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22.ハムアキラと土御門君の和解
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「ふぅ、食べきったのじゃ。次は、あちらがよいな」
ハムアキラは大好きなポテチを食べきると、次のお菓子を所望した。今度はお煎餅がいいようだ。
「その、藤崎さんは、さっきの人がハムスターになって、変だと思わないの?」
私がハムアキラと普通に話しているのを見て、土御門君に戸惑ったように聞かれた。
「うーん?」
ちょっと考えてみたけど、違和感はない。
「ハムアキラとはハムスターの人形の姿の方と先に会ったから、むしろ人型の方が違和感あったかも」
土御門君は信じられないというように私を見る。
「初対面のしゃべる人形をよく信じられるね……」
「頭の固いおぬしと違って、心晴は考え方が柔軟なのじゃ」
「そういう問題ではないと思うけど……」
ハムアキラが自分のことのように自慢げに言う。
「では、先程の悪霊を祓ったのじゃから、おぬしもひとまずわしの話を聞くということでよいかの?」
「……そうですね。話だけは聞きましょう」
そして、ハムアキラは話を始めた。
「まず、わしの名じゃが、正真正銘、安倍晴明じゃ」
「確かにあなたの『破邪の法』は、僕の家で使われているものでした。あれを使いこなせるのは、僕の一族の者だけと聞いています」
土御門君の言葉に驚く。まさか、それで話だけでも聞こうと思ったのかな。
「それにあの『破邪の法』は、あり得ないほど威力が高かった」
「そうなの?」
「うん。あんなに悪霊を取り込んで大きくなってしまってたら、一体ずつ引き剥がして除霊していくしか無いんだ。それを一度に送ってしまうなんて。だから、あなたが安倍晴明と言うのなら、そうかもしれません。ですが、あなたが本当に晴明様だとして、どうして藤崎さんの所に現れたんですか?」
土御門君は、もうハムアキラのことは疑ってはいないみたいだ。なのになぜか、その表情は危うげな程に張り詰めていた。
ハムアキラもそう思うのか、困ったように後ろ足で耳の後ろを搔いて話し出した。
「わしが死んだ後、こうして魂が残ったので、子孫を見守っておる。そして、その時々で一番未来が不安定だった者を特に意識して見守るようにしておるのじゃ。数十年前は、それが心晴の母であった」
「え⁉」
驚いてハムアキラを見ると、頷いている。
「じゃが、見守った後、少し力を使いすぎて眠ってしまったのじゃ。そこを、心晴が見つけたというわけじゃ」
「なら、晴明様が僕達のことを見放して、藤崎さんの方に行ったって訳ではないんですか……?」
「もちろん、お主達のことも案じておるし、時々様子を見に行っておるよ」
「そう、なんですね」
ハムアキラの言葉に、土御門君は落ち着いたようだ。
「え、どういうこと?」
意味がわからない私に、土御門君が説明する。
「土御門家は、安倍晴明様の子孫なんだ。そして、陰陽師の仕事を引き継いでいる」
「えぇ⁉ そうだったの?」
それで、突然現れた人が自分のご先祖様でもある安倍晴明を名乗って、あんなに怒ったんだ。
「うむ。そうじゃ。二人とも我が子孫じゃ」
ハムアキラが頷くと、驚いて土御門君と顔を見合わせる。
「あ、そっか」
「そうなるんだね」
「二人とも、血が分かれてから長き月日が経っておるから、もう他人といってもいい位の間柄じゃが、わしの子孫であるということは間違いない」
「そうなんだ」
土御門君の敵意が薄れたところで、ハムアキラが言う。
「では、そろそろわしも、お主の名を呼んでも良いじゃろうか?」
「え、あ、はい。もちろんです」
なぜか途端に畏まった土御門君に、ハムアキラはうむと頷く。
「うむ。颯真。これからよろしくなのじゃ」
