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後輩は主人公の同級生ですよね?
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「失礼しました…」
からからと転がるように鳴る扉を閉めて、溜息を吐いた。
原因は俺にある。
どうやら小テストの点数が芳しくないとのことだった。
『悩みがあるなら相談に乗るぞ?』
『いえ…すみません、大丈夫ですから』
先生、って…セーブポイントだっけ?
妙に顔の整った先生だなって思ったからだし、攻略対象かと思ったけど違かったな。
それよりも成績の問題だ…。
アルバート程ではないが、リオもそこそこ頭が良かったらしい。
小テストでは常に良い点数だったのが、がくっと下がった事で心配されてしまった。
記憶は記憶だ。
新しいものを入れれば、それは今までとは違う新しい記憶となって…。
リオの成績がどうなるか、という難題が俺自身に掛かっている。
要するに、過去問なら解けるがそこに新しい知識が入るとそれはリオの知識ではなく、俺の知識として蓄えられる為テストに答えられなかった…という事。
…俺あまり頭良くないんだよ。
自分で言ってて悲しくなってきた。
リオの知識が残ってる間は実技も何とかこなせる。
けれど此処で、さあ新しい魔法を覚えてください!って言われたら…出来る自信がない…。
元の体が基礎を覚えていてくれるのは有難い。多分レオンのおかげなのだろう。
はぁ、とまた溜息を零しながら扉から離れようと振り向いた。
「うわっ!!」
「!?」
振り向いた先には積み上がった段ボールの山。
俺はそんな近距離に対応出来る筈もなく、段ボールと衝突し、尻餅をついた。
「痛っ…っ」
「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか!?」
痛みに呻きながら、段ボールを持っていたであろう人物の声が聞こえたから、どんな奴だと思って目を開けると…。
「お怪我はありませんか?…二年生…ってことは、せ、先輩…!?あの、僕前見えてなくて…あの…!」
「待った、落ち着いて…、俺は大丈夫だから」
嘘だろ。
目の前に居るのは赤茶の髪にワインレッドの瞳の少年。ショートカットより少し長めの髪に、前髪を左で分けて少し右目が隠れている。
間違いない。
主人公の同級生、セシル・グラナードだ。
「本当にごめんなさい!あの…なんでもしますから、家には…」
「そんな切羽詰まる事じゃないから!ほら、怪我もしてないし!」
本当は少し手首を捻ったけど…黙っておこう。
「先輩…、ありがとうございます…!僕はセシル。グラナード男爵の息子です」
「こんな格好で悪いな。俺はリオ・ウィルアスだ」
「ウィルアス…、って、あ!ウィルアス先生の愛弟さん!」
なんだそれ、初めて聞いたぞ!?
「…兄が何か喋ってる…?」
「はい!毎日お話されています!魔法の上達がとても早く、成績も優秀と聞いております!流石殿下の婚約者ですねって一年生の間では有名ですよ」
俺は天を仰ぐ事しか出来なかった…。
レオンよ…。そんなにブラコンを発揮しなくてもいいんだぞ…。
あ、そんな事より、散らばってしまった書類を拾わないと。
俺は手首に気を付けながら書類をかき集め始めた。
それを見てようやく気付いたのか、セシルも書類を集め始め段ボールに戻していく。
一時無言の間があったが、俺は思い切って聞いてみる事にした。
「あのさ…、えっと、セシル…って呼んでいい?」
「あ、はい!全然!むしろありがとうございます…男爵家の自分の名前を覚えて頂けて嬉しいです」
「名前くらい覚えるさ。じゃあ、セシルで。セシルのクラスにさ…ヒースカラーの髪の子って居る?」
「え…、何人か似た髪の色の人なら居ますが…」
なるほど、ヒースカラーはありふれているのか。珍しい髪色…って程でもないからな。
明るい色ではないから、カラーリングが好きな人なら、多分現代でもブリーチ無しで再現可能だろうし。
…と、すれば残りの特徴は一つ。
「その中に、コスモス…薄いピンク色の瞳の子は居る?」
俺は手を止めずに、何となしに聞いてみる。
けれど手は震えていた。
これは、どういう意味の震え…?
「ピンク…あ、居ますよ。一人珍しい瞳の色をしていたので知っています。彼も僕と同じで 男爵家の長男だそうです」
当たりだ。
確信した、主人公は確かに存在している事を。
…だとしたら、どうして話が進まないんだ?
ユーリは幼馴染のその子に会いに行かない。
レオンからはそんな子の話は聞いた事がない。
そして…、アルバートはその子の存在自体まだ知らない。
こんな無い無い尽くし、有り得るのか?
