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26.星空ワークショップのお誘い
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その日は帰ってすぐ、宿題を終わらせてお母さんが帰ってくるのを待った。
楽しみにさせて行けないと申し訳ないからハムアキラに天体観測のチラシを見せるのは、お母さんとお父さんの許可が下りてからだ。
結果は、その日がゴールデンウィーク入ってすぐの土曜日ということもあって問題なく許可が貰えた。でも「理科のテスト、これで点数が上がるかしら」なんて言われちゃったから、これから頑張らないといけないよね。送迎はお父さんがしてくれることに決まって、夕飯の後、部屋に戻った。
「ハムアキラ! 重大なお知らせです」
「心晴、どうしたのじゃ?」
この間借りてきた本を読んでいたハムアキラが顔を上げた。
「来週の土曜日、天体観測に行くことに決まりました!」
ハムアキラはきょとんと首を傾ける。
「わしも行けるのか?」
「ハムアキラも一緒だよ! 颯真君が誘ってくれたの」
「やったなのじゃ!」
チラシを取り出して、ハムアキラに見せる。
「ほう、まずは座学で星座について学んでから、実際に外に出て探すのじゃな」
ワークショップは二部構成になっていて、前半四十五分で春の星座の見つけ方の講座、休憩を挟んだ後、外に出て三十分間実際の星空の観察となっている。
チラシを一通り読んだハムアキラが顔を上げる。
「わしの時代の星の読み方とは違うじゃろうが、星の動きを学ぶのは陰陽師にとって極め得て大事なことなのじゃ。流石わしの子孫達じゃ」
「そうかな?」
もしかして、そう思って颯真君は私を誘ってくれたのかな。
「星の読み方を覚えれば、心晴も陰陽師に一歩近づくのじゃ」
ハムアキラは嬉し気に言う。
「楽しみだね」
「その日は晴れるよう、祈祷しておくのじゃ」
「私もてるてる坊主作ろうっと」
そうして、あっという間にワークショップの日になった。
当日は、お母さんが夕ご飯を早めに作ってくれて、お父さんと一緒に公民館まで歩いた。
「晴れてよかったな」
「うん」
「学校はどうだ? 馴染めてるか?」
「大丈夫。友達もできたし、今日も友達に誘ってもらったんだよ」
「そっか」
少し話すと、お父さんは黙ってしまった。こうして歩くのは久しぶりだ。
「じゃ、帰りも迎えに来るから、気を付けて楽しんでくるんだよ」
「うん、お父さん、ありがとう」
お父さんに手を振って、ワークショップが開かれる部屋へと入る。
入り口の側、部屋の後ろに腕章を巻いた人がいて、出欠を取っていた。
「こんばんは。ワークショップにご参加ですか?」
「はい」
予約はお母さんがしてくれているから、名前を言う。
「では、お名前の隣の欄に丸を付けてください」
言われた通りに丸を付けて、部屋の中を見渡した。
「好きなところにおかけください」
まだ始まるまで十分以上あるけど、ちらほらと席は埋まっている。
前の方には白いスクリーンがあって、隣でノートパソコンを操作している人がいるけど、あれはもしかして颯真君のお父さんかな。顔を俯けていて、よく見えない。
「あ、もう来たんだ。こっちだよ!」
前の席に座っていた人が後ろを向いたと思ったら、颯真君だった。
「颯真君。もう来てたんだ」
「うん、準備を手伝ったんだ」
「一緒に座っていいの?」
「隣、空いてるし、どうぞ」
話していたところで、颯真君のお父さんが顔を上げた。
パソコンから手を放して、私達の方にやってくる。
「こんばんは。よく来てくれたね。君が颯真のお友達かい?」
「こんばんは。はい。同じクラスの藤崎心晴です」
「颯真の父だよ。今日は楽しんでいってね。わからないことがあったら、颯真も詳しいから、聞いてみるといい」
「はい! わかりました!」
話に区切りがついたところで、颯真君が言う。
「父さん、準備はいいの?」
「もう戻るよ。それじゃ、颯真も心晴ちゃんも、またあとで」
颯真君と並ぶと、雰囲気が似ている。
