心晴と手乗り陰陽師

乙原ゆん

文字の大きさ
上 下
13 / 35

13.おつかい

しおりを挟む
 お母さんが用意してくれたお金とエコバッグを持って、ハムアキラと家を出た。ハムアキラは小さなポシェットに入ってもらっている。
「楽しみなのじゃ!」
 ハムアキラは大人しくしているって言っていたのに、はしゃいでポシェットから顔を出している。
「落ちないでね?」
「気を付けるから大丈夫じゃ」
 頭を引っ込める気はないみたい。
「ところであれはなんじゃ?」
 ハムアキラが言う。
「あれ? バス停だよ」
「ほう、今はあのようにテレビが付いておるのか?」 
「バスが今どの辺にいるか、教えてくれるんだよ」
「ほぉぉ便利なのじゃ」
 スーパーまでは歩いて五分、ハムアキラと話ながらだとあっという間だ。自動ドアをくぐってカゴを持つと野菜売り場へと向かう。
「まずはジャガイモからね」
「うむ」
 山のように積まれたジャガイモから一つ袋を選んでかごに入れる。
「じゃ、お菓子の所に行こっか」
「楽しみなのじゃ!」
 お菓子売り場へと付くとハムアキラがどんな反応をしてくれるか楽しみだ。
「ほわぁ! たくさんお菓子があるのじゃ!」
「後ろの列もお菓子が置いてあるんだよ」
「これらが全部お菓子なのか⁉ なんてすごいのじゃ!」
 予想以上に喜ぶハムアキラに私も嬉しくなる。
「お母さん、お菓子は三百円まで選んで良いって言ってたから、ハムアキラが好きなのも選んでいいよ」
「さんびゃくえん?」
 疑問を浮かべるハムアキラに説明する。
「えっと、ここに値段が書いてあるんだよ」
「なるほど。これらの数字が三百を越えねばよいのじゃな。わかったのじゃ!」
 ハムアキラは頷くと、駄菓子が置いてある所を指さした。
「心晴、あちらも見たいのじゃ」
「了解! 私は何にしようかなー?」
 ハムアキラを連れて、お菓子の棚を巡っていく。
「ハムアキラって、しょっぱい系のお菓子だけじゃなくて甘いものもいけるよね」
「一番はポテチじゃが、『ちょこれいと』も大好きなのじゃ!」
「そっか。なら、これも好きかな?」
「それは?」
「チロルチョコ」
「どういった物なのじゃ?」
 紙箱の中に並んだチロルチョコを指さしてハムアキラが言う。
「いろんな味のチョコレートだよ。私はこれが好き」
 牛の模様がついたものを摘まんでかごに入れる。
「わしも食べてみたいのじゃ!」
「わかった。ハムアキラの分もね」
 後は何にしよう?
 見ていると、細長いパッケージを見つけた。
「ポテチが行けるなら、きっとこれも好きだよね?」
 コンソメとコーンポタージュのうまい棒を二本ずつ選ぶと、ハムアキラが何かを見つけたようで興奮した様子で声を上げた。
「こ、心晴! あちらに、ポ、ポテチが山のように置いてあるのじゃ!」
「もちろん、ポテチも買うよ」
 ハムアキラが指さす方に向かうと、ハムアキラは驚いた声を上げる。
「いろんな味があるのじゃ!!!」
「うん。どれも美味しいよ。この間食べたのは、これ」
 うすしおを指すと、ハムアキラはなるほどと頷いている。
「今回は他の味にしてみる?」
「他の味も気になるが、前回のポテチも捨てがたいのじゃ」
 本格的に悩みだしたハムアキラに、私も何にしようか決める。
 値段に気を付ければ、もう一個位選べそうだ。
「あ、じゃがりこ!」
 ゆっくりと棚を回ると、ワゴンの中にじゃがりこが積まれていた。
「それはなんじゃ?」
「これもジャガイモのお菓子だよ」
「へぇ。なら、それにするのじゃ!」
「ポテチは?」
「迷って決められなかったのじゃ」
「なら、私はこれにしよっと」
 九州しょうゆを手に取ると、ハムアキラが感動したように目を潤ませる。
「心晴ーー! わしのために、ポテチにしてくれたのか⁉」
「まぁ、それもあるけど、この味はこっちじゃないと買えないって聞いたから、食べてみたくって」
「なるほどなのじゃ」
 ギリギリ三百円で足りそうだ。お会計に行って、ハムアキラと家に急いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

リトル・ヒーローズ

もり ひろし
児童書・童話
かわいいヒーローたち

どんなうどん?

天仕事屋(てしごとや)
絵本
今街で人気のうどん屋さんのお話です。

こちら御神楽学園心霊部!

緒方あきら
児童書・童話
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。 灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。 それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。 。 部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。 前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。 通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。 どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。 封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。 決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。 事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。 ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。 都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。 延々と名前を問う不気味な声【名前】。 10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。 

ミズルチと〈竜骨の化石〉

珠邑ミト
児童書・童話
カイトは家族とバラバラに暮らしている〈音読みの一族〉という〈族《うから》〉の少年。彼の一族は、数多ある〈族〉から魂の〈音〉を「読み」、なんの〈族〉か「読みわける」。彼は飛びぬけて「読め」る少年だ。十歳のある日、その力でイトミミズの姿をしている〈族〉を見つけ保護する。ばあちゃんによると、その子は〈出世ミミズ族〉という〈族《うから》〉で、四年かけてミミズから蛇、竜、人と進化し〈竜の一族〉になるという。カイトはこの子にミズルチと名づけ育てることになり……。  一方、世間では怨墨《えんぼく》と呼ばれる、人の負の感情から生まれる墨の化物が活発化していた。これは人に憑りつき操る。これを浄化する墨狩《すみが》りという存在がある。  ミズルチを保護してから三年半後、ミズルチは竜になり、カイトとミズルチは怨墨に知人が憑りつかれたところに遭遇する。これを墨狩りだったばあちゃんと、担任の湯葉《ゆば》先生が狩るのを見て怨墨を知ることに。 カイトとミズルチのルーツをたどる冒険がはじまる。

地獄の鬼の子

つなざきえいじ
児童書・童話
地獄の鬼の仕事は、罪人を懲らしめる事。 では、地獄の鬼の子供は? ※小説家になろうの方にも投稿してます。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

みかんに殺された獣

あめ
児童書・童話
果物などの食べ物が何も無くなり、生きもののいなくなった森。 その森には1匹の獣と1つの果物。 異種族とかの次元じゃない、果実と生きもの。 そんな2人の切なく悲しいお話。 全10話です。 1話1話の文字数少なめ。

処理中です...