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落花ノ章
4 見た目を裏切る超絶美女
しおりを挟む翌日になってー
互いに住む世界が違い、出逢いも出逢いだった為に無意識ながらにどこか遠慮に似たものがある…それが何となく嫌な圭介は、なるべく美優と共に時間を過ごそうと決め行動していた。
そこへやって来たのが、圭介の舎弟である司と将也だ。2人の顔を見て一瞬だけ『何しに来やがった。』と言いたげに、あからさまに顔色を変えるも…美優を紹介する良い機会だと思い中へと入れた。
「……。」
「………。」
「何突っ立ってんだ?お前ら。」
「…あ…兄貴の部屋にっ…」
「お、女がいるっ?!」
美優はソファーに座り、せっせと新しいスマホを操作するのに集中し過ぎて気付いていなかったみたいだが、突然叫ばれた『違う声』に驚きビク!と慌てて立ち上がる。それを見て、特徴ある吊り目をスッと細めた圭介が黒のチノパンのポケットに両手を突っ込み舎弟2人を見下ろした。
「…。おいコラ…コイツをビビらすんじゃねぇ…シバくぞ。」
「「す、すんませんす!」」
「…っ…」
「……。美優…コイツらはオレの舎弟だ。舎弟ってのは…んー…許可を得てオレの盃を受けた『弟』、だな…だからオレを『兄貴』って呼ぶ。右の金髪が『司』、左の赤髪が『将也』…覚えてやってくれ。」
「………。」
「コイツはオレの女、名前は『美優』だ。ついこの間まで堅気さんだったヤツだ…極道の事なんか何にも知らねぇ…『わかった』か?」
「「うす!よろしくお願いしますッ!」」
「…み、美優です…よろしく、お願いしますっ…」
「や、止めて下さい!俺らに頭なんか下げないで欲しいす!」
「そうすよ!」
「で、でもっ!…」
律儀にお辞儀して挨拶をする美優と、それに慌てふためく舎弟2人。ペコペコとお辞儀し合うそんな3人を見ていた圭介は『…クッ…』と吹き出し、やがて…
「あっははは!!」
…と、声高に笑い出した。そんな圭介を何が起きた?と見つめる。
「はーっ!マジ面白ぇっ!まぁそれが『普通』だやなぁ!」
「…兄貴がウケて笑ってるぅ…」
「オレだって笑うわ、このタコがっ。」
そう言われるのも無理もない。圭介は基本的に『無愛想』な男、なので人に笑顔を見せるなど滅多にない事なのだ。
「……。あ、あのっ…出来ましたっ。」
「おう、そんじゃ貸せ。」
美優のひと言でガラリと話が変わり、圭介はソファーに座ると自分のスマホを見ながら何やら打ち始める。彼女もまたその隣で眺めている…なんていう2人の『初めての姿』を、司と将也は口を僅かあんぐりとして呆然と見つめる。
「…おし。オレの番号とラインのIDを入れたからな、ちゃんと登録しとけ。」
「はい…ありがとうございます。」
「どんな小っさな事でも、何かあったらすぐ連絡よこせ。…速攻で来るかんな。」
「……。大袈裟ですよ…圭介さん。」
「はぁ?大袈裟だぁ?…わかっちゃいねぇなぁ、お前は。オレはてめぇが1人になるのが心配だっつってんだよっ。どこにフラフラ行くかなんてわかったモンじゃねぇ…、…んぁ?」
「「………。」」
「…おい、お前ら…何だそのアホ面。つうか座れっての。」
「…っ!う、うす。失礼しますっ。」
舎弟の2人がようやくと対のソファーに座るのを、圭介はやれやれと呆れたように眺め見る。『自分も舎弟時代はこんなだったろうか?』とタバコに火を点けながらふと思い、その頃の昔を思い出してみようとしたのだが…そう簡単には思い出せなかった。
「……。ところで司、将也…何か用事があって来たんじゃねぇのか。」
「っ!そうっす…あの、これ!社長からの『預かり物』す!」
「……。」
司が恭しくシュビ!と差し出したA4サイズの茶封筒を見て、圭介の顔がメンチを切るかのように思い切り歪む。だが社長である笛木からの物ならば受け取らない訳にはいかず手を伸ばし受け取った。