「…、うん、ありがとうセシル。それと…段ボールの中身、これで全部だよね?」
「はい!ありがとうございます、リオ様!」
「リオ様はちょっと…」
慣れないかな。
貴族は縦社会って知ってるけど、俺中身は一般庶民だし、やっぱり様付けとかそういうのは慣れない。
「え…。…それでは、リオ先輩…とお呼びしてもよろしいですか?」
「寧ろそっちの方がいい!」
「…!ありがとうございます、リオ先輩!」
眩しいほどの笑顔に俺はまた尻餅を付きそうになった。
そうだ…、セシルは童顔で、BLなのに何故か主人公と結ばれると百合カップルと一部では言われていた。
今ならその気持ち、分かる…可愛い!守りたくなるこの笑顔!
「先輩、今日は本当にごめんなさい。言わないけど、手首…捻ってますよね…?なるべく使わないように避けてるから…。痛み止めとテーピングをしてもらいに保健室行きましょう?」
「これくらい大した事ないよ…」
「いえ!もしこれで放置したせいで腫れたりして大事になったら…。……ウィルアス先生に殺されます……」
あ、そっち。
確かに、レオンが知ったら怒るだろうな…。
弁明は考えておこう。
「それと、僕からお誘いするのは失礼かもしれませんが、お詫びに何かさせてください。いえ、僕がしたいんです!」
「へ?…ああ…、セシルがそう言うなら…今度茶でも奢って欲しいかな?」
「…はい!もちろんです!先輩のお好きなカフェにでもどうですか?食堂のでは味気ないですし」
……、あれ?
俺セシルとも仲良くなろうとしてないか、これ?
でも無下に断れないし…。
セシルも、善意で言ってるし、これはノーカン…だよな?
「じゃあ、今度セシルの予定が空いてる日にでもどこか行くか」
「僕の予定なんてありませんよ、先輩の空いてる日で構いません!」
(好感度)
あまり出すのは宜しくないと思いつつも、何か引っ掛かり思わず好感度のコマンドを浮かべた。
…、やっぱり、上がってる…。
好感度が見える事。
攻略対象と出逢ってしまう事。
そして…上がっていく好感度のレベル。
主人公は確かに居るはずなのに、何で俺にまでその機能があるんだ。
…、…ん?婚約者…?
からからと転がるように鳴る扉を閉めて、溜息を吐いた。
原因は俺にある。
どうやら小テストの点数が芳しくないとのことだった。
『悩みがあるなら相談に乗るぞ?』
『いえ…すみません、大丈夫ですから』
先生、って…セーブポイントだっけ?
妙に顔の整った先生だなって思ったからだし、攻略対象かと思ったけど違かったな。
それよりも成績の問題だ…。
アルバート程ではないが、リオもそこそこ頭が良かったらしい。
小テストでは常に良い点数だったのが、がくっと下がった事で心配されてしまった。
記憶は記憶だ。
新しいものを入れれば、それは今までとは違う新しい記憶となって…。
リオの成績がどうなるか、という難題が俺自身に掛かっている。
要するに、過去問なら解けるがそこに新しい知識が入るとそれはリオの知識ではなく、俺の知識として蓄えられる為テストに答えられなかった…という事。
…俺あまり頭良くないんだよ。
自分で言ってて悲しくなってきた。
リオの知識が残ってる間は実技も何とかこなせる。
けれど此処で、さあ新しい魔法を覚えてください!って言われたら…出来る自信がない…。
元の体が基礎を覚えていてくれるのは有難い。多分レオンのおかげなのだろう。
はぁ、とまた溜息を零しながら扉から離れようと振り向いた。
「うわっ!!」
「!?」
振り向いた先には積み上がった段ボールの山。
俺はそんな近距離に対応出来る筈もなく、段ボールと衝突し、尻餅をついた。
「痛っ…っ」
「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか!?」
痛みに呻きながら、段ボールを持っていたであろう人物の声が聞こえたから、どんな奴だと思って目を開けると…。
「お怪我はありませんか?…二年生…ってことは、せ、先輩…!?あの、僕前見えてなくて…あの…!」
「待った、落ち着いて…、俺は大丈夫だから」
嘘だろ。
目の前に居るのは赤茶の髪にワインレッドの瞳の少年。ショートカットより少し長めの髪に、前髪を左で分けて少し右目が隠れている。
間違いない。
主人公の同級生、セシル・グラナードだ。
「本当にごめんなさい!あの…なんでもしますから、家には…」
「そんな切羽詰まる事じゃないから!ほら、怪我もしてないし!」
本当は少し手首を捻ったけど…黙っておこう。
「先輩…、ありがとうございます…!僕はセシル。グラナード男爵の息子です」
「こんな格好で悪いな。俺はリオ・ウィルアスだ」
「ウィルアス…、って、あ!ウィルアス先生の愛弟さん!」
なんだそれ、初めて聞いたぞ!?