大学の教授をしていると聞いていたからか、友達のお父さんっていうより、先生って感じの雰囲気だった。
楽しみにさせて行けないと申し訳ないからハムアキラに天体観測のチラシを見せるのは、お母さんとお父さんの許可が下りてからだ。
結果は、その日がゴールデンウィーク入ってすぐの土曜日ということもあって問題なく許可が貰えた。でも「理科のテスト、これで点数が上がるかしら」なんて言われちゃったから、これから頑張らないといけないよね。送迎はお父さんがしてくれることに決まって、夕飯の後、部屋に戻った。
「ハムアキラ! 重大なお知らせです」
「心晴、どうしたのじゃ?」
この間借りてきた本を読んでいたハムアキラが顔を上げた。
「来週の土曜日、天体観測に行くことに決まりました!」
ハムアキラはきょとんと首を傾ける。
「わしも行けるのか?」
「ハムアキラも一緒だよ! 颯真君が誘ってくれたの」
「やったなのじゃ!」
チラシを取り出して、ハムアキラに見せる。
「ほう、まずは座学で星座について学んでから、実際に外に出て探すのじゃな」
ワークショップは二部構成になっていて、前半四十五分で春の星座の見つけ方の講座、休憩を挟んだ後、外に出て三十分間実際の星空の観察となっている。
チラシを一通り読んだハムアキラが顔を上げる。
「わしの時代の星の読み方とは違うじゃろうが、星の動きを学ぶのは陰陽師にとって極め得て大事なことなのじゃ。流石わしの子孫達じゃ」
「そうかな?」
もしかして、そう思って颯真君は私を誘ってくれたのかな。
「星の読み方を覚えれば、心晴も陰陽師に一歩近づくのじゃ」
ハムアキラは嬉し気に言う。
「楽しみだね」
「その日は晴れるよう、祈祷しておくのじゃ」
「私もてるてる坊主作ろうっと」
そうして、あっという間にワークショップの日になった。
当日は、お母さんが夕ご飯を早めに作ってくれて、お父さんと一緒に公民館まで歩いた。
「晴れてよかったな」
「うん」
「学校はどうだ? 馴染めてるか?」
「大丈夫。友達もできたし、今日も友達に誘ってもらったんだよ」
「そっか」
少し話すと、お父さんは黙ってしまった。こうして歩くのは久しぶりだ。
「じゃ、帰りも迎えに来るから、気を付けて楽しんでくるんだよ」
「うん、お父さん、ありがとう」
お父さんに手を振って、ワークショップが開かれる部屋へと入る。
入り口の側、部屋の後ろに腕章を巻いた人がいて、出欠を取っていた。
「こんばんは。ワークショップにご参加ですか?」
「はい」
予約はお母さんがしてくれているから、名前を言う。
「では、お名前の隣の欄に丸を付けてください」
言われた通りに丸を付けて、部屋の中を見渡した。
「好きなところにおかけください」
まだ始まるまで十分以上あるけど、ちらほらと席は埋まっている。
前の方には白いスクリーンがあって、隣でノートパソコンを操作している人がいるけど、あれはもしかして颯真君のお父さんかな。顔を俯けていて、よく見えない。
「あ、もう来たんだ。こっちだよ!」
前の席に座っていた人が後ろを向いたと思ったら、颯真君だった。
「颯真君。もう来てたんだ」
「うん、準備を手伝ったんだ」
「一緒に座っていいの?」
「隣、空いてるし、どうぞ」
話していたところで、颯真君のお父さんが顔を上げた。
パソコンから手を放して、私達の方にやってくる。
「こんばんは。よく来てくれたね。君が颯真のお友達かい?」
「こんばんは。はい。同じクラスの藤崎心晴です」
「颯真の父だよ。今日は楽しんでいってね。わからないことがあったら、颯真も詳しいから、聞いてみるといい」
「はい! わかりました!」
話に区切りがついたところで、颯真君が言う。
「父さん、準備はいいの?」
「もう戻るよ。それじゃ、颯真も心晴ちゃんも、またあとで」
颯真君と並ぶと、雰囲気が似ている。
大学の教授をしていると聞いていたからか、友達のお父さんっていうより、先生って感じの雰囲気だった。
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