「…明日、遅くても明後日までに行って『確約』を取って来て欲しい…との事す。」
「そんなに『急ぎ』でもないみたいすけど…」
司と将也の言葉を聞き、微かに目つきが変わった圭介はその場で封を開け中を覗き見る。そして…ガラステーブルの上にポフン!と投げ置いた。
「……。わかった…後でオレからも社長に連絡入れておく。」
「…?…圭介さん?」
「美優、お前は気にしなくていい。…仕事の話だ。」
「………。」
美優の中で『どっちの仕事の話なんだろ?』という疑問がもたげ…極道?それとも会社?と考える。その違いが彼女にはまだわからない。
そんな空気を読んだのか、圭介が突然『おしっ。』と声を上げた。
「おい司、将也…今から時間あるか?…どうせ『暇』してんだろ。オレが会社に行ってる訳でもねぇんだしよ。これから美優のモン買いに行く…お前らも付いて来いや。」
「じ、自分らも…すか?」
「おう。運転手と荷物持ちだ…不服か?」
「まさか!兄貴と『姉貴』の行く所なら、どこだって行くす!」
「司と同じす!付いて行きます!」
「…良い返事じゃねぇか。さすがはオレの舎弟だなっ。」
「あ、あのっ…『姉貴』ってもしかして…私の事、でしょうか?」
「うす!俺らの尊敬する大事な兄貴の女なら、俺らにとっちゃ『姉貴』すからっ。」
「やややっ、止めて下さいっ…そんなっ…」
「クククッ…美優、こればっかりは諦めろ。極道ってのは人間関係や上下関係が厳しいんだ。止めろっつったって無駄だ。」
「……うぅ…」
こうして…唸る美優と舎弟2人を連れた圭介は、僅か賑わう札幌の街中へと車で繰り出す。
いくつかの顔馴染みの店を次々と回っていくが、圭介の目から見て美優に似合いそうな洋服がないと判断するや『すまねぇ…また来るわ。』とすぐさま退店してしまう。
それを幾度と繰り返し…やっと落ち着いたのは、彼自らも常連として利用するブティックだった。
「いらっしゃいませ…あら清水様。」
「よう『翠』。相変わらず良いモン揃えてるみてぇだな。」
「ありがとうございます。これも全て清水様のお陰です。…ところで本日は?新たなスーツのご新調でしょうか。」
「いや、それはまた近々来るわ。…今日はオレじゃねぇ……おいっ。」
「は、はいっ。」
少し下がった場で司や将也に守られるかのように所在無さげに立っていた美優をチョイチョイと呼ぶと…圭介はグッと肩を抱く。
「今日はコイツのモンを揃えてやろうと思って、あちこち覗いたがやっぱココには敵わねぇ。…てな訳で、コイツの頭っから足のつま先…果ては『中のモン』までビシッと誂えてやってくんねぇか。…金はいくら掛かったって構やしねぇ。」
その言葉を受け、ブティックのオーナー兼スタイリストの『翠』は驚くと同時に嬉々とした表情で目を輝かせ…隣の美優は目を見開き口を開けサァーと青ざめる。
「け、圭介さん?!」
「美優は好きなモンを『好きなだけ』選べ。この店には全部が揃ってるからな…女は着飾ってナンボだぜ。」
「き、着替えならアパートに戻ればいくらでもありますっ。わざわざ買わなくてもっ…」
「…駄目だ。何でかは昨日言ったぜ。あそこには2度と近寄らせねぇからな。」
「………。」
「…それに言っただろ…『お前のこれからの全部はオレが用意する。』って。物だろうが生活だろうが全部だ。お前はオレが食わせるっ…わかったか?」
「……。…はい…」
「………。」
「…うしっ。そんじゃ翠…『美優』を頼むぜ。オレの可愛い、大事な女だからな。オレはあっちでコイツらといる…悩んだら呼べ。」
美優の頰を大きな右手でスリスリと名残り惜しげに撫で、圭介は薄く笑いながら司らを引き連れ奥の応接席へと歩いていく。
こうなると大変困るのが、取り残されてしまった美優本人だ。当たり前だがブティックのオーナーを始めとする従業員らとは全くの面識がなく、圭介が突然連れてきた『女』という事で異常なまでに注目を浴び…店内の商品もそこらのOLなどには到底手が出せなさそうなお高い物ばかり。
