心晴と手乗り陰陽師

乙原ゆん

文字の大きさ
上 下
18 / 35

18.ハムアキラ、変身する

しおりを挟む
 クラスメイトの反応は半々だ。応援してるねと好意的に言ってくれる人もいれば、興味ないとばかりに関心を示さない人もいる。占って欲しいという人も、土御門君を占ってからでいいよと、様子見の姿勢だ。
 その位で済んでいるのは、ハムアキラが土御門君の提案を受けてくれたからだろう。ありがたいけど、ハムアキラには占いとか色々して貰ってばっかりな気がする。
 私はハムアキラに何を返せるのかな?
 お菓子はお母さやお父さんが買ってくれている物だし、私もハムアキラに何かしてあげたい。
 そわそわしている間に、その一週間はあっという間に過ぎてしまった。

 土曜日。お昼ご飯を食べた後に、家を出た。
「さて、では行くかの」
 ハムアキラをポシェットに入れ、お菓子を持って公園の図書館に向かう。お菓子は学校の友達の家に遊びに行くことになったと言ったらお母さんが大張り切りで持たせてくれたものだ。
「さて、ではこの辺りでよかろう」
 図書館の手前、公園の人目につかない木の影でハムアキラを下ろす。すると、何やらちょこちょこ動いていたかと思うと、パンっと手を鳴らして、くるりと回った。次の瞬間、そこにいたのは神社の神主さんが着ているような服を着た男の人だった。じっと見ると、なんだか誰かに似ている気がする。
「だ、誰⁉」
 思わず声を上げると、男の人は驚いたように声を上げた。
「わしじゃわし、さっきまでここにおったじゃろう」
「えええー⁉ ハムアキラ⁉」
 声は確かにハムアキラの物だけど、本当に?  
「人間じゃと言ったろう」
「だって、いつもハムスターだったじゃん」
「この姿はとにかくお腹が空くのじゃ」
「そうなんだ」
「ハムアキラと呼んでいいのじゃぞ? わしも気に入っておる」
「うん。じゃ、そう呼ぶ」
 最初は、嫌がってなかったっけ?
 そう思うけど、人間の姿のハムアキラに慣れなくて、ついぶっきらぼうな返事をしてしまった。気まずくて、話題を変える。
「その服はなんて言うの?」
束帯そくたいという。今日は陰陽師としての仕事になるからの。きっちり正装してみたのじゃ」
「束帯? 正装?」
「心晴にわかりやすく言うなら、陰陽師の制服のようなものかの」
「そうなんだ」
 確かに、ハムスターより人間の姿の方が紹介しやすいけど、気合入りすぎじゃないかな?
「では心晴、案内を頼むのじゃ」
「わかった! こっちだよ!」
 促されて、私はハムアキラと共に図書館の入り口へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

シャルル・ド・ラングとピエールのおはなし

ねこうさぎしゃ
児童書・童話
ノルウェジアン・フォレスト・キャットのシャルル・ド・ラングはちょっと変わった猫です。人間のように二本足で歩き、タキシードを着てシルクハットを被り、猫目石のついたステッキまで持っています。 以前シャルル・ド・ラングが住んでいた世界では、動物たちはみな、二本足で立ち歩くのが普通なのでしたが……。 不思議な力で出会った者を助ける謎の猫、シャルル・ド・ラングのお話です。

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。童話パロディ短編集

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

化け猫ミッケと黒い天使

ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。 そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。 彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。 次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。 そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

地獄の鬼の子

つなざきえいじ
児童書・童話
地獄の鬼の仕事は、罪人を懲らしめる事。 では、地獄の鬼の子供は? ※小説家になろうの方にも投稿してます。

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

処理中です...