心晴と手乗り陰陽師

乙原ゆん

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10.占いを引き受けます

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 次の日。学校へ行くと、田辺さんと村上さんが私の所へやって来た。
「おはよう、藤崎さん!」
「おはよう!」
「おはよう、田辺さん、村上さん」
 挨拶を返すと、二人は笑う。
「藤崎さん、固いよ。って、それは私もか。瑠奈でいいよ」
「私も、理恵で」
「じゃ、私も心晴って呼んでね」
「わかった!」
 二人はどちらが言うか顔を見合わせてから、瑠奈ちゃんが声をひそめて言う。
「その、昨日だけど、私達が占ってって言ったから、すぐに帰っちゃったの?」
「違うよ。昨日はちょっと用事があって」
 ハムアキラが心配で、占って欲しいと言われたことは頭になかった。
「じゃ、私達が占ってって言っても迷惑じゃない?」
 期待した眼差しで見つめてくる二人に、私は頷く。
「そのことなんだけど、実は占いが出来るのは私じゃないんだ」
「そうなんだ……」
 がっかりした二人に、慌ててつけくわえる。
「でも、その人に頼んだら、占ってくれるって」
 人と言うか、ハムスターだけど、それは二人には伝えられない。
「えっ、いいの?」
「うん。昨日、お願いしたら、引き受けてくれたの」
「すごい! 心晴ちゃん、手際がいいね」
 瑠奈ちゃんがすごく褒めてくれる。
「えっと、それで、この紙に自分の誕生日と占って貰いたい事、そしてその時の時間を書いてもらっていい?」
 机の中からリング綴じの手帳を取り出して、中の紙を二人に差し出す。
「わかった。これに書くんだね」
「うん。私と、占いを頼む人以外には見せないようにするから」
「ありがとう…!」
 私はハムアキラから聞いた注意事項を伝える。
「それと、占いって言っても、全部当たるとは限らないし、結果を聞いても待ってるだけなら意味はないんだって」
「待ってるだけって?」
「行動が必要って言ってた。占いはあくまで進むべき道をわかりやすく教えてくれるだけだから、そこはわかっておいて欲しいんだって」
「へぇ、難しいんだね」
 理恵ちゃんが言う。瑠奈ちゃんは「本格的だね!」と喜んでいる。
「帰りの会までに持って来てくれたら明日結果を伝えるね」
「わかった!」
「何か、他に聞いておく事ある?」
 一応全部説明出来たと思うけど、二人に聞くと理恵ちゃんが手を上げた。
「えっと、相性占いも出来るの?」
「あっ、相性占いは相手の誕生日もいるって言ってた」
「わかった!」
 大事そうに紙を手に、二人が席に戻ったのを見てほっとする。
 ハムアキラに言われた通りに出来たかな。後は、二人が書いた紙を受け取ってハムアキラに渡すだけだ。
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