「はい! 晴明様」
ひとまず、土御門君の疑いは晴れたみたい。
「ところで、『破邪の法』って何?」
私は空気を読んで、質問を控えていた質問を投げた。
ハムアキラは大好きなポテチを食べきると、次のお菓子を所望した。今度はお煎餅がいいようだ。
「その、藤崎さんは、さっきの人がハムスターになって、変だと思わないの?」
私がハムアキラと普通に話しているのを見て、土御門君に戸惑ったように聞かれた。
「うーん?」
ちょっと考えてみたけど、違和感はない。
「ハムアキラとはハムスターの人形の姿の方と先に会ったから、むしろ人型の方が違和感あったかも」
土御門君は信じられないというように私を見る。
「初対面のしゃべる人形をよく信じられるね……」
「頭の固いおぬしと違って、心晴は考え方が柔軟なのじゃ」
「そういう問題ではないと思うけど……」
ハムアキラが自分のことのように自慢げに言う。
「では、先程の悪霊を祓ったのじゃから、おぬしもひとまずわしの話を聞くということでよいかの?」
「……そうですね。話だけは聞きましょう」
そして、ハムアキラは話を始めた。
「まず、わしの名じゃが、正真正銘、安倍晴明じゃ」
「確かにあなたの『破邪の法』は、僕の家で使われているものでした。あれを使いこなせるのは、僕の一族の者だけと聞いています」
土御門君の言葉に驚く。まさか、それで話だけでも聞こうと思ったのかな。
「それにあの『破邪の法』は、あり得ないほど威力が高かった」
「そうなの?」
「うん。あんなに悪霊を取り込んで大きくなってしまってたら、一体ずつ引き剥がして除霊していくしか無いんだ。それを一度に送ってしまうなんて。だから、あなたが安倍晴明と言うのなら、そうかもしれません。ですが、あなたが本当に晴明様だとして、どうして藤崎さんの所に現れたんですか?」
土御門君は、もうハムアキラのことは疑ってはいないみたいだ。なのになぜか、その表情は危うげな程に張り詰めていた。
ハムアキラもそう思うのか、困ったように後ろ足で耳の後ろを搔いて話し出した。
「わしが死んだ後、こうして魂が残ったので、子孫を見守っておる。そして、その時々で一番未来が不安定だった者を特に意識して見守るようにしておるのじゃ。数十年前は、それが心晴の母であった」
「え⁉」
驚いてハムアキラを見ると、頷いている。
「じゃが、見守った後、少し力を使いすぎて眠ってしまったのじゃ。そこを、心晴が見つけたというわけじゃ」
「なら、晴明様が僕達のことを見放して、藤崎さんの方に行ったって訳ではないんですか……?」
「もちろん、お主達のことも案じておるし、時々様子を見に行っておるよ」
「そう、なんですね」
ハムアキラの言葉に、土御門君は落ち着いたようだ。
「え、どういうこと?」
意味がわからない私に、土御門君が説明する。
「土御門家は、安倍晴明様の子孫なんだ。そして、陰陽師の仕事を引き継いでいる」
「えぇ⁉ そうだったの?」
それで、突然現れた人が自分のご先祖様でもある安倍晴明を名乗って、あんなに怒ったんだ。
「うむ。そうじゃ。二人とも我が子孫じゃ」
ハムアキラが頷くと、驚いて土御門君と顔を見合わせる。
「あ、そっか」
「そうなるんだね」
「二人とも、血が分かれてから長き月日が経っておるから、もう他人といってもいい位の間柄じゃが、わしの子孫であるということは間違いない」
「そうなんだ」
土御門君の敵意が薄れたところで、ハムアキラが言う。
「では、そろそろわしも、お主の名を呼んでも良いじゃろうか?」
「え、あ、はい。もちろんです」
なぜか途端に畏まった土御門君に、ハムアキラはうむと頷く。
「うむ。颯真。これからよろしくなのじゃ」
「はい! 晴明様」
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