15 / 26
15
しおりを挟む桜子の言動が、私の中でますます不安を煽り続けた。
ある日のこと、家に帰ると、リビングで玲央と桜子が肩を寄せ合うようにして座っているのを見かけた。二人の距離が、あまりにも近すぎた。
「今日はどうだった?」
玲央の言葉が、まるで桜子を気遣うように聞こえた。彼の顔には、優しさが滲んでいた。
桜子が微笑みながら答える。
「うん、何とかうまくいったけど、少し疲れました。」
その瞬間、私の胸が締め付けられるような痛みを感じた。桜子が玲央の隣に座っているだけで、心の中に波紋が広がる。
私はその場からすぐに出て、キッチンで深呼吸をした。
そして、心の中で決意した。これ以上は見て見ぬふりをしてはいけない。玲央に問いたださなければならない。
その夜、寝室で玲央が本を読んでいるのを見て、私は勇気を出して話しかけた。
「玲央、桜子さんとの関係、何か隠していることがあるんじゃないの?」
玲央は本を置き、驚いたような表情を浮かべて私を見た。
「隠していることなんてないよ。君はどうしてそんな風に思うんだ?」
その言葉を聞いても、私の心はすっきりしなかった。桜子と玲央の関係に何かあるのだろうか?
「じゃあ、どうして桜子さんはそんなに近づいてくるの? 私はただの助手だって言ってたけど…」
玲央は少し黙ってから、深いため息をついた。
「桜子はただの仕事仲間だよ。でも、君が気にしていることは分かる。」
その言葉に、私はさらに疑念を強く抱くようになった。玲央が桜子にどれほど気を使っているのか、私には見えている。それでも、彼の言葉を信じたくて、私はまた何も言わずにその夜を過ごした。
そして、数日後のこと。桜子が玲央に近づく度に、私は何かが引っかかるような気がしてならなかった。
ある日、私は思い切って桜子に直接話してみることに決めた。
「桜子さん、ちょっと話があるんだけど。」
桜子は驚いたように私を見つめ、少し間を置いてから、微笑んだ。「何か、気になることでもありますか?」
その笑顔に、私はすこし気後れを感じたが、心を決めて続けた。
「最近、玲央とあなたがよく一緒にいるのを見かけることが増えたわ。私、ちょっと気になってるの。」
桜子は一瞬、表情を曇らせたが、すぐに冷静に答えた。
「そうですね。玲央さんと仕事をしていると、どうしても一緒にいる時間が長くなることが多くて。何か誤解を招くようなことがあったら、ごめんなさい。」
その言葉に、私はさらに深く疑念を抱いた。桜子は一見、冷静に見えて、どこかひっかかる。
その後も、彼女の振る舞いや言葉が、私の中で不安を増す一方だった。
だが、私はまだ、真実を確かめる勇気を持てずにいた。玲央と桜子の関係がどうであれ、私自身がどうすればいいのか、分からなかった。
しかし、心の中で少しずつ覚悟が芽生えていた。真実を知るためには、もっと踏み込まなければならないと。
その時、桜子がふと玲央に言った言葉が、私の心を凍りつかせた。
「玲央さん、あなたのこと、まだ私は忘れられないかもしれません。」
その言葉が、私の心に深く刺さった。
6
あなたにおすすめの小説
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く
紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?
【短編】ちゃんと好きになる前に、終わっただけ
月下花音
恋愛
曖昧な関係を続けていたユウトとの恋は、彼のインスタ投稿によって一方的に終わりを告げた。
泣くのも違う。怒るのも違う。
ただ静かに消えよう。
そう決意してトーク履歴を消そうとした瞬間、指が滑った。
画面に表示されたのは、間の抜けたクマのスタンプ。
相手に気付かれた? 見られた?
「未練ある」って思われる!?
恐怖でブロックボタンを連打した夜。
カモメのフンより、失恋より、最後の誤爆が一番のトラウマになった女子大生の叫び。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる