心晴と手乗り陰陽師

乙原ゆん

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15.ハムアキラ、慰める

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 もやもやした気持ちを抱えながら、午後を過ごした。
 学校が終わると、ランドセルを掴んで家に走る。
 でも、マンションが近づくにつれて足が鈍った。
 お菓子が好きで優しいハムアキラが悪霊なんてそんなわけないのに、土御門君に言われ放しでちゃんと反論できなかった。私、友達失格かも。
「ただいま……」
「おかえりなのじゃ」
 マンションに帰ると、いつも通りのハムアキラが迎えてくれる。
「元気がないな。体調が悪いのか?」
「ううん」
「では、学校で何かあったのか?」
 心配げに見上げてくるハムアキラを手に乗せて、ぬいぐるみの柔らかな布地に頬刷りする。
「くすぐったいのじゃ」
 そう言いながらもハムアキラは逃げなかった。
「友達と喧嘩でもしたのか?」
「喧嘩はしてない」
「そうか」
 それ以上ハムアキラは何も言わず、小さな手で私の頬を撫でてくれた。

 しばらくして気持ちが落ち着いてくると、私はハムアキラを机の上に戻した。
「もうよいのか?」
「うん。ハムアキラ、ありがとう。落ち着いたよ」
「ならよかったのじゃ」
 ハムアキラはほっとした表情を浮かべると、カシカシと小さな手で自分の顔を洗っている。
「照れてる?」
「そんなわけないのじゃ」
 ハムアキラはふんすと頬を膨らしている。そんなハムアキラに思わず笑っていた。
「おやつ、食べよっか」
 途端にハムアキラは顔を輝かせた。
「昨日一緒に買いに行ったお菓子を食べてみたいのじゃ!」
「わかった!」
 何がいいかな。まずはハムアキラの好きなポテチにしようかな。
「やったー新しい味のポテチなのじゃ!」
 喜ぶハムアキラに嬉しくなる。
「じゃ、開けるね」
 袋を開けると甘じょっぱいポテチの良い匂いが広がった。ハムアキラが早速一口齧る。
「う、うまいのじゃ!」
「気に入った?」
「うむ。心晴も食べてみるのじゃ」
 私も九州しょうゆを一枚つまむ。
「あ、本当だ。美味しいね!」
 私はポテチをつまみながらハムアキラに聞いた。
「ねぇ、ハムアキラはさ、友達の事、悪く言われたらどうする?」
「ふうむ」
 ハムアキラは小さな前足を組んで考え始めた。
「わしじゃったら、その悪口を言った者と距離を置くかな」
「え、それだけ?」
「うむ。わしにとって大切な者が、そ奴にとってはそうじゃなかっというだけの話じゃ」
「その、悪口を否定したりとかはしないの?」
「否定しても言い合いになるだけじゃから、無駄なことはせぬ。そ奴にもそ奴の理由があるのじゃろう。無論、わしは友を信じるがな」
「そうなんだ」
 ハムアキラの話を聞いて、元気が出てきた。
「そういえば、今日は宿題はせんでよいのか?」
「あっ」
 私は慌てて宿題に取り掛かった。
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