12 / 65
十二.生贄娘、薬草茶を作る
しおりを挟む
香世は摘んできた薬草を水で洗って、竹で作られた籠に干す。
(上手く出来ますように)
作り方は覚えているが、それでもそう思わずにはいられなかった。
香世も、ただ懐かしいからというだけで薬草茶を作ってみようと考えたわけではない。
父の薬草茶には、解毒作用があると聞いていた。
詳しい事情はわからないが、白麗は体の不調を抱えているらしい。
だったら、自分が出来る事で、ここまで良くしてもらった恩を返すことができたならと思ったのだ。
効果があるかわからないから、詳しい話は手伝ってくれている楓と桜にも話していない。
(自己満足で終わるかも知れないけれど、それでも)
父の薬草茶が白麗に良い効果をもたらすようにと願わずにはいられなかった。
それから数日で香世の薬草茶は完成した。
楓と桜に頼んだ味見の反応も悪くなく、お茶の時間になると香世は薬草茶を淹れ白麗の元へと向かった。
「今日は変わった茶だな」
白い陶器の底が透ける薄黄色の飲み物に、白麗はしきりと匂いを嗅ぐ。
ちなみに白麗は犬の姿ではあるが、本物の犬ではないので食事に制限はないと聞いている。でなければ、お茶も飲めないだろう。
ただ、熱には敏感なようで、熱い物は苦手なようだ。
「父が教えてくれた薬草茶です。お庭の薬草を分けていただいて、作りました」
「楓と桜が、楽しみがあるといっていたのはこれか。ドクダミが入っていると聞いたが、全然あのにおいはしないな」
「ふふ、楓さんも桜さんも同じように言われていました」
眷属だから、反応も似るのだろうか。
微笑ましいが、白麗は気まずげに咳払いして話題を変えた。
「香世の父君は薬師だったのか?」
「はい。もとは旅をしながら薬草を摘んで薬を作って村を回っていたそうですが、母が私を妊娠したのを機にあの村に腰を落ち着けたと聞いています」
「では、香世も何か薬を作るのか?」
「いえ。教えてもらうつもりだったのですが、その前に両親は亡くなってしまって。このお茶と簡単な傷薬だけしか作れません」
「そうだったのか……。悪いことを聞いたな。苦労したのではないか?」
白麗の尻尾は香世を案じているのかしおしおと垂れており、香世は慌てて首を振る。
「傷薬しか作れなくても、村の人は何かと気に掛けてくださって困ることはありませんでした。それに、父に少しだけでも教えてもらっていたおかげで、白麗様にこのお茶を飲んで頂けます」
「そうか」
緩やかに白麗の黒い尾が振られ、優しい声で頷かれて、香世はどこか気恥ずかしい気分で手元のお茶に視線を落とした。
「そろそろお茶もよい温度だと思います。どうぞお召し上がりください」
「いただこう」
白麗は飲みやすいよう香世が差し出した茶器に鼻を近づけ、もう一度匂いを嗅いだ後、ぺろりと舌を出し器用にお茶を飲む。
「ほう。飲みやすいな。美味い。気に入った」
「嬉しいです」
楓と桜も気に入ってくれたが、白麗に言われるとより嬉しい。
「世辞ではないぞ。明日もこの時間には香世の薬草茶が飲みたい」
「えっ、そんな……。本当によろしいのですか?」
白麗が口にする物は、きっと全て一級の素材を使った品だろうに。
「花嫁殿の思い出の味だ。共に味わいたいのだ」
白麗の言葉に、香世は胸があたたまる思いがした。
(上手く出来ますように)
作り方は覚えているが、それでもそう思わずにはいられなかった。
香世も、ただ懐かしいからというだけで薬草茶を作ってみようと考えたわけではない。
父の薬草茶には、解毒作用があると聞いていた。
詳しい事情はわからないが、白麗は体の不調を抱えているらしい。
だったら、自分が出来る事で、ここまで良くしてもらった恩を返すことができたならと思ったのだ。
効果があるかわからないから、詳しい話は手伝ってくれている楓と桜にも話していない。
(自己満足で終わるかも知れないけれど、それでも)
父の薬草茶が白麗に良い効果をもたらすようにと願わずにはいられなかった。
それから数日で香世の薬草茶は完成した。
楓と桜に頼んだ味見の反応も悪くなく、お茶の時間になると香世は薬草茶を淹れ白麗の元へと向かった。
「今日は変わった茶だな」
白い陶器の底が透ける薄黄色の飲み物に、白麗はしきりと匂いを嗅ぐ。
ちなみに白麗は犬の姿ではあるが、本物の犬ではないので食事に制限はないと聞いている。でなければ、お茶も飲めないだろう。
ただ、熱には敏感なようで、熱い物は苦手なようだ。
「父が教えてくれた薬草茶です。お庭の薬草を分けていただいて、作りました」
「楓と桜が、楽しみがあるといっていたのはこれか。ドクダミが入っていると聞いたが、全然あのにおいはしないな」
「ふふ、楓さんも桜さんも同じように言われていました」
眷属だから、反応も似るのだろうか。
微笑ましいが、白麗は気まずげに咳払いして話題を変えた。
「香世の父君は薬師だったのか?」
「はい。もとは旅をしながら薬草を摘んで薬を作って村を回っていたそうですが、母が私を妊娠したのを機にあの村に腰を落ち着けたと聞いています」
「では、香世も何か薬を作るのか?」
「いえ。教えてもらうつもりだったのですが、その前に両親は亡くなってしまって。このお茶と簡単な傷薬だけしか作れません」
「そうだったのか……。悪いことを聞いたな。苦労したのではないか?」
白麗の尻尾は香世を案じているのかしおしおと垂れており、香世は慌てて首を振る。
「傷薬しか作れなくても、村の人は何かと気に掛けてくださって困ることはありませんでした。それに、父に少しだけでも教えてもらっていたおかげで、白麗様にこのお茶を飲んで頂けます」
「そうか」
緩やかに白麗の黒い尾が振られ、優しい声で頷かれて、香世はどこか気恥ずかしい気分で手元のお茶に視線を落とした。
「そろそろお茶もよい温度だと思います。どうぞお召し上がりください」
「いただこう」
白麗は飲みやすいよう香世が差し出した茶器に鼻を近づけ、もう一度匂いを嗅いだ後、ぺろりと舌を出し器用にお茶を飲む。
「ほう。飲みやすいな。美味い。気に入った」
「嬉しいです」
楓と桜も気に入ってくれたが、白麗に言われるとより嬉しい。
「世辞ではないぞ。明日もこの時間には香世の薬草茶が飲みたい」
「えっ、そんな……。本当によろしいのですか?」
白麗が口にする物は、きっと全て一級の素材を使った品だろうに。
「花嫁殿の思い出の味だ。共に味わいたいのだ」
白麗の言葉に、香世は胸があたたまる思いがした。
20
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる