鼻先→療法士さんの人差し指の指先→自分の鼻先に行ったり来たりさせる動作だ。
 これが大きく震えて出来なかった。
 まず自分の左手の人差し指を自分の鼻先にもってくることが難しかった。
 そして目の前にいる療法士さんの人差し指の指先にもっていくのも当然難しかった。 

 基本的に動作が細かければ細かいほど難しかった。なので、手のリハビリは本当に難儀した。 
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