「…兄が何か喋ってる…?」
「はい!毎日お話されています!魔法の上達がとても早く、成績も優秀と聞いております!流石殿下の婚約者ですねって一年生の間では有名ですよ」
俺は天を仰ぐ事しか出来なかった…。
レオンよ…。そんなにブラコンを発揮しなくてもいいんだぞ…。
あ、そんな事より、散らばってしまった書類を拾わないと。
俺は手首に気を付けながら書類をかき集め始めた。
それを見てようやく気付いたのか、セシルも書類を集め始め段ボールに戻していく。
一時無言の間があったが、俺は思い切って聞いてみる事にした。
「あのさ…、えっと、セシル…って呼んでいい?」
「あ、はい!全然!むしろありがとうございます…男爵家の自分の名前を覚えて頂けて嬉しいです」
「名前くらい覚えるさ。じゃあ、セシルで。セシルのクラスにさ…ヒースカラーの髪の子って居る?」
「え…、何人か似た髪の色の人なら居ますが…」
なるほど、ヒースカラーはありふれているのか。珍しい髪色…って程でもないからな。
明るい色ではないから、カラーリングが好きな人なら、多分現代でもブリーチ無しで再現可能だろうし。
…と、すれば残りの特徴は一つ。
「その中に、コスモス…薄いピンク色の瞳の子は居る?」
俺は手を止めずに、何となしに聞いてみる。
けれど手は震えていた。
これは、どういう意味の震え…?
「ピンク…あ、居ますよ。一人珍しい瞳の色をしていたので知っています。彼も僕と同じで 男爵家の長男だそうです」
当たりだ。
確信した、主人公は確かに存在している事を。
…だとしたら、どうして話が進まないんだ?
ユーリは幼馴染のその子に会いに行かない。
レオンからはそんな子の話は聞いた事がない。
そして…、アルバートはその子の存在自体まだ知らない。
こんな無い無い尽くし、有り得るのか?
「…、うん、ありがとうセシル。それと…段ボールの中身、これで全部だよね?」
「はい!ありがとうございます、リオ様!」
「リオ様はちょっと…」
慣れないかな。
貴族は縦社会って知ってるけど、俺中身は一般庶民だし、やっぱり様付けとかそういうのは慣れない。
「え…。…それでは、リオ先輩…とお呼びしてもよろしいですか?」
「寧ろそっちの方がいい!」
「…!ありがとうございます、リオ先輩!」
眩しいほどの笑顔に俺はまた尻餅を付きそうになった。
そうだ…、セシルは童顔で、BLなのに何故か主人公と結ばれると百合カップルと一部では言われていた。
今ならその気持ち、分かる…可愛い!守りたくなるこの笑顔!
「先輩、今日は本当にごめんなさい。言わないけど、手首…捻ってますよね…?なるべく使わないように避けてるから…。痛み止めとテーピングをしてもらいに保健室行きましょう?」
「これくらい大した事ないよ…」
「いえ!もしこれで放置したせいで腫れたりして大事になったら…。……ウィルアス先生に殺されます……」
あ、そっち。
確かに、レオンが知ったら怒るだろうな…。
弁明は考えておこう。
「それと、僕からお誘いするのは失礼かもしれませんが、お詫びに何かさせてください。いえ、僕がしたいんです!」
「へ?…ああ…、セシルがそう言うなら…今度茶でも奢って欲しいかな?」
「…はい!もちろんです!先輩のお好きなカフェにでもどうですか?食堂のでは味気ないですし」
……、あれ?
俺セシルとも仲良くなろうとしてないか、これ?
でも無下に断れないし…。
セシルも、善意で言ってるし、これはノーカン…だよな?
「じゃあ、今度セシルの予定が空いてる日にでもどこか行くか」
「僕の予定なんてありませんよ、先輩の空いてる日で構いません!」
(好感度)
あまり出すのは宜しくないと思いつつも、何か引っ掛かり思わず好感度のコマンドを浮かべた。
…、やっぱり、上がってる…。
好感度が見える事。
攻略対象と出逢ってしまう事。
そして…上がっていく好感度のレベル。
主人公は確かに居るはずなのに、何で俺にまでその機能があるんだ。
…、…ん?婚約者…?
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