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しおりを挟むその声は、かつての優しさがどこかに消えてしまったように響いた。
「玲央……どうしてここに?」私は冷たく答えるしかなかった。
彼の姿を目の前にすると、あの日々が鮮明に蘇ってくる。
幸せだったはずのあの頃、彼の笑顔にすべてを捧げた私が、今ではこんなにも遠く感じてしまう。
玲央は少し躊躇いながらも、少しだけその距離を縮めた。目を合わせることなく、言葉を続けた。
「お前がどうしているのか気になって……」
その言葉に、私は心の中で深くため息をついた。彼がどうしてそんな言葉を口にできるのか。
あんなにも一緒に過ごしてきたのに、あの日、あの瞬間に何が変わったのか。それが分からない。
「気にしないで。もう、私はあなたのことを気にしていない。」
私は冷たく言い放った。
玲央はその言葉に痛みを感じたようで、目を閉じた。あの日の記憶がよみがえり、何もかもがまだ終わっていないような錯覚に襲われる。
「凛花……」
その名前を呼ぶ彼の声には、懐かしさと切なさが混じっている。だけど、それはもう私のものではない。
「あなたはもう私の知らない人。」
私の言葉が冷たい刃のように彼を突き刺すのを感じた。
彼は何も言わず、しばらく黙っていた。私の目を見つめながら、まるでこれから何かを言おうとするようだったが、結局、何も口にできなかった。
そのままの静寂が、私たちの間に広がる。
私はその場を立ち去ろうとしたが、玲央が何かを決意したように歩み寄った。
「待って、凛花。俺はまだ、お前を……」
その言葉に、胸の奥が痛くなる。
思い出したくもない過去が蘇ってきた。
もうあの頃になって戻りたくない。
あんなに辛かった日々には二度と戻りたくない。
だけど、心のどこかで玲央の声がまだ引っかかっている。
「今さら会いに来たりするのだろうか?」
その言葉が頭の中をぐるぐる回る。
桜子さんと上手くいっていないのだろうか?
でも、それは関係ない。
私はもう、あんな風に傷つきたくはない。
でも、どうしてこんなに気になるんだろう?
電話を切った後、ふと昔のことを思い出していた。彼と初めて出会った日、彼の笑顔がどれほど温かかったか。
あの頃の私は、まだ若くて、愛されることが当たり前だと思っていた。
でも、気づけばすべてが壊れていた。
過去を思い出したくもない。
でも、あの電話の後、どうしてもあの時の感情が蘇ってくる。
怒りと、悲しみと、そして……未だに消えないわずかな期待感。
もしかしたら、今でも玲央には何かが残っているのかもしれない、そんな気がしてならない。
でも、そんな自分が許せなかった。
これ以上は絶対に踏み込んではいけない。
そう思っても、心のどこかではまだ、彼を求めている自分がいることに気づいてしまう。
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