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1章
1-1 倒れる
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ある日突然脳梗塞になるなんてことを、あなたは想像できますか?
それまで健康だった自分の身体が不自由な身体になることを想像できますか?
私は想像なんてしたこともありませんでした。
でも現実にそれは私の身に起きました。
ある日突然。
私が30歳のとき。
2014年3月28日。
その日の夜は「お花見」という名の職場の飲み会だった。
「お花見」という名のその飲み会はいわゆる桜の木の下で缶ビール片手に持ちあった料理をつまむような飲み会ではなく、居酒屋での飲み会だった。なので、私は桜並木の中を歩いて居酒屋に向かっていた。
空がオレンジ色に染まる夕暮れ時で、西の空に目をやるとまだ沈まない太陽の光が眩しかった。
生暖かい風が吹いていて、夕日でオレンジ色に映る桜の花びらがそこら中でふわふわと宙を舞い、私の髪はさらさらと揺れていた。
飲み会の開始時刻は18時だった。
参加者のうちの一人が遅れているという連絡を幹事が受け、残り全員が集合したところで乾杯をすることになった。
私はビールは苦手なのでハイボールを注文した。私の隣に座っていた女性はお酒を飲めないのでソフトドリンクを注文し、他の人たちはみんな生ビールを注文していた。
ドリンクが全てテーブルに運ばれて乾杯をし、コース料理が次々に運ばれてきた。参加者は各々自分の席の周りの人間とあれやこれや喋っていた。
遅れると連絡のあった人もいつの間にか到着していていつの間にか座ってビールを飲んでいた。
19時過ぎだっただろうか。
お酒を1、2杯飲んだくらいの時だった。
頭の中で「プチっ」と音がしたかと思うと、突然目の前が回り始めた。
目の前の人間や壁や天井が、ぐる~っと回っていた。
そして気が付くと身体の左側が動かせなかった。
何がどうなっているのか全くわからなかったが、直感的に「迷惑をかける」と思った。
この時、自分ではわからなかったが、呂律が回っていなかったらしい。周りの人たちは、「もう酔っ払ったの?呂律が回ってないよ」と笑っていた。
そして、隣に座っていた女性が私の異変に気付き少し離れた席に私を移動させてくれ、付き添ってくれた。
この時もまだ何が起きているかはわからなかった。それでも身体がおかしいことだけはわかっていた。
そして今度は吐気が襲ってきた。
「吐きたくない、吐けない」と思ってもその場で少し吐いてしまい、付き添ってくれていた女性が男性を呼んでくれてその男性が私をおぶってトイレに連れていってくれた。
その男性が「けっこう重いなぁ」なんて言っていたのをはっきり覚えているくらいの意識はあった。
内心、「力が抜けてるんだから当たり前だろー!」なんて思ったことも覚えている。私はそれくらい意識はありつつも強烈な吐気で喋ることが出来なかった。
それくらいこの時の吐気はひどかった。史上最悪の吐気だった。
それまで健康だった自分の身体が不自由な身体になることを想像できますか?
私は想像なんてしたこともありませんでした。
でも現実にそれは私の身に起きました。
ある日突然。
私が30歳のとき。
2014年3月28日。
その日の夜は「お花見」という名の職場の飲み会だった。
「お花見」という名のその飲み会はいわゆる桜の木の下で缶ビール片手に持ちあった料理をつまむような飲み会ではなく、居酒屋での飲み会だった。なので、私は桜並木の中を歩いて居酒屋に向かっていた。
空がオレンジ色に染まる夕暮れ時で、西の空に目をやるとまだ沈まない太陽の光が眩しかった。
生暖かい風が吹いていて、夕日でオレンジ色に映る桜の花びらがそこら中でふわふわと宙を舞い、私の髪はさらさらと揺れていた。
飲み会の開始時刻は18時だった。
参加者のうちの一人が遅れているという連絡を幹事が受け、残り全員が集合したところで乾杯をすることになった。
私はビールは苦手なのでハイボールを注文した。私の隣に座っていた女性はお酒を飲めないのでソフトドリンクを注文し、他の人たちはみんな生ビールを注文していた。
ドリンクが全てテーブルに運ばれて乾杯をし、コース料理が次々に運ばれてきた。参加者は各々自分の席の周りの人間とあれやこれや喋っていた。
遅れると連絡のあった人もいつの間にか到着していていつの間にか座ってビールを飲んでいた。
19時過ぎだっただろうか。
お酒を1、2杯飲んだくらいの時だった。
頭の中で「プチっ」と音がしたかと思うと、突然目の前が回り始めた。
目の前の人間や壁や天井が、ぐる~っと回っていた。
そして気が付くと身体の左側が動かせなかった。
何がどうなっているのか全くわからなかったが、直感的に「迷惑をかける」と思った。
この時、自分ではわからなかったが、呂律が回っていなかったらしい。周りの人たちは、「もう酔っ払ったの?呂律が回ってないよ」と笑っていた。
そして、隣に座っていた女性が私の異変に気付き少し離れた席に私を移動させてくれ、付き添ってくれた。
この時もまだ何が起きているかはわからなかった。それでも身体がおかしいことだけはわかっていた。
そして今度は吐気が襲ってきた。
「吐きたくない、吐けない」と思ってもその場で少し吐いてしまい、付き添ってくれていた女性が男性を呼んでくれてその男性が私をおぶってトイレに連れていってくれた。
その男性が「けっこう重いなぁ」なんて言っていたのをはっきり覚えているくらいの意識はあった。
内心、「力が抜けてるんだから当たり前だろー!」なんて思ったことも覚えている。私はそれくらい意識はありつつも強烈な吐気で喋ることが出来なかった。
それくらいこの時の吐気はひどかった。史上最悪の吐気だった。
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