…普段はデパートのセール品などしか着ない彼女としては、何だか申し訳なくて身を縮めるしかない。
「…そのように緊張なさらずに。申し遅れました、私当ブティック『アモーレ・ミオ』オーナー兼スタイリストを務めております『大柳翠』と申します。」
「っ、雪吹…美優、と申します…よ、よろしくお願い致します…」
「…ふふっ…ささ、清水様はお気の短い方ですから、早速採寸から参りましょうっ。…準備して頂戴。美優様はこちらへ。」
「えっ…さ、採寸?…って…」
「私どもがそのお客様をより知るには、お身体のサイズ全てを知る事が1番なんです。それにサイズの合わない洋服は疲れさせ、女性においてはボディーラインを崩してしまいますから。…特に『ランジェリー』にとっては重要です。」
「ラ、ラン?!…い、いいです!いいです!」
「…あら?でも…清水様は『中のモン』までと。私どもはそう受け取ったのですが?」
「………。」
「ふふふっ、ご安心下さい美優様。当店で揃わない物など何一つとございませんので。…清水様があっと驚く『素敵なもの』をご提供させて頂きますわ。」
「……はぅ…」
あんぐりとして言葉が出て来ない美優に、オーナーの翠はニッコリと笑う。だがその笑みが彼女にとってそこはかとなく恐ろしく感じる。
そうしている間にも翠の腕に誘われるように奥へと連れて行かれ…怒涛の如く、身包み剥がされ身体のあらゆる場所を採寸された。
翠は最初彼女を見た時…『こんな子供っぽい娘が、この男の?』と見下し残念にさえ思った。だが人は見かけで判断するものではないと実感したのは、美優のほぼ全裸となったその姿を見た時。
(…なるほど、ね…これじゃあ清水様が手放すはずがないわ…)
圭介の『オレの可愛い、大事な女』発言と、金さえ惜しまない豪胆さを思い出して心中ひっそりとほくそ笑む。
顔を含めて見た目はどう見ても良くて女子大生辺りの幼さ…けれどその中身たる『身体』は妙齢の女性らしく、出るべき所はしっかりと出て引っ込む所は引っ込んだモデル顔負けのナイスバディー…いや、それ以上だったのだ。胸のサイズも採寸の結果『D』と判明した。
元来なのか色白で、肌もきめ細やかで透き通らんばかり。これには翠のみならず、他の従業員達も驚愕している。
その間の美優はというと…翠や従業員達に囲まれ、容赦なくあちこちと触られまくられてキャーキャーと声を上げていた。どうにもくすぐったいらしく、我慢出来ないようだ。
そんな賑やかな声を、僅か離れた場所にある応接セットに座って出されたコーヒーを飲んでいた圭介は「クククッ!」と笑い…司と将也は『姉貴』の身に何が?と不安顔を浮かべた。
やがて採寸が無事に終わると、翠は意気揚々と美優に様々な『ランジェリー』を推薦していく。けれど彼女が推す物は…
「む、無理っ…無理です!そ、そんなっ…」
「色、デザイン、全てが素敵ですよ。美優様にもお似合いです。」
「た、確かに素敵ですしっ、良い物なのは十分わかりますがっ…っ…」
「…?」
「…っ…は、派手…と言います、か…それにぃ…横が『紐』な意味がわかりません…」
赤面しながらモソッと呟いた美優の言葉に、始めは意味がわからずキョトンとした翠だったが次には「ぷふっ!」と吹き出し笑い出す。
「…失礼致しましたっ。確かに…女性にとってはこの横の紐は全く無意味に等しいですね。寧ろ解けやしないかと気になって『煩わしい』。…ですが、男性からすれば違います。何せ解く『楽しみ』がありますもの。」
「っ?!…」
「ふふふっ…美優様?ずっと一緒にいるから大丈夫と安心していると、やがて慣れ合い興味や関心が薄らぎます。男性の心をいつまでも自分だけに向けておく為には、こういう『刺激』が必要なんですよ?」
やはり数多の経験を経たやり手の女性実業家である。翠は最もな事…だが美優にとってはグッとくるであろう言葉で説明すると、僅かな隙を見つけて様々なデザイン(レース仕様の中々際どい物など)を10セット近くを勧め頷いてもらう事に成功した。…美優にはもう断る気力がなかったのだ。
ランジェリーが無事に終われば、次はトップスとボトムスにジャケットやコート、靴など…圭介が言ったように本当に頭から足先に至るまでの全てを選んでいく。
それらが全て終わる頃には有に数時間以上を経過していたが、圭介も舎弟2人も文句や愚痴る事もなく黙って待ち続けていた。…司と将也は途中で揃って居眠りしてしまい、圭介にド突かれたり蹴られたりしていたが。
やがて…別フロアにある男性用スーツのデザインを見ていた圭介に声が掛けられ戻っていくと、もはやグッタリと疲れ切った美優が項垂れソファーに座っていた。
「あ、姉貴!大丈夫すか?!」
「…さすがにお疲れになられたようです。申し訳ありません。」
「いや気にすんな。…大体こうなるって思ってたからな。」
申し訳無さげに謝罪する翠に薄く笑うと、圭介は美優へと歩み寄りその前に屈み込む。
「おい…生きてっか?」
「圭介、さん…」
「お疲れさん、美優…似合ってんぜ。さすがはオレが『惚れた女』だ。」
彼女が今着ているのは来店時の物ではなく、翠が見立てた新たな洋服だ。取り立ての仕事の時や普段は派手ジャージやジーンズ姿、それ以外は黒のスーツ姿が基本の圭介は黒色が主流カラー。その彼に釣り合うようにと、翠は美優の洋服も派手な色目は少なめにしてモノトーンを基調として揃えた。
その1つである、デコルテぎりぎりまでカットされた白黒のチェック柄のトップスと、スリットが入ったデニム地のタイトロングスカートは、美優のデメリットである幼さを上手く覆い隠し大人の女性らしさを滲ませている。
シックな中にも、どこか可愛らしさの残る彼女の姿に、圭介はご満悦とばかりその笑みを隠さない。
「…帰ってゆっくりすんぞ。それから晩飯だ。」
「……。こんな生活、してたら…私太っちゃいますよぉ…」
「なぁに言ってやがる。んな事考えなくていい。太る暇があるかってんだ。…おい翠、今日の会計は“コレ”で頼む。」
「かしこまりました。…ふふっ、お熱いですね?清水様。今夜もたんと『お楽しみ』下さいませ。」
にっこりと微笑みのたまう翠のその顔を、僅か怪訝そうな表情で下から見上げていた圭介は、財布から指の間に挟んで差し出していた『ブラッククレジットカード』をスッと引っ込めてしまった。
「翠、お前…美優に『何か』したのか?」
「何もしてはおりませんわ。アドバイス…的なお話は致しましたけれど。」
「……。ふーん…相変わらず食えねぇ奴だな。…わかった、その『楽しみ』とやら…確認してやろうじゃねぇか。…支払いは明日、改めて来る。」
「構いませんわ。お待ちしております。」
「……。おい司、将也…買ったモン車に積め。…美優、帰んぞ。」
「……は、いぃ…」
舎弟2人がせかせかと大量の箱やら紙袋を車に運び積み込む間、圭介は美優の両手を取って立たせるとその身体を支えるように背から腕を回し「…世話になった、またな。」と告げる。
そのまま彼女を連れ立ちながら歩き、車に乗り込もうと去って行く2人の姿を翠を始め従業員らが見送った。…従業員らに至ってはこれまでの圭介とは真逆の『紳士的』なその姿に顔を赤らめる者もいる程だ。
「…何ですかアレ。まるで人が変わっちゃったみたいですね。」
「口が悪いのだけは変わらないけど。」
クスクスと笑い合う中…翠が真顔でポツリと呟く。
「…あの清水圭介が、運命の女(ひと)に出逢った…って事なのかしらねぇ。でなけりゃ、あんな風に変われやしない…あの男は根っからの『極道』だもの。…けれどもしこの先、あの娘が誰かに手出しなんかされたなら…尋常じゃない程の『血の雨』が降るわね…確実に。」
翠のその言葉は、僅かホッとしたような…それでいてこの先を懸念するかのようだった。
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